今回は、「魅力的な学習課題」で支えられる国語科の授業デザインについて書こうと思います。みなさんが国語科の、特に物語文の授業を1時間デザインして実践した場合次のようなことが起こることはないでしょうか?
子どもたちから「もっと考える時間がほしい!!」と言われ、時間をとると最後に「時間がないから振り返りは、今日は書かなくていいよ」「ちょっと授業延長するね」等々です。
つまり、「時間が足りない」という現象です。かく言う私も、今までは1時間の流れをルーティン化しており(2019.11.05の記事を参照)、その中で1人学びの時間を5分間としていました。それでも、子どもたちの意見が活発になると最後の振り返りまでいかずに終わってしまったことは幾度とあります。
1.一人学びの時間は適切か
さて、多くの先生方は、この「一人学び」の時間を授業内でとっているのではないでしょうか?
私の知る限り、例外として、授業外でとる場合は、授業研究の際に、予め子どもたちの意見を教師側が知っておきたいからということもあるとは思いますが。
45分の授業時間の中で、果たして、どれだけ子どもたちに一人でじっくり思考をさせられているでしょうか。この一人での思考がなければ、子どもたちに「深い学び」を体験させられないのではないでしょうか。
ここで武田鉱一さんのお言葉を紹介します。
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豊かな思考は仲間と一緒に話し合い、討論することの中で保障されるといっても過言ではない。だから、クラスの全員が共通の問題意識をもって、同じ土俵の上で問題解決のための活発な討論を行えるように、教師は指導すべきである。
『「わかる」授業のドラマ的展開』吉本均編.1984.08.明治図書出版
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私の授業を今振り返って、初見の課題に対して5分間という短い時間の中で、果たしてクラス全員を同じ土俵にのせられていたのか。答えは否です。
成績上位層の子は、この時間内にでもそれなりの答えを用意してくるでしょう。しかし、成績下位層の子は、問題の意味を読み取ることだけでも精一杯になってしまうと思います。
では、この一人学びをする時間を確保するためにはどうしたらよいのでしょうか。
2.一人学びの時間を家庭学習で
私は、この一人学びの時間を家庭学習におきかえることを提案したいと思います。多くの先生方は国語科の家庭学習は「漢字ドリル」ということが多いのではないでしょうか。
この時間を、説明文・物語文の単元のときだけ、「一人学び」におきかえるのです。すると、子どもたちは、家庭でじっくりと思考を重ね、授業に臨むことができます。
たとえ、答えを見つけられなくとも、思考をした状態で授業に臨めます。こうすることで、クラスの全員がまずは、「同じ土俵」からスタートを切れるのです。
ちなみに、私は、算数科の授業をこのスタイルでしていました。すると、やはり、子どもたちは「何ができていて、何ができていないのか」を分かった状態で授業に臨むことができるので、思考も活発になり、理解度も深まります。これを国語科の授業にも取り入れてみてはという提案です。
授業の流れについて
一人学びの時間を確保するために一人学びの時間を家庭学習とすると、授業の流れは
- 前回の振り返り
- めあての確認
- グループトーク
- 全体交流
- まとめ
- 振り返り
- 次時の学習課題の提示
となります。この流れの利点は、「グループトーク」と「全体交流」の時間をしっかりと確保できることと、そして何より、「子どもたち一人ひとりが考えをもった状態で授業に臨むことができる」ことにあります。
ただ、デメリットもあります。それは、学習課題が「考えやすく」「考えたくなるような」ものでなければなりません。ただでさえ、家庭学習にするのは、とっつきにくいものであるのに、その上、学習課題が曖昧で抽象的であれば学習意欲がなくなります。
だからこその、「魅力的な学習課題」が必要なであり、この「魅力的な学習課題」があるからこそ、この授業デザインが成り立つのです。
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川上 健治(かわかみ けんじ)
明石市立高丘西小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。
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