2018.01.18
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

子どものトラブルの半分は教師のせいなのでは・・・

 長期休業明けの最初の日、私は大概寝不足の状態でした。「寝不足だから怒らないように・・・」と思いながら一日を過ごしていました。今回、そういったことに関連して、教師の精神状況を正常に保つことの大切さについて書きました。

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

「長期休業明けの子どもの不適応」

 夏休み、冬休みなどの長期休業明けは子どもにとってトラブルの多い時期だとされています。内閣府の調査によると、子どもの自殺が多い時期は、夏休み明けの時期、春休み明けの時期、冬休み明けの時期となっています。どれも長期休業明けの時期となっています。この時期は様々な要因で子どもがトラブルを起こしやすい時期です。これまで一般的に「子どもの生活リズムの乱れ」などが原因だと指摘されていました。家庭において「遅寝遅起き」の習慣が付いてしまったこと、ゲームやスマホなどに取り組んでいた時間が長かったことなどが影響を与えています。そういったことを受けて、夏休みに暑中見舞いや残暑見舞い、冬休みには年賀状を出し、子どもや親に向けて、生活リズムを整えることの重要性を伝えるなどの方法が取り組まれています。また、学校が再開されて直後には、生活リズムを整えることができるように、遊びの要素を入れた活動に取り組みながら徐々に慣らしていくなどの方法が取られたりしています。

「教師も不適応を起こしているのでは・・・」

 上に書いたように長期休業明けの時期には、子どもは学校生活に不適応を起こしやすい時期です。これは、子どもに限ったことではなく、教師にも言えることなのではないかと思います。特に冬休みは、教師も生活リズムが崩れます。出掛ける機会も多いですし、お酒などを飲む機会も増えます。そういった中で、休み明けが締め切りとなっている宿題のようなものが仕上がらず、休みの最後の日の夜は寝るのが遅くなってしまうこともあります。正に私がいつもそのような感じでした。やらなくてはならないことと次の日以降(学校が再開されたら)にやりたいことなどを考えていると、頭が冴えてきて眠れなくなってしまうのでした。また、休みの最後だからと、録画しておきながら見ることが出来ていなかった番組を見てしまうことなどもよくありました。「休み明けが楽しみだ」という気持ちもあるのですが、それと同じ位、「まだ休んでいたい」という気持ちもありました。まるで子どもと同じような感じです。

 私は、長期休業明けの学校が再開される日、多くの場合、寝不足でした。寝不足などの状態だとパフォーマンスは大きく低下します。特に教師に関しては「カチン」と怒ってしまう頻度が高くなってしまうことなどがあります。子どもも久し振りの学校で、なかなか以前のような流れで動くことができない場合がよくあります。宿題などがきちんと揃わないこともあります。そういった子どもの状態の悪さと教師の状態の悪さが重なり、長期休業明けのトラブルが発生しているのではということです。

「教師の普段のパフォーマンスはどうか」

 長期休業明けのトラブルの発生に、子どもと教師の双方の不調が関係しているのではということを考えている中で、「果たして普段の生活はどうなのだろう?」と考えました。現在の学校現場は非常に忙しい状況になっています。働き方改革の中で、教師の働き方も話題になっています。様々な要因で、仕事量が増え、睡眠時間が削られ、余裕の無い教員が増えていっているように感じます。そういったことが日々の学校教育活動の質に大きく影響を与えているのではないかということです。長い期間、小学校の現場にいて、たくさんの人を見てきました。いつも怒っているような人もいました。職員室で文句ばかり言っているような人もいました。

 教育は、教える人の精神の状態がその質に大きな影響を与えます。寝不足や何らかのストレスなどで精神的に余裕がない状態では、なかなか良い教育はできません。子どもに対して「早寝、早起き、朝ご飯」などの大切さを教師は伝えています。まずは自分自身のことなのだと思います。教師自身がしっかりと生活習慣を整えることで、日々の仕事の質の向上につながっていきます。現在の学校現場は、教師が様々な仕事に追われ、肉体的にも精神的にも余裕が少ない状態であることが多いです。そういった中では、小さなトラブルが起こり、その対応に手間が掛かり、次の日の授業の準備に掛けられる時間が減ります。それがまた次のトラブルのきっかけとなってしまうという「負のスパイラル」に陥ってしまうことがあります。

「終わりに」

 「子どものためになる」というフレーズで学校は様々なものを抱え込んでしまいます。現在の学校が置かれた状況は、様々な部分で無理が生じ始めてきています。「子どものために」業務を改善し、持続可能な働き方に変えていく必要があるでしょう。現在、学習指導要領の改訂に向け、学校における教育活動を組み直していると思います。また、働き方改革などで教師の働き方、学校のあり方について世の中が関心を持っています。学校がより良い形になっていくことを願います。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop