2024.05.08
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春の運動会に向けて ~リレー学習~

もうすぐ運動会!
そのような学校も多いのではないでしょうか?
今回は、運動会の醍醐味「リレー学習」について記していきたいと思います。

明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之

日に日に気温が上がり、夏の訪れを間近に感じる季節になってまいりました。地域によっては、運動会が秋開催の場所もあることでしょうが、私の勤務する学校では5月の後半に本番が迎えられます。
そこで、今回は運動会の中心種目である「リレー学習」について記していきたいと思います。

何気ない対話から

先日、同僚に「指導要領には短距離走・リレーとあるけれど、リレーの指導だけでいいのですか?」という質問を投げかけられました。突然の質問だったのでうまく答えられず、もやもやしたまま一日を過ごしました。そのあと、いろいろな文献を調べている中で自分なりの答えができたので以下のように答えました。

「短距離走の指導内容は主にスタートダッシュの局面と直線を腕を振って走り抜けるという局面かな。また、リレーの指導とは違って、短距離走は指導による成長と同じだけ身体発達による成長が大きいよね」

これは私個人の解釈を伝えただけではあります。しかし、体育学習の中だけで短距離走のタイムをぐっと縮めるには難しさがあるのではないかとは感じています。だからこそ、「リレー学習」が必要なのだと考えます。

リレー学習って何?

リレー学習が短距離走と大きく違う点は次の1点です。

「仲間と一緒にバトンをゴールまでつなぐということ」

つまり、リレー学習の指導場面は「バトンパス」に焦点化されるといってもいいでしょう。だからこそ、リレーには専門的な指導性が求められるのです。そこで、リレー学習の「バトンパス」のポイントを3点お伝えできればと思います。

(1)チーム決めにあたって

(表1)チーム例

バトンパスに焦点化させるための前提条件として、「全チームの合計タイムが等しい」ということが必要になってきます。(表1)をご覧ください。
3クラス合計12チームが出場します。1組の合計タイムは343秒、2組は352秒、3組は348秒です。このままではいくら練習しても、1組が有利であることがわかります。
そこで、クラスの合計タイムを360秒になるように調整します。すると、チームの合計タイムを90秒で調整できることになります。そのために、クラスのメンバーを均等に割り振り、1回走りや2回走りの選手のタイム差を用いて全チームの合計タイムを「90秒」に調整するのです。
そうすることで、「今よーいドンをすると、全チーム同時にゴールするよ!」と、伝えることができるのです。

(2)リレーは利得距離

(図1)利得距離について

「利得距離」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
(図1)をご覧ください。Aチームはバトンを極力体に引っ付けて渡した場合です。一方、Bチームはバトンを腕いっぱい伸ばして渡した場合です。Bチームのほうが「利得距離」分進んでいることがわかります。この距離のことを「利得距離」といいます。
つまり、この距離だけ、Bチームは走らなくてもよいということになるのです。利得距離をいかに伸ばすかがチームとしてのレベルアップにつながるわけです。

(3)右手渡し 左手もらい

皆さんは、バトンをどちらの手で渡して、どちらの手でもらうように指導されますか?

それぞれに利点があることを承知の上で、今回は「右手渡し 左手もらい」を提案していきたいと思います。その理由は3点あります。

①1歩分の無駄が減少する

基本的なトラックのコースは反時計回りでしょう。右手でもらうためには、体を外側へとむけなければなりません。
しかし、前走者が来ていることを確認するためには、内側のコースに体を向ける必要があります。そのため、体を内側から外側へ反転させる1歩分のロスが生まれるというわけです。

②インコースを確認しやすい

コーナートップ制では、次走者は内側のレーンへと詰めることが許されます。その際、左手でもらうために内側を向いていると、前の選手が走り、内側のレーンが空いていることを確認しやすくなります。

③遠心力を利用できる

コーナーでは、遠心力に逆らうために右手を自然と大きく振ることになります。バトンを持つということはその分、腕の振りが長くなるので、外側の手でバトンを持つほうが自然な走りとなるのです。

みんなが挑戦できるリレー学習に

私の幼い記憶にこのような一場面があります。

学期に一回のクラス対抗リレー。私は足が遅かったため、出場を渋っていました。そこへ誘いに来たA君。「はよ練習しよや」「うるさい。僕はせえへん」そう言いながら二人は取っ組み合いのけんかをしていました。

リレー学習になるといつも私はこの幼い記憶がよみがえります。クラスの子にも同じような思いの子がいるのではないでしょうか。そう思うと胸が痛みます。
だからこそ、リレー学習を「足が速い。足が遅い」に終始させたくないというのが私の思いです。そのためにも、リレー学習の指導を「バトンパス」に焦点化し、早くても遅くても、力を合わせたチームが勝てる。
そんな環境の中で思いっきり走ることを楽しめるような環境デザインに取り組んでいきたいと思っています。

(図2)リレー学習案

追記:以前研修のために作成した学習過程案です。参考にしていただければ幸いです(図2)。

友弘 敬之(ともひろ たかゆき)

明石市立鳥羽小学校 教諭


「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。

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