2022.12.03
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盆栽美術館のひみつを探る(1)

勤務校のある地域には、約100年続いている大宮盆栽村があります。そして勤務校では、高学年になると地域の盆栽園の先生が講師となり、全児童が盆栽づくりを行います。盆栽に親しむことが本校の伝統となっています。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

盆栽新聞づくり

大宮盆栽美術館庭園

担当する中学年の児童も盆栽について関心が高く、盆栽に関する話をすると喜んで聞いています。また、地域探検や校外学習で盆栽村や盆栽美術館の見学も行います。そこで、中学年の児童にも盆栽について学ぶ機会を増やしたいと考えるようになりました。中学年で盆栽について学習することで、高学年になり、実際に盆栽を育てる活動にも愛情をもって取り組めると思います。そして生涯を通じて自分が育った地域への愛情を持っていてほしいと願いました。

そこでまず取り組んだのが「盆栽新聞づくり」です。このつれづれ日誌でも何度かレポートをさせていただきました。児童が、自分の鑑賞してみたい盆栽を美術館のホームページで調べて新聞にまとめました。美術館のロビーに飾られた作品を多くの人に見ていただくことができました。この活動を通して、中学年の児童の盆栽への関心をさらに高めることができました。美術館の学芸員さんにも、児童の新聞へのコメントをいただくことができ、児童は充実感をもちながら学習を行うことができました。

美術館の見学

盆栽や美術館への関心を高めた後に実際に美術館を見学しました。児童は、

「僕が見たかった盆栽があったよ」
「こんなに大きな盆栽があるんだ」
「この盆栽の樹齢は1000年だって。すごいね」

など、楽しそうに見学をしていました。事前学習で新聞づくりをしていたため、子どもたちはたくさんの盆栽に興味津々・・・。また解説ボランティアの方に、盆栽の育て方や盆栽の樹齢などについてたくさんの質問をしていました。美術館が用意した学習ノートも活用し、盆栽についてしっかりと学習できました。

見学では、盆栽に詳しいボランティアの方が児童に盆栽のことを解説してくださいました。児童は解説を聞いてさらに知りたいことなどを質問していました。

ボランティアの方から、
「植竹小の子どもたちはとてもしっかりとした質問をしてくれる」
と言っていただきました。
事前学習で盆栽について関心を高めていたからではないかと考えています。

調べたい課題を設定

盆栽美術館の見学を終えた後に、国語と社会科を連携して「盆栽美術館のひみつを探る」という課題を立てて授業を行いました。国語の教科書には「町の行事について調べよう」という単元があり、地域の様子について調べて発表する学習が例示されています。この単元を生かして学習を計画しました。大宮盆栽美術館を見学したり、見学した学んだことを新聞にまとめたりする中でさらに知りたいと思ったことを課題として取材を行うことにしました。

児童と一緒に美術館を見学してさらに知りたいと思おうことをたくさん出し合い、クラスで4つの調べる課題を設定しました。その課題は以下のものです。

  1. 学芸員さんの仕事の工夫について(学芸員さんは盆栽や美術館のよさを伝えるためにどんな工夫をしているのか知りたい。)
  2. 盆栽のコレクションについて(盆栽美術館には元総理大臣が持っていた盆栽もあるが、ほかにどんな盆栽があるか知りたい。)
  3. 盆栽の育て方や手入れの仕方の工夫について(何百年も生きている盆栽のお世話をどのようにしているのか知りたい。)
  4. 盆栽の魅力を発信する工夫について(美術館に来てもらうためにどのようの情報を発信しているのか知りたい。)

以上の課題をグループで一つずつ受けもち、協力して調べていくことにしました。子どもたちはどのように調べるかを計画し、取材活動開始です。

あるグループは、美術館の先生に手紙を書いて質問をし始めました。また、美術館のホームページや発酵されているパンフレットやチラシをもとに調べ学習を行っていました。

「外国からくるお客さんのために、英語で書かれたパンフレットがあるよ」
「盆栽に関するイベントをたくさん企画しているんだね」
「盆栽は毎日お世話をしなければならないから、近くの盆栽園の方の協力も得て、毎日しっかりと手入れをしているんだね」
「元総理大臣が持っていた盆栽もあるんだね」
「1000年も生きている盆栽があるのにびっくりしたね」
など、通常では気づきにくいことがたくさん分かりました。

今回調べたことを友達に発表するために児童はこれから準備に入ります。どんな組み立てで発表するか、発表にどんな資料を作るかなどを検討していきます。この学習は国語の学習ですが、内容が児童の関心の高い盆栽や盆栽美術館のことなので、児童の意欲が違います。進んで学習に取り組むことができています。調べて分かったことを伝えるためにしっかりと練習をしてほしいと思っています。
次回は児童の発表の様子などをレポートします。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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