2022.09.05
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メンタルヘルスを考える(後編)

前回の記事では「メンタルヘルスを考える」ということで、自分自身の内面に向き合うということについてお話をしてきました。 「自分のことは自分がよくわかっている」と思ってしまいがちですが、意外と自分のことを、自分ではよくわかっていないということも多いようです。そして知らず知らずのうちにそれがメンタルヘルスに負荷をかけていることもあるようです。 今回は実際に負荷がかかったらどうするかということについて、お話していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭 丸山 裕也

悩んだら、「相談する」というのは当たり前です。しかし…。

自分の心に、自分が耐えることができない負荷がかかったとき、そんな時は「誰かに相談」するというのが、きっとよく知られている方法です。そしてその相談窓口も、ネットで調べれば簡単に出てきます。
誰かに話を聞いてもらう、悩みを共有することは、一人で抱えている負荷から解放されることです。たとえ解決策が出なくても「それは大変でしたね。辛かったですね」と言ってもらえるだけで、心にゆとりが生まれることがあります。(しかし中には、逆に「俺のこの辛さが本当にわかるわけないだろう」と逆効果になってしまうパターンの人も存在しています。)

ところが、私たち教員の中には「このくらいの仕事、みんな乗り越えてきたんだ」と頑張りすぎてしまったり、「みんな忙しいのに相談聞いてもらえる余裕はないよな」とため込みすぎてしまったり、「相談」という手法を選択することができないことも多いようです。
では、どうするべきでしょうか?

耐えられない負担が来た時に、当然そこから「逃げる」ということも、自分の心を守るためには必要なことです。それが仮に誰かの迷惑になってしまうことであっても、それは仕方のないことです。
ところが、この「逃げる」ということも、教員の多くはできないことが多いのではないでしょうか。

これはこの仕事の「責任感」というところにも大きくかかわっています。
「熱でもないのに、気分が落ち着かないだけで休んじゃいけない」
「自分が休んだら、誰かに仕事を押し付けてしまう」

きっと、こんな考えはこの仕事をしている皆さんの頭によぎるのではないでしょうか。

私はあえて、皆さんにお伝えします。
「相談をしても、その日の授業を休んでも、いいんです。自分の心が疲れて、ダメになりそうなときは、まずその心の問題の解決に一番良いことをしましょう」
この言葉は私と、私が昔勤務していた学校で仕事に悩んでいたある先生の2人で考え出したキーワードです。
もし、自分が休んでしまったことで迷惑をかけたと感じたら、心のゆとりが生まれてから「あの時はありがとうございました」とお礼を返せればいいのです。
自分の心の問題の解決に一番良いことをしていきましょう。
ちなみに、このキーワードを一緒に考えた先生と私にとって、心にゆとりを生む行動は、「一緒に焼き肉を食べながら愚痴を言い合う」というものでした。想像しただけでゆとりが生まれそうですね。

心にゆとりを作るために

激務に追われていると、お休みの日でも「あれもしなければ、これもしなければ」と考えてしまいがちですよね。せっかくのお休みにそんなことを考えていると、もやもやもやもや、なかなか満喫できませんよね。そんな時、私はどのようにしているか参考になるかわかりませんがお伝えしたいと思います。

  1. 金曜日の夜、仕事から帰る前1時間くらいに、適当な裏紙を用意します。
  2. その紙に黒色のボールペンで「やらなければいけないこと」をザーっと箇条書きで書きだします。
  3. 赤ペンで優先順位の高いものから①、②、③…と書き出していきます。
  4. 1時間、普通に仕事をして過ごします。
  5. 帰る前に、その紙を確認します。何か付け足すことがあれば、青色のペンで書きこむようにします。

紙にやらなければいけないことが書いてあると、自分の頭に留めておく必要がなくなります。すると、休んでいる間に仕事のことを考える時間は圧倒的に少なくて済むようになります。万人向けの方法ではないかもしれませんが、もしお休みに仕事のことを考えもやもや過ごされている方は試してみてもいいかもしれませんね。

さて、ここまでメンタルヘルスについてお話をしてきました。
自分が仕事をしていて感じますが、教員という仕事は責任感ある仕事で、負担も大きくなりやすい仕事であると思います。
心も身体も元気で仕事に取り組んでいきたいですね。今回も読んでくださりありがとうございました。

丸山 裕也(まるやま ゆうや)

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭
公認心理師、学校心理士、障害者スポーツ指導員(初級)、福祉用具専門相談員
「あした、またがっこうでね。」と、子どもも教師も伝え合うことができるような、楽しい学級づくりを目指しています。また、障害のある子どもたちの心の健康について、教育と心理の二面からアプローチしていく方法を考えています。
特別支援学校で出会ってきた子どもたちとの学びを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。


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