2025.10.06
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社会科で学ぶこととは? 目標と授業づくりをつなぐ視点

社会科の目標とは?
社会科で身に付けたい知識とは?
社会科の基本を見つめ直してみました。
今期は、社会科の授業づくりを中心に書き留めていこうと考えています。

姫路市立白鷺小中学校 主幹教諭 竹内 哲宏

社会科の目標

学習指導要領には、社会科の目標が次のように示されています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー

ちょっと難しいですね。
これをChatGPTに「小学生にもわかりやすく解説してください」と尋ねると、次のような回答を得ました。

「社会のことをよく考えて、みんなで問題を見つけたり解決したりする活動を通じて、世界がつながっていくこれからの時代に、自分から行動できる人になりましょう。そして、平和でみんなの意見を大切にする国や社会をつくるために大切な力や心を育てましょう」

つまり、

・ただ勉強するだけじゃなくて、「どうしたら社会がよくなるかな?」と考えることが大事。
・世界の国々とも関わりながら、自分の意見を持って行動できる人になろう。
・みんなで話し合って、平和でみんなが安心して暮らせる社会をつくる力を身につけよう。

ということなんです。
流石です(笑)。ずいぶんわかりやすくなりました。この中で注目したいのは「平和でみんなが安心して暮らせる社会をつくる力」の部分です。
学習指導要領では、「平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎」にあたる箇所です。
社会科の目標は「公民としての資質・能力の基礎」です。
この具体がわかりにくいところですが、ChatGPTはわかりやすく説明してくれています。

ちなみに私は、「日常生活の中でよりよい社会につなげるように自分の行動を選ぶこと」と捉えています。
私たちは、ものを買うとき、使ったものを捨てるとき、自分たちの代表者を決めるときなど、さまざまな場面で選択という行動をとっています。
その選択が個人的な理由ではなく、社会的にどのような意味や価値があるのかを考えて取り組んでいくことが大切だと思います。そのためには、知識が必要になります。知識がないと思い込みや噂に流されたり、感情に基づいた行動が強くなったりしてしまいます。
それでは、社会科で身に付けたい知識とはどのようなものでしょうか。

社会科における知識

例えば、「三重県四日市市で発生した主に硫黄酸化物による大気汚染が原因の公害は何でしょう」という問いに対しては、「四日市ぜんそく」という知識があれば答えることができます。このような知識は、全く必要ないとはいいませんが、社会科で身に付ける知識にはなり得ません。
なぜなら、このような知識を大量に持っていても社会的な意味や価値を考える際に役に立たないからです。社会科で身に付けたい知識とは、次のような問いに対峙するものです。

・四日市ぜんそくは、どのような公害なのだろう。
・なぜ、四日市ぜんそくという公害が起こったのだろう。
・四日市ぜんそくに対して、人々や国・県・市、会社はどのようなことに取り組んだのだろう。
・四日市市の環境をよりよくするために、人々はどのような取り組みを行っているのだろう。

これらの問いを考えることを通して、「関係機関や地域の人々の様々な努力により公害の防止や生活環境の改善が図られてきたこと」や「公害から国土の環境や国民の健康を守ることの大切さ」を理解します。これらが、社会科で身に付けたい知識です。
この知識は、四日市ぜんそくだけでなく、他の公害にも適用されます。つまり、「四日市ぜんそく」を事例にして、公害が起こる仕組みや公害を解決するための人々の取り組みを学び、今後、公害を起こさないようにするためにどうすればよいかを考えられることが必要です。

現在、プラスチックによる海洋汚染が問題になっています。プラスチックは安価で便利な反面、自然分解されるのに数百年かかるため自然環境に被害を与えたり、マイクロプラスチックとして動物や人間の体内に入ったりするという問題があります。
また、今年8月にプラスチック汚染防止に向けた条約を作ろうとスイスで開かれた会議は再び合意を見送ることになりました。そこには、世界各国の思惑が絡んでいます。
プラスチックという私たちの生活に身近なものの使用や廃棄の仕方が、地球レベルの環境問題とつながるのです。このような問題を考える際に、先述した公害の学習で習得した知識や4年生で学習する廃棄物の処理に関わる知識が活用できます。

福沢諭吉が「活用なき学問は、無学に等しい」と述べるように、社会科で得た知識は、現実の社会や生活の中で具体的に使うことで意味を持ちます。
社会科では、日常生活の自分の行動の選択が、よりよい社会につながるようにしたい。そのため知識を子どもたちに身に付けることを目指したいです。

竹内 哲宏(たけうち てつひろ)

姫路市立白鷺小中学校 主幹教諭


世界遺産姫路城の目の前にある姫路市初の義務教育学校に勤めています。
資質・能力を育成するための授業づくりを中心に発信できればと考えています。

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