2025.07.01
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モンテッソーリ保育園の教室環境のご紹介 ~プラスチックがない&すべてが子どもサイズ

アメリカのモンタナ州ボーズマンという町でモンテッソーリ保育士として働きながら、大学院で学んでいます。
今回は、ボーズマン・モンテッソーリ保育園のクラス環境をご紹介します。

ボーズマン・モンテッソーリ保育士 城所 麻紀子

ボーズマン・モンテッソーリ保育園の第一印象

初めてモンタナ・ボーズマンのモンテッソーリ保育園を訪れたとき、まず目に飛び込んできたのは、開放感あふれる明るい廊下でした。床もきれいで、子どもたちがたくさんいるはずなのに、こんなにきれいに保っているのって、すごいなあと素直に驚きました。
教室内もきちんと整頓されていて、棚には木や竹の編みかごがすっきりと収納されています。
陶器やガラスも目に入りました。

教室環境の特徴と自然素材へのこだわり

ボーズマン・モンテッソーリを紹介してくれた方の、「教室ではプラスチックが使われていなくて、木製の教具とか自然な素材でできた製品しか置いてないのよ。わたしは勝手に日本風だと感じているの。だから、あなたにはぴったりだと思う」という言葉を思い出しました。
そして、水道やトイレ、家具もすべてが子どもサイズで、ほんとに子どもの家といった環境。
私自身、個人的な志向で、普段からなるべくプラスチック製品を家に置かないようにしているため、違和感はもちろんなく、だからといって特別感も覚えませんでした。

ボーズマン・モンテッソーリでは、1歳児のクラスであっても、お昼ご飯やおやつに使う食器はすべて陶器で、コップはガラス製です。これは、壊れやすいガラスや陶器をあえて使うことで、子どもが物を丁寧に扱う習慣を身につけさせるという意図があります。また、手触りや重みなど五感で感じることを大切にしています。
もちろん、プラスチックが悪というわけではありません。ただ、モンテッソーリ教育の根底には、自然素材、本物、子どもが自分でできる環境を大切にする姿勢が一貫して流れているのを感じます。

他園との比較で見えた違い

その後、カリフォルニアやモンタナ州の一般的な保育園を見学した際に、教室がプラスチック製品であふれていることに目を見張りました。カラフルなプラスチック製の収納ケース、おもちゃ、食器が当たり前のように使われていました。
これに対し、ボーズマンのモンテッソーリ保育園では、木やガラス、陶器などの自然素材が中心で、プラスチック製品はほぼありません。この違いは、教育理念の根本的な違いを象徴していると感じました。

モンテッソーリ教育の理念と大人の役割

トライアングル:子ども、大人、環境の関係

モンテッソーリのトライアングル 

筆者作成 

ここで、モンテッソーリ教育の、最も重要な要素の1つであるとされている、環境整備の方針について、改めて重要性を実感しました。
モンテッソーリ教育では、子ども、大人、環境の三者が相互に関わり合うトライアングルが重視されています。

この関係性は、子どもが自発的に学び、成長するために不可欠なものです。
子どもたちが、自分の興味や意志に基づいて、自ら選び、考え、行動するには、適切に整えられた環境と、それを支える大人の存在が不可欠であるという考え方です。

大人の役割:準備できた大人とは

大人は、子どもが自ら学べるように適切な環境を丁寧に整える役割を担っています。子どもとの関わり合いは、環境と子どもをつなぐ役割として、観察し、必要時に支援します。
子どもの成長を支えるには、大人自身もそのための準備ができている必要があります。

準備された環境とは

教室環境は、どの子どもも自分で選び、活動しやすいように整えられ、教具や道具の配置も、単純な物から複雑な物の順番に並べられています。
そして、作業が終わった子どもは、元の場所に、元の状態のまま戻すことが求められます。
サイズについては、例えば手やお皿を洗う水道、トイレ、床を掃くほうき、など、すべてが子どもサイズであることは、子どもが自分でできる体験を積み重ねるための大切な工夫です。

今後の展望

このように、モンテッソーリ保育園の教室環境は、単に、プラスチックがない、すべてが子どもサイズという表面的な特徴だけでなく、子ども・大人・環境の三者が調和し、子どもが自発的に学び、成長できる空間として丁寧につくられています。
大人もまた、常に自分を整え、子どもと環境の仲介者・支援者として成長し続ける準備ができた大人であることが求められます。このトライアングルの関係性こそが、モンテッソーリ教育の教室環境を特別なものにしているのだと、実感します。
子どもたちが自分の力で世界を広げていくために、私たち大人はどんな環境を整えられているでしょうか。
これからも、子ども、大人、環境の三者が響き合う教室づくりを、考え続けていきたいと思っています。

城所 麻紀子(きどころ まきこ)

ボーズマン・モンテッソーリ保育士、元サンディエゴ日本人向け補習校講師、モンタナ州立大学院家族消費者科学科 修士課程


2020年からアメリカのモンタナ州の人口5万人の町で、モンテッソーリ保育園の保育士をしています。
アメリカといっても、白人約90%、アジア人約2%(最近増えました!)という環境です。
あまり日本人の方に知られていない、アメリカの田舎での教育や生活の様子などを共有できたらいいなあと思っています。

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