2024.02.16
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コロナ禍を経た健康教育の変化と課題~コロナ禍での経験を活かす~

「コロナ感染拡大警報」が,今も本県に出されています。第10波です。「アフターコロナ」と安心して言える時期は,もう少し先かもしれません。

そんな中,各校では行事のスリム化,集団活動の見直し,情報教育の推進など新たな取組が試行されていることと思います。

この期にコロナ禍の経験を振り返り,改めて「健康教育」のあり方についても考えてみたいと思います。渦中にあって気付けなかったこと,コロナ禍を経ての変化,今後の課題など皆さんで議論できたら嬉しいです。

元静岡大学教育学部特任教授兼附属浜松小学校長 大村 高弘

コロナ感染を,とにかく防ぐ

この1点を目標に,コロナ禍当初,各校の対応は進められました。
音楽の時間,歌唱やリコーダー演奏をやめる。体育ではボール使用を制限。給食時は黙食の徹底。
本校では通学時の電車・バス利用が多いため,外部のウイルスをシャットアウトするのには,朝が勝負でした。
教室の入り口には消毒液が設置されましたが,それだけでは不安。昇降口に生徒指導主任と養護教諭が立ち,一人ひとりへの手指消毒を施しました。毎朝,勤務時間前に。感謝しかありませんでした。

近くの学校で「感染者が出た」との情報が入り,対応の様子が伝わってきます。
極秘で進められる行動調査,校内の消毒作業,接触した子どもへの聞き取りや検査,その後の地域・保護者への説明。どの対応にも細心の配慮が求められ,学校運営は困難を極めました。
重症化によって亡くなる方の情報も届き「感染経路を断たなくては」「一人として見逃せない」と切迫した気持ちになりました。今思うと災害時に匹敵するような厳しい対応でした。

子どもを守ることと教育すること

学校は集団生活を送る場ですから,子どもの健康を守ること(感染を防ぐこと)が何より優先されます。上記のように,その保護には最大限の力を注ぎました。しかし今振り返って思うのは,子どもを健康に向かって教育する点からはどうであったのか,ということ。

学校保健の管理面を徹底される中,子どもは受け身にならざるを得ない状況が続きました。
「集団生活の場で必要」との理由で,意味はよく分からずその行動をとっている子も多かったのでは。
習慣だけが身についても,そうする理由を科学的に理解していなければ,他の感染症に対しては通用しないでしょう。また,その都度の環境変化に合せたマスク着用,部屋の換気等を自分で適切に判断することはできません。

コロナが収束してきた今,手指消毒や手洗いは子ども一人ひとりの判断に委ねられています。時と場に応じて実践できる子もいれば,そうでない子も。
守られるだけで過ごしていた子どもが,自ら健康を維持していく主体に変わっていくためには,何が必要でしょうか。

「保健の見方・考え方」を働かせる

感染拡大の初期には,首相官邸・厚生労働省が「三密( 密閉・密集・密接)」を避けることを標語として掲げました。学校でも「教室の窓を開けておくこと(密閉を避ける)」「大人数が一つの部屋に集まらないこと(密集を避ける)」「間近で会話をしないこと(密接を避ける)」などの対応が進められました。

ここで感染症予防の方策を,原則から捉えてみると,三つに分類されます。
①感染源をなくす
 手指消毒,共用される物の殺菌など
②感染経路を断ち切る
 手洗い・うがい・換気,「三密」を避けるなど
③体の抵抗力を高める
 ワクチン接種,栄養・睡眠(休養)・運動など

コロナ禍の我が国で頻繁に使われた言葉「三密」の回避。これは予防方策のうちの一部であって,上の分類では②「感染経路を断ち切る」に位置付くものです。とすれば,子どもたちにとって印象深い「三密」回避の体験を想起させ,それが①や③とは異なる性質の方策であったことに気付かせる必要があるでしょう。そして各々の方策の目的を明確にした上で,予防原則の全体像を体系的に把握させる。この原則は、他の感染症でも適用できる大事な「見方・考え方」であることも。

現行の小学校学習指導要領体育編解説の保健領域(高学年)では,インフルエンザ,麻疹,風疹,結核などを「病原体が主な原因となって起こる病気」として例示しています。
これらに加え,コロナを「疾病予防」の教材とすることで,他人事ではない学習が今であれば実現できるでしょう。世界中を巻き込んだパンデミックが,自分の身近で切実な問題として経験されたのですから。
厳しかった経験を活かし,自分の血肉となる知識を獲得し判断の基礎とする。そうした自立した健康生活をつくる人間に育ってほしいと願います。

大村 高弘(おおむら たかひろ)

元静岡大学教育学部特任教授兼附属浜松小学校長


新しい学習指導要領の改定に向け,準備が進んでいくことと思います。
アフターコロナの時代,社会が大きく変化する中で,学校と授業はどう変わっていくべきなのでしょう。
今後の学校教育に期待することを,不易・流行の両面から考え、お伝えしたいと思います。

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