2021.04.19
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

コーディネーション理論と体つくり運動あそびの実践方法

前回にお伝えしたコーディネーション理論をもとに、実践方法をご紹介します。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

前回、コーディネーション理論についてお伝えしました。今回はその実践方法をお伝えしていきます。体つくり運動(あそび)の実践方法をお伝えしていきます。

体つくり運動(あそび)の実践方法

<バランス能力>

バランス能力を育てる体つくり運動遊びは「線鬼」や「田んぼ鬼」が有効です。線鬼は線の上だけで行う鬼ごっこです。

田んぼ鬼は「田」の字に線を引き、逃げる人は「口」の部分は走ることができ、「十」の部分はケンケンしなくてはいけないルールです。一度触られたら片方の靴を「十」の真ん中に置き、二度目に触られたら鬼となります。二回触られる前に誰かが靴を取り返してくれたらリセットできます。

また「クモ鬼」もいいです。これは鬼はお腹を下にした普通の四足歩行で追いかけ、逃げる方はお尻を下にした四足歩行(クモ歩き)で逃げる鬼ごっこです。最近の子どもはつまずいた時にとっさに手を出せずに転んでケガをしてしまったり、手をついても変についてケガをしてしまったりするため、手の意識を高め、普段とは異なる姿勢に慣れるための遊びです。

<連結能力(カップリング能力)>

「二拍子三拍子」という遊びです。腕と脚を異なるリズムで動かすような遊びになります。腕は「横・下」の二拍子で動かします。脚は「パー・グー・グー」の三拍子で動かします。腕と脚を別に動かすため難しいです。

「ATA」という遊びも面白いです。腕は「上・横・下・横・上」と動かします。脚は「パー・グー」を繰り返します。こちらもなかなか難しいです。

<反応能力(リアクション能力)>

二人組で向かい合ってジャンケンします。負けた方は相手を回り元の位置に戻ります。何度か行ったら勝った方が行うようにすると更に効果的です。脚ジャンケンでも楽しめます。

次に勝った方は(負けた方でも可)二人ではない他の誰かを指名して回らせるようにします。指名された人も同じようにジャンケンしているため、たまたまどこかに走っていくとなかなか回れず面白くなります。

<定位能力(オリエンテーション能力)>

鬼ごっこはとても良い実践例です。ここでは「しっぽ取り鬼」をあげたいと思います。しっぽ取り鬼はしっぽ一本で行うことが多く、取られたら終わりというケースが多いです。待っている子どもはとてもつまらないです。そのため一人が持てるしっぽを多くします。そしていろいろなところに着けさせます。そうすると取られないように回転しながら走ったりするため、いわゆるフットワークにつながる遊びになります。

また「スポーツ鬼ごっこ」も面白いです。遊びの中で戦術的な頭を養うことができます。(詳細は「スポーツ鬼ごっこofficial site」参照)

<変換能力(アダプタビリティ能力)>

前述したしっぽ取り鬼と関連して、「(1対1)しっぽ取り対決」が良いです。二人組になり一本ずつしっぽをお尻の位置につけて着けて握手します。もう片方の手でしっぽを取り先に取った方が勝ちとなります。

「大根抜き対決」も面白いです。互いに相手の片方の足を持ち合います。脚を持ち上げたり引っ張ったりして相手を倒したら勝ちです。

<識別能力(ディファレンシング能力)>

識別能力は物を扱う能力です。スポーツスタッキングというカップを扱って遊ぶスポーツは各年代の発達段階に合わせた活動が自然とできるため、とても有効なスポーツ遊びです。(詳細は「スポーツスタッキング 一般社団法人WSSA-JAPAN」参照)

<リズム能力>

リズム能力は耳から聞いた音楽やリズムに合わせる能力と思いがちですが、目で見た動きを真似する能力もリズム能力となります。そのため「震源地」という遊びが面白いです。鬼を一人決め外にいてもらいます。誰か一人「震源地」を決め他のみんなはその人の真似をします。鬼が見つけたら鬼の勝ちで交代します。

またダンスをあえて教えずに見様見真似で行わせるのも良い実践例です。

最後に

いかがですか?新しいものを多く紹介しましたが、先生方が知っている遊びを取り入れるのでも大丈夫です。ポイントはこれら7つの能力を偏ることなく、まんべんなく活動に取り入れられるように子どもたちに提供していくことです。特に幼児期・児童期はその考え方が大切です。中学高校では各競技の練習や授業をこのコーディネーション理論を用いて行うと格段に面白くなります。ぜひ行ってみてください。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

同じテーマの執筆者
  • 江尻 寛正

    倉敷市立連島南小学校 教諭

  • 高橋 英路

    前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
    山形県立米沢東高等学校 教諭

  • 高橋 朋子

    近畿大学 語学教育センター 准教授

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 赤羽根 和恵

    東京福祉大学 国際交流センター 特任講師

  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

  • 藤井 三和子

    兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭

  • 川島 隆

    浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
    前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師

  • 都築 準子

    愛知県公立中学校勤務

  • 山口 小百合

    鹿児島市立小山田小学校 教頭

  • 大村 高弘

    元静岡大学教育学部特任教授兼附属浜松小学校長

  • 友弘 敬之

    明石市立鳥羽小学校 教諭

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop