2020.01.16
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東京オリンピックに向けて~新学習要領と非認知的能力~

半世紀ぶりに帰ってきた東京オリンピック。また時を同じくして改定される新学習指導要領。その偶然の一致を掛け算にできるように「非認知的能力」について述べていきます。非認知的能力というと幼児教育の分野ですが、幼児教育の先生だけでなく、全年代の子どもを指導する先生方に読んでいただきたいです。

旭川大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

明けましておめでとうございます。昨年は、私のコラムを読んでいただきありがとうございました。新年も引き締めて執筆していきます。どうぞよろしくお願い致します。

2020年になりました。今年の目玉は何と言っても、スポーツ最大のイベントであるオリンピックが東京で開催されることです。このまたとないチャンスを子どもたちにとって有意義なものとするために、また先生方にとっても価値あるものにするために、どのようなことに視点を置いて考えていったらいいのでしょうか。

保健体育教員としてはこれを機に、今後の日本の経済を圧迫していくと予想される高齢者の医療費を少しでも解消できるように、運動習慣につながるような取り組みにつなげるということも考える必要もあるかとは思っています。しかし指導要領の改訂に伴い、もっと大切なことがあるのではないかと思い、あえて体育ではない次のことを述べていきたいと思います。

新学習指導要領において「資質・能力の育成」をキーワードに、全年代一貫して求められていくこととなっています。幼児教育においても同じであり、一足先に平成30年度から既にスタートしています。そして幼児教育ではその中でも「非認知的能力」について特に強調して取り上げています。これはつまり、非認知的能力がこれまで10年の教育の中で疎かにされがちだったこと、そしてこれからの時代に求められていくであろうものであることを示しています。そのため全年代の子どもたちを指導している先生方に読んでほしいと思っています。すぐキレる、逆ギレする、やりたいことしかやらない、自分のことしか考えない、そんな現代の子どもたちですが、その教育につながるものです。その非認知的能力とは一体何なのでしょうか?今回は東京オリンピックを通して、その非認知的能力につなげたいと思います。

認知的能力というと「数字で表せる」つまり認知できる能力ということになります。例えばテストの点だったり、学力だったり、IQだったりするものです。

一方、非認知的能力とは「数字で表せない」つまり認知できない能力ということになります。例えばコミュニケーション能力だったり、粘り強さだったり、自制心だったりするものです。この非認知的能力は様々なものがありますが、大きく3つに分けることができます。それは「目標に向かってがんばる力」「感情をコントロールする力」「人と上手に関わる力」です。

これらの視点でスポーツと捉えていくと、東京オリンピックは単なる祭典ではなく、教育的にとても価値の高いものになります。良い記録が“出る・出ない”という単なる結果論ではなく、プロセスを大切にする教育につなげることができます。教育現場では、指導したことが必ずしも良い結果につながるとは限りません。そんな時、子どもの中では「先生に言われた通りにやったのに上手くいかなかった」という感情になりがちですが、それだけではない成長を伝えることができます。

同じ教員として「親が子どもを叱らないから悪い」「しっかりしつけていない親が悪い」と思う気持ちはとてもよくわかります。しかし、家庭にいる時間よりも学校にいる時間が長い生活を営んでいる現在の子どもたちの状況から考えてみると、きっと親は叱れないのではないかと思いますし、しっかりしつけるまでの関わりを持てている自信もないのではないかとも思います。そのような環境下において、親としたら善し悪しの判断ではなく、子どもの味方になることで、子どもとの関係を築こうと考える人がいてもおかしくはありません。いわゆるモンスターペアレントです。また表面的に学校に言ってくることはなくても、家庭での会話の最中にあえて敵(先生)を作ることで「親は味方だ」アピールをする手段も考えられます。

今後、日本は男女共同参画により女性の社会進出が一層進んでいくことが考えられ、その傾向はますます強くなっていくことでしょう。そんなご時世ですが、先生方や子どもたちにオリンピックを通して見て欲しいのは、記録や順位ではなく、選手やコーチの理念や哲学です。こちらを知ってほしいと思っています。

私は教員になる前にバスケットボールで日本や海外のトップレベルのコーチから学ばせていただく機会がありました。その誰もが理念や哲学を持っていました。技術的なこともとても勉強になりますが、理念や哲学がその根底にある方が良い選手・コーチ、結果を出せる選手・コーチでありました。

スポーツとの関わりは4つあると言われます。「行う」「見る」「支える」「調べる」です。単なるスポーツ観戦としてではなく、理念や哲学を調べる、学ぶために観戦するのも面白いと思いますし、子どもたちに伝えていくのも伝わりやすいと思います。

オリンピックの観戦を辞退する学校が多くあるということをニュースで聞きました。少人数の先生たちで大人数の子どもの引率は安全性を確保しづらく、それによる辞退であることでしょう。その判断は仕方ないものだと思います。しかし「引率なし=(理念や哲学を)調べない」になってほしくないと思っています。かつて私は市で体力テストが最低水準に近い学校のバスケットボールを指導していたことがあります。ことあるごとに足を運び、引率を繰り返すようにしました。その結果、県大会で優勝したことがあります。とても指導しやすかったことを覚えています。「苦労は買ってでもしろ」とはこのことだなと思いました。この時は足を運んで調べましたが、現在ならいろいろな媒体を使用して調べることが可能です。

7月からスタートする東京オリンピック。今から準備してはいかがでしょうか?

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川大学短期大学部 准教授・元パーソナルストレッチトレーナー・バスケットボールコーチ
幼児体育指導、小学校のスポーツ少年団指導、中学校の部活動指導、高校の体育指導、大学の体育指導及び部活動指導と、全年代の子どものスポーツ及び体育指導の経験を生かし、子どもの運動能力の向上を図る研究を行う。

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