子どもと観たい映画、家族で楽しむ学びのひととき

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。今は動画配信サービスも充実していて、自宅で気軽に映画を楽しめるようになりました。秋の夜長に、お子さんと一緒に映画を観て過ごすのも素敵ですね。今回は「子どもと観たい映画、家族で楽しむ学びのひととき」をテーマに考えました。
子どものころから映画は身近な存在でした
私は10代の頃、とても好きだった映画があります。古い映画なので知らない方も多いかもしれません。『ある愛の詩』という恋愛映画です。アメリカの作家、エリック・シーガルによるベストセラー小説が原作で、映画も大ヒットしました。友達と一緒に繰り返して観ては、その純愛に涙しました。主題歌も素敵で、今でも歌えるほど印象に残っています。私たちは、この映画で人を愛するということを学んだ気がします。
どんな映画を見てきたのかというのは、同世代の人たちにとって共通の文化になります。同じ作品を見て感動したり、興奮したりした経験が、愛に対する考え方や、正義感、モラルといった価値観を形づくっていきます。
私たちの時代は、映画は気軽に観られるものではなく、何か特別な機会がないと映画館には行けませんでした。でも、私は少し特別な環境で育ちました。子どものころに住んでいた家は、当時の香港では最先端のマンションで、下にはレストランやお店が並び、その中にはみんなの憧れの映画館が入っていたのです。そんな環境のおかげで、私は子どものころからたくさんの映画を観ることができました。
その時に『風と共に去りぬ』や『ベン・ハー』など、たくさんの名作を観ることができました。やがてマンションは老朽化で取り壊されることになり、その際には私もゆかりの人物としてインタビューを受けました。でも、映画館だけは何とか保存しようという動きもあるそうです。今も懐かしい思い出として心に残っています。
笑って泣いて、心を動かす映画の魅力

@学びの場.com
私自身も映画に出演したことはありますが、女優はあまり向いていなかったようです。映画は出演するより、鑑賞する側として楽しむ方が自分には合っています。リラックスしたいとき、感動がほしいとき、何かを学びたいとき、映画はさまざまな場面で心を満たしてくれます。
特に感動的な映画が好きで、実話をもとにした物語には心を動かされます。黒人初の野球選手の話や、身体に不自由がありながら夢をかなえた人の話など、困難を乗り越えて人生を生き抜く姿には勇気づけられます。最近観た『2人のローマ教皇』も実話をもとにした物語で、こういう友情もあるのかと感動しました。
実話ではありませんが、アメリカの歴史を背景に描いた『フォレスト・ガンプ』は何回も観ています。笑えて楽しく、それでいてメッセージ性のある映画です。子育てについて考えさせられることも多く、お母さまの深い愛情に毎回泣いてしまいます。息子たちとも一緒に観ましたし、多くの人におすすめしたい一本です。
今は動画配信サービスのおかげで、世界中の映画やドラマを気軽に観られるようになりました。トルコや北欧、イギリスなど、これまであまり観る機会のなかった国の作品にも出会えます。
中でもイギリスの作品はお気に入りです。セリフのセンスが良く、品があってウィットもあり、英語表現にも学べるものがあります。長く英語を使っている私でも、「こんなときにはこう言うんだ」「この言葉はここで使うんだ」と感心することが多いのです。映画を観るときには、ぜひ英語のフレーズにも注目してみてください。
映画に学び、家族で楽しむひとときを
映画から学べるものはたくさんあります。スポーツやゲームの難しいルールも自然と覚えることができます。なじみの薄い歴史や将棋、チェスの世界も、物語を通して触れることで立体的に理解でき、記憶に残ります。
映画は英語の学習にもおすすめです。中高生なら最初は字幕が必要でも、そのうちに字幕なしで理解できるようになり、上達も早いでしょう。法廷ものやミステリーのドラマは、一話完結のものが多く、英語でも内容が理解しやすいと思います。
「学び」と同時に、映画は家族の思い出にもなります。子どもたちが小さなころは映画館にもよく行きました。我が家が夢中で観た作品といえば『ハリー・ポッター』シリーズです。勇気をもらえる物語で、子どもたちは原作もすべて読んでいます。
子どもと一緒に観るなら、ジブリ作品のような良質なアニメや、『インディ・ジョーンズ』のような冒険物語も楽しいですね。私はミュージカル映画も大好きで、『サウンド・オブ・ミュージック』『メリー・ポピンズ』『マイ・フェア・レディ』は何度も観て、歌もすべて歌えるほどです。こうした作品は大人も子どもも楽しめると思います。
昔は映画づくりにはお金も時間もかかり、俳優や女優は歌って踊れる特別な存在でした。そうした時代に生まれた作品には、今でも心に残る素晴らしさがあります。ポップコーンやアイスクリームを用意して、「さあ、一緒に観よう!」と家族で映画を楽しんで、感想を話し合う。そんな時間を過ごせるのも、映画の魅力だと思います。
関連情報

「ひなげしの花」でデビューして53年
70歳のアグネス・チャンが語る、人生後半をしなやかに生きるヒント。
70代はもっと純粋に、前向きに!
気持ちの持ち方・食事・運動・睡眠・人とのつながり……etc.
健康と若々しさを保つために、アグネス・チャンが実践してきた「45の方法」を紹介。
70歳を迎えた今だからこそ伝えたい、心と体をしなやかに保つ知恵が詰まった一冊です。
著:アグネス・チャン
発行:ワニブックス
価格:1,600 円+税

アグネス・チャン
1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)
ご意見・ご要望・気になることなど、お寄せください!
「アグネスの教育アドバイス」では、取り上げて欲しいテーマ、教育指導や子育てで気になることなど、読者の声を随時募集しております。下記リンクよりご投稿ください。
※いただいたご意見・ご要望は、企画やテーマ選びの参考にさせていただきます。
※個々のお悩みやご相談に学びの場.comや筆者から直接回答をお返しすることはありません。
この記事に関連するおススメ記事

「教育エッセイ」の最新記事
