2016.10.18
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子どもの行動変容を促す方法 ~厳しい指導でなく、子どもが納得できる説明を~

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

最近、教師の子どもに対する厳しい指導についてあれこれ考えています。

これまでの教員生活で、大声を出し、子どもを指導(威嚇?)するような教員を見たことがあります。

この数年、若い教員が増えてきました。

若い勢いで子どもを指導しようとしている教員を見ることもあります。

今回は、子どもに対して教師がどの様に接していくべきかということについて書きたいと思います。

このテーマでは、以前に「厳しい指導 是か非か」という題名で文章を書かせてもらっています。

興味のある方は、そちらを読んでもらい、今回はその文と重ならないように書きたいと思います。

「厳しい指導はいらない」

私は、基本的に子どもに対して厳しい指導はいらないと考えています。

勿論、誰かの命に関わる場合や緊急の場合など、強く指導することがない訳ではありません。

通常は子どもが物事を理解できるように言葉で説明するようにしています。

教師が大声を出したり、威嚇に近い指導をしたりすることで、効果的に子どもを変容させることができる場合があります。

しかし、その子どもの変容は「恐怖」や「刺激」によるものであり、深い部分での理解や成長に基づいている訳ではありません。

教師がすべきことは、子どもに「なぜ、そうしなければならないのかを伝えること」だと思います。

「なぜ、人をぶってはいけないのか?」

「なぜ、周りの人と仲良くしなければいけないのか?」

「なぜ、クラスで長縄の練習をしなければならないのか?」

「なぜ、時間を守らなければならないのか?」 等々。

子どもが納得できるような説明を教師が行うことができれば、子どもの行動は変容します。

子どもがうまく取り組めていないような場合、教師は子どもが納得できるような説明をすることができていないことが多いです。

その結果、教師が思ったようには子どもが動いてくれず、教師の「こらーっ、お前達は何をやってるんだー!」などの怒鳴り声につながります。

「教師が怒鳴ることが間違っている訳」

冷静に状況を整理すると、教師が大声を出すことのおかしさ(間違え)が分かります。

子どもが教師の思うように動かなかった原因は、教師にあることがほとんどです。

「教師の指示や準備が悪かった」ということです。

的確で、適切な指示が出れば、子どもはきちんと動きます。

しかし、その指示が、曖昧であったり、不適切であったりすると、子どもは教師が思っていたようには動けません。

自分の思ったように動いていない子どもを見て、イライラして、怒鳴っているという状況です。

原因が、教師側にあるのですから、本当ならば、教師はうまく子どもが動けていないことに関して子どもに謝罪をし、自分のやり方を反省するようでなければいけません。

文句を言いたいのは子どもの方です。

心の中で「先生のあんな説明で分かるわけないよ。先生、何イライラしているんだろう。家で何かもめたのかな?」なんて思っているかも知れません。

「叱らないで済む状況を作る」

このコラムでご一緒している関田先生の「先手必笑」という言葉にとても共感を抱きます。

前回の私の運動会の練習に関する文章でも書きましたが、私は「誉めしばる」という言葉を使っています。

問題行動を起こしそうな子どもをあえて誉めて、良くない状況になりにくくするというやり方です。

先回りをして、子どもがトラブルを起こしにくい状況を作り、活動の質を高くしていきます。

その文章の中にも書いたのですが、子どもに何かを取り組ませる際、できるだけ「意義を説明する」ようにしています。

先ほども書いたような「なぜ、それをするのか」ということです。

活動のはじめに、少し時間が掛かる場合もあるのですが、そういったことをすることで、子どもの中での活動への理解が変わります。

学校で取り組む活動は、場合によって、努力、苦労、我慢などを必要とするものもあります。

運動が苦手な子どもにとっての持久走大会などは、まさにそれに当たるでしょう。

苦しいし、辛いし、遅い子どもにとっては、恥ずかしいし・・・。

そういった状況で、「なぜ持久走大会が必要なのか」を子どもに伝えます。

「どんな仕事においても体力があった方が良い仕事ができること」

「辛い時に我慢ができる精神力は、大人になってからも役立つこと」

持久走は嫌だけど、自分の将来のためにがんばってみようと思えるようにしたいのです。

「意義」や「意味」を理解すれば、子ども達は大変なことにも粘り強く取り組みます。

こういった考え方と同様、私は新しい学級を担当すると「なぜ、学ぶ必要があるのか?」や「なぜ、生きていくのか?」などの少し哲学的な内容にも触れていきます。

これらはテーマとして難しいのですが、子どもがしっかりと日々を生きていくためには必要なことだと思っています。

「あなたが会社の社長だったら・・・?」

私が何かの問題行動の指導をする場面でよく使うのが「あなたが会社の社長だったら?」というものです。

例えば、時間をしっかりと守らない子どもがいたとします。

その子に、「あなたが会社の社長だったら、時間を守らない人を会社で採用しますか?」と聞きます。

大概「採用しないと思います。」という答えが返ってきます。

「それがあなたの将来の姿です。」と私は告げます。

大人になって働けないということは、経済的に難しい状況になることを意味します。

子どもには、働けないと食べるものや着るものなども買えなくなってしまうということを伝えます。

この「あなたが社長だったら・・・」という例えは、様々なケースで使うことができる便利なものです。

子どもも状況をイメージしやすいので、私はよく使っています。

「おわりに」

教師が怒鳴ってしまうような状況は、教師としては「負け」なのだと思います。

教師にとって大事なことは、より良い授業ができるように日々授業研究を行い、それを実践していく。

うまくできないことがあったら、子どもを叱るのではなく、自分自身の至らなさだと理解し、反省し、修正していく。

そういったことの繰り返しが教師には求められるのだと思います。

初任者であっても、中堅であっても、ベテランであっても、教師のそれぞれの立場で自己を高めていくことが大事になります。

そういったことが、子どものより良い成長につながっていくのでしょう。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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