2025.06.24
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掲示物に命を与える 〜未来予想カレンダーで学級経営・学級力UP〜(3)

前回、新年度最初に行う自己紹介ワークシートを活用した取り組みを紹介しました。今回は、さらに自己紹介ワークシート内にある1つの項目に着目した掲示物について紹介します。効果的で変動的な掲示物を目指すきっかけになれたらうれしいです。

沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭 石川 雄介

改めて

掲示物はただ貼るだけでなく、貼る意味を見出すことが大切です。掲示物は子どもたちに見られることで命を与えられます。掲示物とは子どもたちにとって効果的で、かつ、変化のある変動的な掲示物が好ましいと思います。
前回、ほとんどの先生方が取り組むであろう「新年度の児童一人ひとりの自己紹介ワークシート」を活用した学級づくりを紹介しました。今回は、そこからさらに長期的な目線で学級経営を活性化させる取り組みをご紹介します。

自己紹介ワークシートにあるあの項目に着目する

私が取り組んでいる自己紹介ワークシートには「こんなクラスにしたいな」という項目があります。「みんなで明るいクラスにしたい」「みんなで仲良くしたい」「面白いクラスにしたい」など、気楽に記入する子どもたちの様子がありました。
私は、子どもたちが気楽に書いたこの項目に着目しました。子どもたちが「こんなクラスになりたいな」と思ったのであれば、そんなクラスにするためにはどうしたら良いのかを担任として本気で考える、子どもたちに考えさせる必要があると思いました。
理想を理想で終わらせたくなかったのです。
私は、学級を楽しくしたいという気持ちよりも、「理想を語るのならそれを叶える努力をしなければならない」ということを子どもたちに伝えたいという気持ちの方が強かったと思います。
そこで私が考えたのが「未来予想カレンダー」という掲示物です。(本学級では私の教育テーマに合わせて、「未来aiカレンダー」と呼んでいます)

未来予想カレンダーとは

未来予想カレンダーとは何か?
簡単にいうと、「この日にみんなでこんなことをしたいよね」という計画案をカレンダーに記入して、実践する活動のことです。
先ほどお伝えした自己紹介ワークシート内の「こんなクラスにしたいな」という項目を活用します。例えば、「みんなで仲良くしたい」という項目があれば、それを達成するための活動内容を子どもたちに考えさせ、決めさせます。
「みんなにあいさつをする日にしよう」「みんなであっち向いてホイをしよう」など、理想のクラス像に合わせた内容を考え、いつ実践するのかをカレンダーに記入します。
これを実際に行うことで理想のクラス像に一つ近づけたことになります。
何もしなければ理想のクラス像には近づけられません。その理想に近づくためにどのようなことをしたら良いのか学級で考え、計画的に実践することが大切です。

理想の学級像を明確に

理想の学級像を集約

 

私のクラスの自己紹介ワークシートに「楽しいクラス」「みんなが優しいクラス」「気楽に話せるクラス」「仲良く楽しいクラス」など、よく聞く学級理想像が書かれていました。
その内容をもとに、子どもたちの理想とする学級像を全てまとめて掲示物にしました。大きな括りとして10個の理想像にまとめ、番号分けをしました。
表の右側には正の字を記入して回数を把握できるようにしています。

理想の学級になるために何をしよう

未来予想カレンダー

 

子どもたちに10個の理想像を提示し、それぞれ達成するための取り組み内容を考えさせました。
その中で、「③気楽に話せるクラス」「⑨みんなが過ごしやすいクラス」を達成するために、「給食時間は自由席にしたい(ランチ自由席)」という考えになりました。しかも、「自由なんだけど、できるだけ普段話さない人と一緒に食べる」という条件付きです。
私はこの条件付きについてとても褒めました。それは理想像の③と⑨を達成するための取り組みだということを子どもたちが忘れていないからです。ただ何となく楽しくなるから取り組むのではなく、目的を失っていないことが素晴らしいと思いました。
未来予想カレンダーの掲示物には実践内容の横に理想像の番号を記入させています。実際に取り組めたら、先に紹介した理想像が書かれた表に正の字を記入していきます。そうすることで、どの理想像の項目がよく出来ているのか、逆に出来ていないのかが明確になります。
それに合わせて、様々な取り組みをさらにプラスして未来予想カレンダーに記入していきます。

未来予想カレンダーには「掲示物」「学級経営」としての二つの顔がある

掲示物は、子どもたちに見られることで命が宿ります。子どもたちは「近々どんな取り組みがあるのか」「計画しなければ」とワクワクしながら未来予想カレンダーを見ています。
学級を良くするための掲示物、理想のクラスを自分たちで目指していくための掲示物となり、効果的な掲示物として命を持って呼吸をしています。
そして掲示したら終わりではなく、理想像に向けて取り組みが少ない場合は実践内容を増やしたり、予定日を変更したりなど、その都度カレンダーに記入し変化を与えます。場面に合わせて変動的な掲示物として掲示物の様子が変わっていきます。

また、自己紹介ワークシートも、4月最初にただ記入されて掲示されただけでなく、未来予想カレンダーに活かされることで、1年間を通して学級経営を支えるきっかけづくりとして生き続けます。
そして、自分たちが決めた実践に向けて計画し、「あーでもない、こーでもない」と苦労しながら実践していきます。このプロセスが学級力を高めるきっかけとなります。
未来予想カレンダーをやったから学級力が高まるのではなく、それを実現するためにどうしたらいいのかを仲間と一緒に試行錯誤するこのプロセスや、苦労して考えた内容を実践して楽しむこの時間こそが私の一番の目的となります。未来予想カレンダーという掲示物をきっかけに学級力がUPしていきます。

理想のクラスになるためには理想を語るだけでなく、それを叶えるための取り組みをしなければなりません。何もしなければ何事もない毎日が過ぎ、好きな友達とだけ語り合って一年が終わってしまいます。そうならないためには担任からの働きかけ、アプローチが鍵となります。理想を叶えるためにはどうしたら良いのかを思考させ、計画的に実践させ、満足感・達成感を与えさせることが私たちにできることではないでしょうか。

現在私の教室にはすでに10月までのカレンダーが掲示されていて、理想に合わせた色とりどりの活動が記入されています。「未来ai会社」という会社を子どもたちと立ち上げ、会社メンバーが一生懸命計画を考え、案を掲示したり呼びかけたりして学級に周知し、理想を叶えようと楽しく活動しています。

今回は自己紹介ワークシートから未来予想カレンダーを生み出しました。このように、何気なく掲示しているワークシートから学級経営に繋がるアイディアを生み出そうとする気持ちが大切だと思います。あなたの教育テーマや教室に合わせたアイディアを生み出せたら幸いです。

教室に掲示しているカレンダーをただ日付を見るだけの掲示物にするのではなく、理想の学級像を叶える「未来予想カレンダー」として効果的で変動的な掲示物として命を与えませんか?



何卒

石川 雄介(いしかわ ゆうすけ)

沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭


沖縄県の小学校教員として10年以上、子どもも担任も楽しむ学級づくりや授業づくりを研究しています。
私のモットーは「合いのある学級づくり」で、特に『思い合い、支え合い、学び合い』に重きを置いています。
また、授業や生活の中で他者尊重の心を育む仕掛けや子どもの興味を惹くアイディアを考えるのが大好きです。
効果的な掲示物の作成や子どもも担任も楽しめるアイディアなど、多種多様な教育場面について伝えていきたいと思います。

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