社会とのつながりを(1)
担当する小学校3年生の社会科で農家の仕事に関する授業を行っています。さいたま市で多く生産されている「こまつな」作りを取り上げ、農家の方がどのように工夫して育てているのか、そしてその「こまつな」がどのように私たちのところまで届くのかということを学んでいます。本当であれば、実際の畑を見学しながら、児童が「こまつな」作りのイメージをもちやすくして学んでほしいところです。しかしながら、勤務校のあるさいたま市北区は農業があまり盛んではありません。近くに農家がいないので農家の仕事を見学しに行くのが困難です。そこで、市内で農家を営んでいる方にゲストティーチャーとしてお迎えし、指導を受けたいと思いました。
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一
農業の授業
講師に選んだのは、市内の見沼田んぼで「こどもやさい・こばと農園」を経営する田島友里子さんです。田島さんは広い畑を一人で切り盛りしており、地域の直売所やスーパーなどに野菜を出荷しています。これから法人化も目指して、子どもたちに優しい有機野菜を作っている田島さんから野菜作りの工夫だけでなく、夢を追いながら仕事をする大人の姿も学んでほしいと思いました。
教科書にはたくさんの写真資料や農家の方の言葉などが収録されていますが、やはり直接農家の方に仕事についてお聞きするのが一番良いと考えました。
昨年度も、こばと農園の田島さんに5年生の授業で登場いただきました。5年生の社会科では、日本の農業について詳しく学んだ後に、「地産地消」についても考えました。その場面において、地域で活躍する田島さんにお越しいただき野菜作りについて話をしていただきました。
昨年度の5年生の子どもたちも地域でよい野菜をつくろうと努力をしている田島さんに大変関心を持ち、実際に野菜を買って食べる子もいました。やはり、人を通して学ぶことは大変重要であると感じます。今年度の3年生の学習でも田島さんを学習の素材として活用させていただくことにしました。
地域の農家の方についての関心を高める

こばと農園の野菜展示
まずは、ゲストティーチャーとして子どもたちに指導していただく、「こばと農園」の田島さんに児童が興味をもつための工夫を行いました。
まずは、野菜作りに関する掲示です。田島さんがこれまで取り上げられた新聞や雑誌などの記事を掲示し、児童が閲覧できるようにしました。児童は、自分たちの住む地域で農業をされている方の記事に大変興味を示していました。
また、田島さんの作った野菜を学年のフロアに展示し、児童が実際の作物を見ることができるようにしました。児童は、実際の野菜を手に取ってみることで、野菜がどのように作られているのかということを知りたいという気持ちを高めることができました。
「オクラってこんな形をしているんだね」
「クウシンサイという野菜を初めて見たよ」
「田島さんはどうやってこの野菜を運んでいるのかな」
「田島さんはほかにどんな野菜を作っているのかな」
「野菜作りにどんな工夫をしているのだろう。」
等、児童は自分が知りたいことを友達と話すようになりました。
児童の中には保護者に頼んで、こばと農園の野菜を買って食べてみる児童も出てきました。そのように生活と関連付けて学習を進められているのをうれしく思います。
子どもたちは、社会科の授業で学習したことや、学年の掲示コーナーで紹介された、こばと農園の田島さんの情報をもとに、野菜作りについてさらに知りたいことを考えました。
そして、直接田島さんに聞いてみることにしました。実際に農家をしている方からお話を聞くことができるので、子どもたちは大変楽しみなようでした。田島さんへの質問をたくさんワークシートに書けました。質問は田島さんに事前にお送りし、お話に盛り込んでもらうことにしました。
「田島さんはどんな野菜を作っているのですか?」
「一番力を入れているのはどの野菜ですか?」
「出荷をする方法は何ですか?」
「出荷先をどのように決めているのですか?」
「どのくらいの時間お仕事をしているのですか?1日のスケジュールを教えてください。」
など、社会科の時間に学習したことなどを意識した質問が多く出ました。
ゲストティーチャーの田島さんが教室に来た時にいろんなことを質問するのが楽しみなようです。
こんな子どもになってほしい
今回、このように教科書の学習を補充するものとして、地域の農家の方との連携を図りました。その理由は授業を充実させることもありますが、もう一つは地域の素敵な大人の姿を見てほしいということです。
こばと農園の田島さんは夢をもってお仕事をされています。新しい野菜作りにもどんどん挑戦し、市内に良い野菜を提供しようとされています。そのような姿から、子どもたちがたくさんのことを学んでほしいと思っています。
授業当日に向けて、子どもたちと農業について、そして田島さんのお仕事について興味を高めてきました。当日の授業が大変楽しみです。
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菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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