2024.07.05
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校内研究のあしあと ~はじまり~

今回は本校の校内研究について記述していきたいと思います。
年間を通じてその折々の状況をお伝えさせていただく中で、小学校における校内研究に対する話題を提示していければと思います。

明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之

通勤電車の車内から心地よい冷風が吹き降りてくる時期となりました。満員電車に揺られながらも、一時の涼しさをオアシスに心地よい時間を過ごしております。

さて、今回は本校の校内研究についての話題をお示しさせていただければと思います。「仮説検証型校内研究」から「課題解決型校内研究」をキーワードに、お示しできればと考えております。

今年度の研究を始めるにあたって

今年度の研究を始めるにあたり、まず初めに次の2点を行いました。

① 昨年度までの研究の整理

② 次の研究に向けて、教職員での対話の場の設定

①昨年度までの研究の整理

図1 昨年度までの研究まとめ

本校は令和5年度まで、「豊かなかかわりを通して 『人、もの、こと』を大切にする 子どもの育成」を研究テーマに4年間の研究を積み上げてきました。1年目と2年目は算数科を軸に、「わかった・できた」を実感できる授業づくりに取り組んできました。3年目、4年目は教科の内容を変更し、道徳科を軸に道徳的実践力を養うことを目指した研究に取り組んできました。私が赴任させていただいた令和5年度は、4年間培ってきた研究をまとめていく時期でありました。そこで、赴任された先生方にも研究の足跡が伝わるようにと整理したものが図1になります。研究のキーワードを中心に整理を行うことで、コロナ禍で行われた研究の様々な工夫が見えてきました。

② 次の研究に向けて、教職員での対話の場の設定

図2 教職員の対話の内容まとめ

4年目の研究の節目として、令和5年度の3月に、全教職員で対話の場を設定しました。その際に投げかけた問いがこちらです。

「子どもたちが未来でよりよい人生と社会を築いていくために求められる力は何か?」

60分の短いワークショップではありましたが、先生方の熱心な対話が行われ、様々な意見が出されました。それらを整理したものが図2になります。この図について、少し説明を加えたいと思います。まず、下方は教職員側を表しています。子どもたちが生活する学校や、学びの行われる学習をよりよくしていくためにも、我々の「対話」が欠かせないということが上がりました。それと同時に、我々自身が「対話」をすることに対して肯定的にとらえているということも把握することができました。また、子どもに培っていきたい力として挙げられたことの多くは「非認知能力」と言われるものばかりでした。具体的には、コミュニケーション能力、自己決定する能力、レジリエンス、の3つです。これらを培っていくためにも、鳥羽のリソースとしての「地域」と協力していくことが大切ではないかという考えに方向づけられてきたわけです。この時に行った研修の様子の詳細は、機会があれば後日紹介したいと思います。

~令和6年度の研究のはじまり~

4月。上述した、先生方との対話をもとに、今年度の研究の方向性を思案し始めました。私は、A4サイズのノートにビジョンをデザインすることで形にしていくことが多く、今年度の研究提案に向けて何度もビジョンを加筆修正してきました。研究を始めるにあたってこだわった点は大きく2点です。まず、研究をじっくり行っていけるだけの時間を捻出すること。そして、先生方一人一人が実践に課題を持ち、日々の研究を積み重ねていくことができるようにすること。校内研究となると、曖昧な言葉がじっくりと対話なされないまま、結局あいまいな言葉で終わってしまうことがよくあります。しかしそれでは、いったん「なぜ?」と立ち止まったときに、一人一人がその理由を語れないまま研究が進んでいく恐れがありました。そこで、節目ということもあり、研究の在り方を大きく変えることを提案していこうと決意するに至ったわけです。その具体的な変更点が、「仮説検証型校内研究」から「課題解決型校内研究」への移行ということです。

「仮説検証型校内研究」

仮説検証型校内研究とは、全員で共通の仮設を設定し、その実現のために共通の手立てを実施し、年に数回の限られた提案授業においてその成果や課題について全体で協議するスタイルの校内研究のことです。つまり、「AするためにはBすればよい」という仮説が正しいかどうかを「検証」するわけです。しかし、この研修のスタイルにもいくつかの課題点があります。例えば、

「研究授業と普段の授業がなかなか結び付かない…」
「せっかく作成した研究起用がなかなか活用されない…」
「指導案の作成だけで疲れ果ててしまう…」等です。

そこで、4月当初に私が抱いた問いは「そもそも、仮説検証型の校内研究が本校の研究スタイルとして適しているのか?」というものでした。「あれだけ活発に対話がなされる本校の教職員集団の強みを生かし切れるスタイルであるのか?」という問いでもありました。そこで、舵を切ったのが「課題解決型校内研究」でした。

「課題解決型校内研究」

課題解決型校内研究とは、同じ課題をもった教職員がそれぞれの考え方や方法で実践し、それらを持ち寄って対話する中で、集団としての考えを焦点化し、深めていくスタイルの校内研究のことです。つまり、「~してみた。そのことが~した姿に関係するのではないかと思う」と、解釈した事例について共通点や相違点を対話し、新しい価値を見出していくわけです。

上記のようなプロセスを経て、本校の研究がようやくはじまりをむかえたわけであります。

令和6年度 研究テーマ

今年度より新たに設定した研究テーマはずばり、「未来を築く子ども について対話する学校創り ~教職員が対話する時間の創造~」です。

今後は、この研究の進捗状況を定期的に話題にさせていただければと存じます。

追記:研究の具体的な内容についても追って話題にさせていただければと思います。キーワードは「ラボ」です!

友弘 敬之(ともひろ たかゆき)

明石市立鳥羽小学校 教諭


「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。

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