2021.01.07
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組体操を考える

これまで組体操は数多く話題になってきました。
このコロナ禍により、組体操は確実な変化が求められることになるでしょう。
今回は組体操について考えてみました。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

今年は組体操が話題にあがることはほとんどありませんでした。これは組体操問題が解決したのではなく、このコロナが蔓延する状況下において、運動会が中止になったり、無観客や規模を縮小することで組体操が行われなかったりしたためです。つまり組体操問題は先送りになっているに過ぎません。来年度の運動会に向け、今のうちから考えておく必要があるかもしれません。


組体操は考えた方がいい…

私は幼児から大学生まで全ての年代の子どもの体育指導やスポーツ指導に携わってきました。そのため体つきや体の動かし方を少し見ると、その子どものこれまでの運動背景や、これからの運動に関する未来予想図がなんとなくわかります。最近の子どもを見ていて思うのは、正直なところ、何段にもなる高いピラミッドやタワーを作るような組体操は怖くてできません。身体能力の高い子どもについても、時に怖く思う場合もあります。なぜならば全身運動となる組体操であるため、ある部分のみに長けているような身体能力だけでは対応できないからです。身体能力のある子どもでもそう思う子どもがいるのに、おんぶで歩くことさえ怖いような運動を苦手としている子どもも織り交ぜて高度な技をすることに危険を感じずにはいられません。

そして組体操の根底となる器械体操に力を入れなくなってきていることも反対の理由です。昔は学校対抗で体操大会のようなものがあり、器械体操に力を入れて取り組んでいたものですが、現在ではそのような大会もなくなり、力もそこまで入れていません。

またコロナが流行る前に行われた2019年度の体力テストの結果は過去5年で最低を記録しました。その後にコロナが流行り運動の機会が著しく減少してしまいました。

体育教員としては、より向上心を持ってより良いものをという気持ちはあるのですが、組体操はやはり危険と判断せざるを得ないでしょう。


今後の組体操は…

それでは今後の組体操はどうなっていくといいのでしょうか。もし組体操を行うとしても、これまでのようにピラミッドやタワーといった立体的な技ではなく、ウェーブといったような平面的な技で魅せることを考えていくことが望ましいでしょう。

また日本体育大学の集団行動とまではいかなくても、もっと表現に重点をおいたパフォーマンスを、ドローンや校舎の屋上のような上の角度から撮影し、オンラインで配信するような人文字系の集団行動のようなものも、もしかしたら行われるようになるかもしれません。


最後に

そもそも団体で何かを行うことは今後減少していく可能性があります。このコロナ禍で運動会を行ったところがあり、組体操がなくてもしっかりと成立しているためです。

前述したように、器械体操に力を入れていて組体操を行うことは指導に一貫性があります。しかし器械体操に重点が置かれなくなっている現在では、やはり考えていかなくてはならないでしょう。ダンス必修化されたことからも、集団でのダンスパフォーマンスなどが行われてくることが指導の一貫性としてもいいでしょう。現代の子どもに合わせた柔軟的な指導をしていくべきです。

これまでも変化が求められていましたが、この新型コロナにより確実な変化が必要となりました。今のうちから考えておく必要がありそうです。


赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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