「発達障害の子どもとの関わりにおける学級担任の重要性」
発達障害の子どもが大人になってから職場で力を発揮し活躍しているという記事が新聞に出ていました。文科省の統計では、普通学級に発達障害の子どもは6.5%の割合でいるとされています。30人のクラスには、2~3人ということになります。教員は様々な場面でそういった子ども達と関わることになります。今回は発達障害の子どもと学級担任の関わりについて書きたいと思います。
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明
「発達障害の子どもは得手不得手が際立っている」
私が小学校の学級担任をしていた頃は、立場(学年主任など)上、そういった子どもを何人も受け持っていました。記事にあったのですが、発達障害の子ども(人)は、得手不得手がとても際立っています。得手(良い部分)が社会の中で役立つと、他の人以上に能力を発揮することができます。私が関わったことのある子どもでも、他の子どもとは少し違った能力を持っている子どもがいました。しかし、学校生活の中では、どうしても不得手の部分が目立ってしまうことが多いです。学校では、その性質上、集団というものでの行動が多くなってしまうことが影響していると思います。
「重要になる担任の関わり方」
発達障害の子どもの成長について考える際、小学校の教員が非常に重要になります。特に学級担任が重要です。発達障害の子どもは、こだわりが強いことなどが特徴の一つです。学級での暮らしを皆がスムーズに送っていくには、担任としては、発達障害を持つ子どものそういったこだわりが不都合に感じられることがあります。それなので、叱ったり、指導したりなどが多くなります。その結果、発達障害の子どもは、自己肯定感が低くなってしまうことが多いです。思春期を迎え、多くの子ども同様、もやもやした感情を抱くことも増えると、様々なトラブル(不登校、家庭内暴力など)につながる可能性も高くなります。
「肯定的に捉えることで情緒が安定する」
学級担任が、肯定的に関わることができると状況は大きく違ってきます。問題を抱えた子どもの情緒が安定してきます。そういった状態を維持できれば、その子の良い部分が前に出てくるような生活を送ることができるようになります。その子の状態をしっかりと把握し、どの様に関わっていくことが望ましいのかを専門機関や親などと連携しながら取り組んでいくことが重要です。この様に特別に配慮しながら関わる必要がある子どもが増えています。学級担任はこういったことをバランス良くすることで、安定したクラスを維持することができます。勿論、発達障害の子どもがそれなりに生き生きと過ごせるクラスは、他の多くの子どもにとっても暮らしやすい空間であるはずです。しかし、現状の学校現場を見ていると、教育の最も基盤を作るようなことをするための時間が足りていないという状況があります。
先日、広島市で中学生が転落して死亡(自殺?)するという事故がありました。学校側は記者会見で「友達からいじられている」と認識していたとのことでした。ちょっかいを出されているという認識はあったのですが、それ以上に関わっていくことはしなかった(できなかった)のです。これは、物理的な時間の余裕、精神的な余裕の無さが関係していると思われます。教師が上で書いたような発達障害の子どものケアをきちんとできるような状況であれば、学級内の様々なトラブルにも関われていくはずです。
「終わりに」
現在「教師の働き方改革」が議論されています。学校で行われていることは全て「子どものため」にされています。多くの行事もそうですし、研究などもそうです。しかし、その行事や研究のために、教師が「ひとりひとりの子どもが教室で安心して暮らせるようにするため」に使う時間が削られているのでは、本末転倒なのだと思います。物理的な時間もそうですし、精神的な余裕もそうです。「教師の働き方改革」が話題になっている現在、それが単に少し行事を減らして終わりになるようなことではなく、「学校において教師がすべきことは何なのか」ということを皆で真剣に考えていくことにつながっていけばと思っています。
以前、関連した文章を書いています。参考にしてください。
鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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