2024.03.29
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コロナ禍を経た健康教育の変化と課題 ~「心の健康」の教育 ~(3)

前号では自分のコロナ感染の経験と,それを機に「健康と社会のつながり」を学ばせる必要性を実感したことを述べました。

人とのつながりは,心のあり方にも大きな影響を与えます。今回は子どもたちの心の健康について考えたいと思います。

元静岡大学教育学部特任教授兼附属浜松小学校長 大村 高弘

コロナ禍の影響

人的な交流制限が行われたコロナ禍では,大人のうつ症状の増加が話題になりました。
子どもたちの生活においても「自宅にこもり友達と遊べない」「身体接触のあるスポーツができない」等の期間が続きました。人的なアクセスが不足したこと,マスク生活,黙食など,子どもたちにマイナスの影響があったことは明らかでしょう。

昨年10月4日に文部科学省より発表された,令和4年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によれば,不登校は前年度と比較し,22.1%の大幅な増加,いじめは10.8%の増加。過去最多となっています。
コロナの後遺症とも言える状況が,子どもたちの心の健康と社会性の面で顕著に表れていると言えそうです。

江戸時代において

前回,江戸時代のベストセラー『養生訓』(貝原益軒)に触れ,個人衛生が重視されていたことを述べました。
その記述において「心は楽しむべし,苦しむべからず。身は労すべし,やすめ過すべからず」と,心を平安に保つことの大切さが記述されているのです。
「ストレス社会」と言われる現代とは大きく異なる時代のはずなのに。
科学的な実証はできなくても,人々が経験的に感じていたことなのでしょう。
自分の心身に関することは経験を通して認識できます。
学問・文化・芸術等,自分の外の世界を対象とする他教科に対し,保健は,自分の経験を基に考えを深められる点が強みと言えるかもしれません。

子どもの心の可視化

GIGAスクール構想が進展する中,タブレット端末から得られる情報を元に,一人ひとりの子どもの様子が画面上で一覧できる仕組みの導入が進んでいます。子どもたちが今の気持ちを「晴れ」「雨」などのマークで毎日記入する「心の天気」を表示することも可能とのこと。
こうした情報は学校全体で共有できますから,学級担任だけで把握できない子どものサインを見逃さない点で,迅速な対応につながるものと思います。
一方,子どもの側から見たときどうなのでしょう。
ルーティーンワークのような記入になってしまったら,正しい把握は難しくなります。また心に問題をもっている子ほど「自分の心の内を知られたくない」思いは強いかもしれません。
データの活用もするけれど,重要なのは目の前の子どもではないでしょうか。
心の健康にかかわる教育をどう進めるべきか,次号でさらに考えたいと思います。

大村 高弘(おおむら たかひろ)

元静岡大学教育学部特任教授兼附属浜松小学校長


新しい学習指導要領の改定に向け,準備が進んでいくことと思います。
アフターコロナの時代,社会が大きく変化する中で,学校と授業はどう変わっていくべきなのでしょう。
今後の学校教育に期待することを,不易・流行の両面から考え、お伝えしたいと思います。

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