大学院進学を迷っている先生方へ!
どこまで需要があるか分かりませんが、大学院進学を迷っている先生方へ。現在大学院に進学している私からメリットを紹介できたらと思います。
明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治
大学院に進学して思うこと
今回は、私が大学院進学を実際にしてみて思うことを書いていこうと思います。まず、結論からいうと大学院進学は「すべき」だと私は考えます。この「すべき」というのは、もちろん現職で大学院進学を悩まれている方にとってという意味です。
なぜ、「すべき」なのか、幾つかの理由を以下に書いていきます。
1.膨大な勉強時間が確保できる
まず、大学院進学を決意した背景には、現場にいる頃から常々、もっと本を読んで学ぶ時間がほしいと思っていました。
しかし、現場にいると、ゆっくり本を読んで、学ぶことができるのは、長期休暇くらいで、良くても土日祝日の休みで時間に余裕があるときに限られます。
そんな中、もっと腰を据えて勉強がしたいという思いが強くなりました。そして、ちょうどその頃、キャリアとしても中堅を迎えるにあたり、より深く学びたい課題というのも自分の中でありました。
そこで、思い切って大学院進学を決意しました。大学院に入学して1年目こそ、履修するべき授業なども多々あり、そこに時間がもっていかれます(大学院の授業が勉強にならないとは言っていないことをここで断っておきます)。
しかし、それでも現場にいる頃と比べて、格段に勉強できる時間は確保できます。何といっても、明日の授業の教材研究をしなくていいのですから。そして、この「明日の教材研究をしない」ということの副次効果として、読む本の「質」も格段に変わりました。
どういうことかというと、例えば、私は今、小学校における文学教材の研究をしています。現場にいる頃は、文学教材の本を勉強しようとすると、「明日から入る単元の流し方はどういう方法があるのかな」や「この学年のこの単元では、どういうことを押さえないといけないのかな」等、いわゆるハウツー本にはしっていたものでした。それは、先にも述べましたが、とにかく明日から始まる授業が最優先事項になっている為、無理もありません。
しかし、大学院にくると、そういったハウツー本の類の本は一切読まなくなりました。というより、研究をするにあたって、もっと、芯の深い部分が大事になってきます。そのため、より教科の本質の部分を捉えて、どういったことが今までに研究されてきているかという膨大な先行研究を読んでいかなければならなかったからです。
また、自分のこれまでの実践が理論的にどう裏付けされるのかということを確かめられるのも大きな魅力です。膨大な本を読む時間も確保できる為、本来私がしたかったように、腰を据えてそういった類の本を読むことができます。本当に豊かで自分の身にもなると実感しています。
2.「井の中の蛙大海を知らず」を実感できる
これは、先に述べた「膨大な先行研究にあたる」ということにも繋がります。自分の課題だと思っていたことについてあらゆる文献を読むと、たいていこれまでに研究されてきているのです。
私自身、現場にいる頃から、本を読んで知識を蓄えていた方だと思っていましたが、全然そんなことありませんでした。
昔からの文献を読むと、「こういう研究があって、今の単元の流し方になっているんだな」等、どういう流れで、今の教育の形があるのかということが、よく分かります。
また、教授との問答も自分の拙さを大変思い知らされます。現場にいる頃は、「大学の教授ってそんなに偉いのかな?」と少しばかり思っていた自分がいましたが、自分がいざ大学院進学をし、論文を書く立場に立つと、教授の凄さが分かります。
論文一つとっても、どれだけの文献を読み、自分なりの論を構築してきたか、現場にいる頃には知る由もありませんでした。
そんな教授に自分が書き進めている論文の指導をいただくことは、大変貴重であります。自分では、これ以上ないと思うくらい仕上げていった文でさえも、簡単に論破され、またそれまで考えもしなかった新たな課題が見えてきます。
こういった感じで、ソクラテスの言葉ではないですが「無知の知」というのを自覚できただけでも、大学院にきた価値があると思います。
知らないことが多いからこそ、まだまだ、文献を読んでいかなければならない、自分なりの理論を確立していかなければならないと思えます。
つまり、その自覚こそが、勉強する原動力になるのです。そして、この歳になって、知らないことを知ることができたこと、また知らないことを自分の満足のいくまで勉強できるところ、それが大学院だと思います。
大学院進学を選んで正解でした
最初にも述べましたが、私は、大学院進学を選んで正解だったと思います。それは主に上記の2つの理由からです。もちろん、ここでは書いていないしんどさがあるのも事実です。
「大学院って学生でいいね」「楽しそうやね」「休みもたくさんあっていいね」等とよく言われますが、学生のイメージの遊ぶことの「楽しさ」を感じたことは正直ありません。もちろん、遊びにいっているわけではないので、「楽しさ」は必要ないのですが…。
だから、楽しさを求めたり、現場から逃げたいと思ったりしている人にはあまり向かないかもしれません。もっと勉強をしたい、という方には、それこそ学ぶ「楽しさ」は存分に感じられると思うので、お勧めします。
川上 健治(かわかみ けんじ)
明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。
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