これからの教育活動に最適!~スポーツスタッキングのすすめ~
その教育的効果について、今後注目が集まる「スポーツスタッキング」について紹介します。
旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也
スポーツスタッキングについて
「コーディネーション理論と体つくり運動(あそび)実践」で少し挙げた「スポーツスタッキング」について紹介します。
このコロナ禍であるため、感染対策をしながらスポーツ活動を行うことが難しくなっています。しかし、スポーツスタッキングはこのような状況下でも行うことができるため、今後加速度的に普及が見込まれるものです。
日本ではまだまだ馴染みは薄いですが、海外ではとても多くの人が取り組んでおり、学校現場にも普及しているようです。そんなスポーツスタッキングですが、どのような効果があるのでしょうか。
コーディネーション理論との関係
スポーツスタッキングは、前回までご紹介していたコーディネーション理論の7つの能力の中の「識別能力」の育成にもつながる活動です。識別能力は道具を扱う能力になります。ボールを扱う球技系や、道具を使用するラケットスポーツ系にはこの能力が必須となってきます。そのため将来の運動能力に繋がる能力を育成することにつながります。
体部位再現との関係
またそれだけでなく、発育発達についても良い効果が見込まれます。体の部位の大きさに応じて、脳が担当しているその部位の大きくなっているわけではありません。体部位再現と呼びますが、わかりにくいと思うので例を挙げて話しますと、例えば体幹を担当する脳の場所は狭くなっています。しかし一方で、手や口と担当する脳の場所はとても広くなっています。体の部位と脳の担当する部位の広さを人形で表したのが以下の写真です。この人形はペンフィールドのホムンクルス(人形)と呼ばれ、脳の担当している部位が広いところは大きく、逆に脳の担当する部位が狭いところは小さく作られています。
その証拠として、ペアの背中を何本かの指で押し、その本数を答えさせてみてください。ほとんど正解を答えられないと思います。
そのため手を使う活動は脳を発達させ、活性化させることができるためとても有効です。お年寄りに家事を引退させたら一気に認知症になってしまったという話をよく聞きますが、このことが一因となっていることでしょう。
非認知的能力との関係
また新しい教育の原点である保育の分野では「非認知的能力」の育成がうたわれています。
非認知的能力とは数字で表せない能力を指し、3つに大別できます。
1.目標に向かってがんばる力
2.人と上手に関わる力
3.感情をコントロールする力
ちなみにこの非認知的能力が高い人と低い人では、大人になってからの、雇用形態や所得、学歴、仕事ぶりや社会的能力に優位な差が生まれることが分かりました。ペリー就学前教育プログラム(ペリー・プレスクール・プロジェクト)という非認知的能力を育成するプログラムを受けた子どもと受けていない子どもを40年間にわたり追跡調査をして得られた結果です。
スポーツスタッキングはこの非認知的能力の育成につながる要素が多く含まれている、とても教育的効果が高いスポーツになります。
最後に
他にも以下のような利点があります。
・室内で行うため、夏の暑い日や雨天時でも行うことができる
・コロナ禍でもソーシャルディスタンスを保って行うことができる
・発達段階が異なる異年齢の集団でも行うことができる(異年齢保育・幼保小連携・三世代交流で行うことができる)
とても優れもののスポーツスタッキングです。このようにいろいろな利点があるのがスポーツスタッキングです。あなたのクラスや学校でも導入してみませんか?
赤堀 達也(あかほり たつや)
旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。
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