2022.08.05
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大学院進学によるデメリット

前回の記事「大学院進学を迷っている先生方へ!」では、大学院進学を推す内容を書きましたが、今回は、反対に、大学院進学をしたことによって生じるデメリットを書きます。前回と今回の記事を天秤にかけながら、ぜひ大学院進学を考えてほしいと思います。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

前回は、大学院進学を実際にしてみて良かったことを中心に書き、悩まれているのであれば、大学院進学を「すべき」という結論を紹介しました。ただ、良い側面だけをお伝えするのも多少憚れる思いもありましたので、今回は、大学院進学をするにあたってのデメリットも伝えておこうと思いました。あくまで、私個人の見解ですので、そこはご了承願えたら幸いです。

1.現場感覚が鈍ること

これは、大学院進学を決意するにあたって、一番懸念していたことですが、2年間という大学院在籍期間に膨大な時間を研究に費やすことができる反面、裏を返せば、その2年間は現場経験を積むことができないということでもあります。

恐らく、大学院進学を悩まれている先生方の多くは、中堅教員という立ち位置になっている、若しくはなろうとしている年代と思います。ということは、つまり、ここまで10年近く、毎日教壇に立ち、児童生徒と接してきているということです。そして、その経験の分だけ、自分のルーティンが確立し、授業でも学級経営でも、どうすればよいか、無意識的にできていることが多くあることだろうと思います。

しかし、大学院進学をすると、2年間は教壇に立つ機会がなくなるわけです。(もちろん、その間に実習もありますが)するとどうなることが考えられるか。スポーツでも数日休めば同じ感覚を取り戻すのに、その倍程度はかかると言われています。これは教師にも当てはまることだと考えていて、2年間のブランクで、それまで無意識にやってきた実践の感覚を取り戻すのに相当な時間を要するであろうことは容易に想像できます。現に私は実習に行ったときに、黒板に文字を書くことですら多少の違和感を覚え、書きづらかったです。これは、現場で毎日黒板に文字を書いていた時には考えられないことです。今は一例として板書のことについてお伝えしましたが、現場復帰をして、毎日子どもたちと接する中で、こういう違和感は想像以上に出てくると思います。この2年間現場で奮闘されている先生方と比べるとこういったブランクが私は一つのデメリットでもあると思います。

ただ、そのブランクを少しでも埋めるために、最終年度は、自分のやってきたことをできるだけ言語化してメモに残したり、写真に残したりしました。これは、自分が無意識のうちにやってきた足跡を少しでも、記録として残しておくことで、現場復帰したときに、思いだしやすくするためです。もし、大学院進学を今年度決めている先生方は、できるだけ今年度の自身の足跡を何らかの形で保存しておくことをお勧めします。

2.孤独との闘いであること

現場の教師は、日々、児童生徒そして放課後は学年の先生方と関りをもちながら勤務しています。時には、子どもたちの先生聞いて聞いて攻撃(笑)で、コミュニケーション過多になり、しんどくなることもしばしばある程だと思います。

しかし、大学院の研究はというと、私の場合、院生室というものがあり、そこで一人、朝から夕方まで一人で、黙々と本を読んだり、読んだことをまとめたり、そして、この記事を書いている今も、快晴の昼過ぎに院生室で黙々とやっています。もちろん、同期の先生方も大学院にきて、共に学びを深めていますが、基本研究は一人のものだと思っています。そして、大学生の頃のように、この大学院生活を楽しむものでもないと思っているからこそ余計に、孤独です。例え、どれだけ、遊ぼうと思って、平日に気晴らしをしていても頭のどこか片隅には「研究」の二文字が付いて回り、罪悪感を覚えます。これは、真剣に研究にと取り組んでいる方は口を揃えて言うことです。浪人時代を経験したことのある方なら分かると思いますが、浪人生も遊んでいること自体に罪悪感を覚え、遊んでいてもどこか頭の片隅に「勉強」という二文字がついてまわるのと全く同じことです。

この孤独を解消する方法は…今も見当たりませんし、卒業するまで見当たる気配もありませんが、そこで苦労した分、必ず自分の身になっていると信じて日々研究をしています。

以上、前回と今回の記事で大学院生活のメリット、デメリットを紹介しました。メリット、デメリットを天秤にかけながら参考にしていただければ幸いです。

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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