2023.03.04
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「弱音が吐ける職員室」を目指して(その2)

前回の投稿の続きです。

今回は校内研修の実際と成果と課題について述べます。

兵庫県公立小学校 教諭 羽渕 弘毅

校内研修の実際

研究担当として、校内研修を企画・運営をしていく際に大切にしていることが3点あります。

  1. アイスブレイクを設定する
  2. 話すタネを提供することを心がける
  3. 30分以内に終わることを明言する

まずは研究全体会の始めの活動はアイスブレイクを設定するようにしています。これは、研究全体会の雰囲気づくりだけではなく、職員の所属感を高められるように位置づけています。アイスブレイクをおこなうグループは、経験年数や担当学年、普段話しているかどうかなどを考慮し意図的に作成をしています。アイスブレイクの内容は、「今日一日仕事をしていて、嬉しかったこと」「一学期の失敗談」などざっくばらんに経験年数関係なく「おしゃべり」をしてもらうことを目標としています。

諸富(2018)では、
「教師のメンタルヘルスを大きく左右するものは、「多忙さ」と「人間関係」(子どもとの関係、保護者との関係、同僚や管理職との関係)である」
「人間関係で生まれる悩みは、人間関係の中でしか、癒やされないのです」
と述べており、「おしゃべり」を通して同僚や管理職との関係づくりをめざし、その関係が困難に立ち向かうための支えになると考えています。

また、研究全体会中もたくさん 「おしゃべり」をしてもらうために座席の配置を工夫しています。今までは、全員がスクリーンを向いて話を聞くような講義型の研修が多かったのですが、グループでの話し合いやワークショップのしやすさを重視して、アイランド型の座席配置をするようにしています。

アイスブレイクの後は、毎回実施をしているアンケートのふりかえりをもとにテーマを研究推進部会で決めて、そのテーマに秀でている職員が講師となって話をしてもらう時間(ミニ研修)を設定しています。このミニ研修は本校の研究の柱である「バックワードデザイン」とは直接関係ないものをテーマにすることが多いですが、職員の「知りたい!」「学びたい!」という必要性を重視して企画・運営をしています。

研究内容のバックワードデザインや学習評価については、研究担当が多くを話す時間となってしまうため参加者に投げかけをしたり、ワークショップを設定したりすることで「おしゃべり」しながら校内テーマにとりくめるように意識しています。また、研究担当が伝えたいことを一方的に話すのではなく、伝えたいことは伝えないように心がけています。こちらが伝えたいことに気づいてもらえるような資料提示、グループでの討議を中心に研究全体会を進めています。その活動の中で、職員同士が学年団を超えて話すきっかけになったり、相談をする先輩や後輩が増えたりすることを狙っています。

そして、職員が「もっと話したい」「もっと聞きたい」と思うぐらいで研究全体会を終わるようにしています。今までの研究全体会はたくさん聞いて、たくさん話して、たくさん知識を入れて…そして、会が終わった頃には「頭がパンク状態」に…という状況になってしまう気がします。研究全体会は自由解散にし、もっと話したい職員は残って話し続けるなど個人の状況に応じて、全体会では余白を残しながら校内研究を進めることを意識しています。

成果と課題

研究の柱となる「バックワードデザイン」については円滑にすすめることができていないのが現状です。しかし、職員室の人間関係づくりの一助として校内研修を構成することができていると感じていることもあります。

研究全体会で若手教員が相談していたことを数日後に「あの後どうだった?」と声をかけている中堅教員がいたり、若手教員が学年団を超えてベテランの教員に相談をしに行く姿が見られたり、少しずつ「お互いにお互いを支え合う職員室」「弱音を吐ける職員室」づくりにつながっているような気がします。今後も困っている教員に対して「いいアドバイスをしよう!」と張り切るのではなく、「気にかけること」や「話を聴くこと」を大切にできる集団づくりを目指していきたいです。

まとめ

教員が学校は「失敗しないことに必死になる場所」と暗に感じているのであれば、それは子どもたちの指導にも影響してしまうはずです。自由で創造的な教育活動に取り組むためにも、学校運営の当事者である教員の自主性を最大限に生かすような集団づくりが必要です。

一般的な仕事はGive & Takeが原則で、まずはGiveすることが大切だと言われることが多いですが、教員や学校の厳しい状況をふまえると、Takeが先になっても良い(メリットを先に自分が受け取る)のではないかと考えるようになりました。そして、その受け取ったものを同じ人ではなく他人にGiveするような集団や学校文化をつくりあげていきたい。

困ったことや悩みがあるときに、弱音を吐いたり、人に頼ったりすることができる雰囲気が職員室にあるかどうかは、子どもたちの学校での安心や安全にも大きく影響すると考えています。「助けて!」「困っている・・・」と言える雰囲気が学校全体にあること、悩みをしっかり受けとめることができる体制を学校全体に築いていきたい。

今回は、教育つれづれ日誌をきっかけに校内研修を題材とした本稿をまとめることとなった。本稿をまとめるにあたって、研究担当でありながら、実はみんなに温かく見守られながら、育ててもらっているのは自分自身でないかと気づかされた。この場をお借りして、いつも支えてくれている職場の仲間に「ありがとう」と伝えたいです。

羽渕 弘毅(はぶち こうき)

兵庫県公立小学校 教諭
専門は英語教育学(小学校)、学習評価、ICT活用。 広島大学教育学部を卒業後、高等学校での勤務経験を経て、現職。 これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。 働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科修士課程)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。 自称、教育界きってのオリックスファン。

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