2023.01.14
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盆栽美術館のひみつを探る(2)

前回のレポートで、担当する3年生の児童が、地域にある大宮盆栽美術館の魅力について調べる活動を行ったことを報告しました。
今回はその後の資料作りと発表会についてレポートします。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

発表に使う資料を準備

発表会を行った授業会場

児童は、見学を行った大宮盆栽美術館の魅力について自分たちで課題を立て、調べ学習を行ってきました。その活動を通して、見学しただけでは分からなかった盆栽美術館の魅力をたくさん知ることができました。これからは、調べたことについて友達に発表していきます。そこで、調べ学習で集めた資料からどの資料を使って友達に発表するかを考える活動を行いました。

「やっぱりこのポスターを見せた方が友達が分かりやすいと思うよ」
「ここではインタビューの動画を見せながら発表しようよ」
「この写真をタブレットで拡大して見せるのはどうかな?」
など、友達同士で話し合いながら活動を進めていました。発表に使う資料は美術館から提供をいただきました。これまで、美術館の学芸員さんと連携していろんな活動を行ってきたこともあり、学習について様々な面で協力をいただくことができました。豊かな授業を行う上で地域の方や関係機関などとの連携を行うのは大事、そう感じます。たくさんの資源を生かすことで、児童が主体的に学ぶ学習が実現できると思っています。

発表の練習

児童は、自分たちの課題解決に必要な情報を様々な形で得ることができました。取材に関しては新聞記者をゲストに招いた授業で教えていただいたので、その学びを生かして美術館の先生にしっかりとインタビューをしたり、必要な資料をいただいたりしました。活動をする中で、児童の「発表したい」という思いの高まりを実感。授業を行っている私もワクワクしてきました。

上手な発表をするために、話し方の指導をしてくださるゲストをお呼びしました。落語家の三遊亭好太郎さんです。好太郎さんは日本テレビの笑点でも有名な三遊亭好楽師匠のお弟子さんで真打。当日のお話が楽しみでした。好太郎師匠からは、落語を通して、以下のようなスピーチのコツを教わりました。

 ・まずは自信をもって話すこと
 ・最初に周りを見渡すようにするとよい
 ・「速く・ゆっくり話す」ことを使い分けて、聞き手を引き付ける
 ・「強く・弱く話す」ことで大事なことが伝わる
 ・「間」をとることで、聞き手が注目してくれる
 ・聞き手もうなずきながら聞くとよい

これらの話し方・聞き方のコツを生かして、発表の練習をすることにしました。子どもたちとはいつも、「ゆっくりみんなを見回してから発表を始めよう」など、いただいたアドバイスをもとに声掛けをし合いました。子どもたちは発表会に向けて、資料の準備、そしてスピーチの練習。がんばって取り組んでいました。宿題で保護者の方にも子どもたちの練習を聞いてもらっていたので、子どもたちは自信満々!発表会に臨むことができました。

発表会の実施

子どもたちが発表する授業は、さいたま市の教育研究会の公開授業として実施したため、たくさんの市内の先生方が参観に来ました。また、授業にご協力いただいた大宮盆栽美術館の学芸員さんにも臨席いただき子どもたちの発表を聞いていただきました。子どもたちは発表前にみんな緊張。でも、これまで練習をしてきたことを思い出し、自信をもって発表できました。

子どもたちの発表の一例です。
「わたしは、盆栽美術館ではお客さんに盆栽の魅力を伝えるためにどんな工夫をしているか調べました。盆栽を見に日本に来る外国の方が多くいるために、パンフレットやチラシは外国語のものも作っています。また、パンフレットやチラシを東京の外国人の方がたくさん泊まるホテルにも置いてもらい、外国の方に盆栽のアピールをしています。さらに学芸員さんにインタビューをしたところ、学芸員さんたちは外国の方を案内できるように英語ができるそうです。このように、外国の方にも盆栽の良さを伝える工夫をしているところが美術館の魅力の一つだとわかりました」

どの子も、自分が友達に伝えたいことを、立派に発表できました。

発表を聞いた美術館の元学芸員の先生は、子どもたちに
「大人でも気づかないことに気づいていて素晴らしかった。地域の人がたくさん協力して盆栽の魅力を伝えていることを知ってもらえてよかった」
と話していました。

児童の感想からは
「友達に自分の調べたことを自信をもって発表できてよかった」
「たくさんの先生たちにも、美術館の先生にも発表を聞いてもらうことができてうれしかった」
「これからも盆栽や盆栽美術館のことを調べて、詳しくなっていきたい」
等の声。

子どもたちにとって大変良い学習になったと感じています。そして、地域の特色である盆栽についてさらに好きになっていったようです。これから学年が進むと、実際に盆栽づくりも行われます。その活動も楽しみです。これからも地域の素材を生かして、授業づくりに取り組んでいきます。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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