2025.02.27
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成長の螺旋階段

教師としての成長を螺旋階段にたとえ、繰り返しの日々の中にも質的に進歩し続けることを大切にしています。
また、人・本・旅を通じて固定概念を崩し、新たな自分に出会う重要性を考えています。

目黒区立不動小学校 主幹教諭 小清水 孝

また同じ分掌か...

2月末や3月初めは,異動先が内示されたり,次年度の校務分掌の打診があったりします。「次年度も○年生か...」「次年度も○○主任か...」と心の内で嘆くこともあるでしょう。かく言う私も,8年連続生活指導主任(生徒指導主事)であり,年度末の度に「また同じことの繰り返しか」と思ってしまうのが正直なところです。

学校教育の現場は,民間企業と異なり,1年のサイクルが決まっています。4月入学式,6月運動会,7月宿泊学習...など,マイナーチェンジはあったとしても,毎年同じことの繰り返しです。次年度も今年度と同じ分掌を打診された日には,心機一転とはならないのが人間です。特に,私のように未熟な者には難しいです。

教師として成長し続ける根拠

教育基本法第9条,教育公務員特例法第21条に,「絶えず研究と修養に努める」とあります。また,中央教育審議会大臣諮問「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」によれば,少子高齢化やグローバル情勢の変化,気候変動,AI革命等により,社会の不確実性が高まっています。新たな時代の教育の在り方が検討され,教師には教育環境の変化に対応する資質・能力が求められています。

このように教育法規や,教育環境の変化は,教員に学び続けることを要求しています。日々成長せよと言っているのです。しかし,やはり人間。また同じことの繰り返しかと思うミドル教師,ベテラン教師もいらっしゃることでしょう。

成長の螺旋階段

次年度に向け,学校長から同じ分掌を打診されたとき,私はあることを自分に言い聞かせるようにしています。

「これは成長の螺旋階段だ」

螺旋(らせん)階段は,上から見るとグルっと回っているように見えますが,横から見れば一段一段確実に上っています。「また同じ分掌か...」と思うときは,上から螺旋階段を見ている状態。たとえ同じような業務の一年でも,指導法の変革,深い児童理解,専門性の向上など,質的に確実に高まっています。これは螺旋階段を横から見ている状態です。

ヘーゲルが唱えた事物の螺旋的発展の法則。私たち教師の世界に当てはめてみると,なぜか心がスッと静かに落ち着きます。この成長の螺旋階段を上るとき,専門的な知識,教育実践力,総合的な人間力等が磨かれると私は信じています。その信は,プロフェッショナルの教師として,学ぶ者の前に立つ者として,成長し続けていくために必要な覚悟とも言えます。

人・本・旅

とは言え,やっぱり変化のない日々はしんどい。そう思われる方も少なくないでしょう。そのようなときは,「人・本・旅」です。元立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏,元全国連合小学校長会長の向山行雄氏は,「成長には人・本・旅」と述べています。

憧れの人,疎遠になっていた人,考え方の異なる人に会う。

哲学,料理,医療,絵本など,ジャンルを問わず乱読する。

普段なら使わない道を通る,普段なら手に取らないパスタソースを買う。普段なら見ない映画を選ぶ。

こうした「人・本・旅」を通して,自分の固定観念を崩し,新しい自分に出会ってみてはいかがでしょうか。教師,いや,人生の螺旋階段を,焦らずマイペースに上っていきましょう。

小清水 孝(こしみず たかし)

目黒区立不動小学校 主幹教諭


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現場で使える技術、できる実践、リアルな指導法を日々追究しています。
現場の先生方、共に考え、指導法の選択肢を増やしていきましょう! 
NPO教育サークル「GROW5th」代表。

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