学級経営に悩む先生へ~「黄金の3日間」が授業とクラスを変えるヒント~
クラスが大変で授業どころではない、という声を聞いたことがあります。そう思う気持ちも分かります。
ただ、「クラスが落ち着く→よりよく学べる」のでしょうか?
それとも「よりよく学べる→クラスが落ち着く」のでしょうか?
私はその答えのヒントを「黄金の3日間」の中に見たような気がします。
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭 古市 剛大
授業準備が思うようにできない先生へ
「テストの丸つけや会議、研修ばかりで授業の準備の時間が取れない」
「放課後は家庭への連絡に追われて、あっという間に退校時刻になってしまう」
「クラスが落ち着かないから、授業どころではない」
そんな思いの先生もいるのではないでしょうか?
教材研究・授業づくりが大事であり、先生の仕事ということは分かってはいるのだけど、その他の業務やトラブル対応に追われ、十分な準備ができないなんてこともあるのかもしれません。
子どもたちがしっかり学べるように、まずはクラスの学ぶ雰囲気をつくれるように、人間関係づくりや先生との信頼関係づくりに力を入れている方もいると思います。インターネットで調べれば、「子どもが落ち着いて学べる〇〇法」や「どんな先生でもできる学級経営のコツ」のようなものもたくさん見つかります。
子どもたちが安心してクラスで過ごせる→けんかやトラブルが減る→先生は授業準備に時間を使える→よい授業によって子どもたちの力がつく。
私も以前はそう思い、「まずは学級経営だ」とさまざまな本を読み、手立てを打ってきました。ところが、いろいろな小学校で授業を参観する立場になってから、あることに気付いたのです。
黄金の3日間の意味
「黄金の3日間」という言葉は、一度は聞いたことがあると思います(1週間と言われることもあります)。以前の私は「最初の3日間で、どんな学級を目指すのか、そのためにどんなことをするのかを子どもたちと共有し、見通しをもたせ、ルールを決めて学級の土台をつくるぞ」と思っていました。つまり学級経営のための言葉だと思っていたのです。
4月、始業式の2日後だったと思います。先生方の授業を参観するためにあるクラスへ向かいました。教室に入ると算数の授業をしていて、子どもたちはノートに自分の考えを黙々と書いていました。よく見ると、気になるAさんも必死に考えていたのです。
実はAさんは、昨年度あまり学習に参加できずにいました。ノートを書くのを嫌がり、途中からは学習を放棄して図書の本を読み出すこともありました。
そのAさんが黒板に書かれた課題に向かって学んでいるのです。いったいなぜこのようなことが起きたのか、本人に確認したわけではないので事実は分かりません。でもこれこそが「黄金の3日間」なのではないかと考えました。
どんな人も「よりよく在りたい」と願っている
きっとAさんも、学年が上がり「勉強をがんばろう」と思ったに違いありません。クラスが変わり、担任の先生も変わり、気持ちも一新したはずです。みなさんも同じような経験があるのではないでしょうか? 4月の最初の授業では、どの子も一生懸命課題に取り組む姿が見らませんでしたか? ノートの字が、思ったより丁寧に書かれていたのではないでしょうか? それってAさんと同じで、環境の変化に伴って自分の思い描く「よりよい自分」になろうと努力していたのだと思います。
我々大人もそうですよね? 4月1日の新しい環境での仕事に、いつもより張り切っていませんか? 買ったばかりのノートを使うとき、いつもより丁寧に書きますよね? 1月1日、実現の難しそうな目標を立てませんか?(私はよくしてしまいます)
大人も子どもも、「よりよく在りたい」という気持ちをもっています。それが一番表れるのは、スタートの時期だと思います。
子どもは期待している
勉強の苦手な子も、「クラスや先生が変わる!今年こそがんばるぞ!」と思っているはずです。新しい先生にいいところを見せたいと、張り切って勉強するはずです。
そんなやる気いっぱいの子どもが「先生の言っていることがよく分からない」「先生の話を聞くか黒板を写すだけの勉強かあ」「なんでこの活動をしているのかよく分からない」と感じたらどうなるでしょう? やっぱり勉強は楽しくない、また今年も同じか…なんてことになるかもしれません。
「黄金の3日間」が学級経営にとって重要なのはもちろんだと思います。ただ、それと同時に授業にとっても重要なのです。
「なんだか勉強がよく分かる!」
「今年の先生はおもしろい方法で授業してくれそう!」
「今している学習が何のためなのか理解できたからがんばれそう!」
最初の3日間で子どもたちがそう思えたなら、4月のやる気いっぱいの姿が変わることなく続いていくのだと思います。
こうやって授業を通して先生と子どもの関係ができあがると、学級の雰囲気もよくなってきます。また、授業を通して子ども同士の関係づくりもできます。つまり、授業を通じて学級経営をしていくのです。学校での生活のほとんどは授業です。これを使わない手はありません。
ちなみに4月がスタート時期と言いましたが、2学期3学期の始まりである9月や1月も「黄金の3日間」が適用されると私は思います。この3日間の授業をどう展開するかで、その後の子どもたちの学ぶ様子が決まってくるかもしれませんね。

古市 剛大(ふるいち たけひろ)
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
「道徳の教科化」をきっかけに,道徳のおもしろさと難しさを感じながら,研究と実践を重ねてきました。子供の「知りたい」「話したい」を大事にした授業とは?道徳科における個別最適×協働とは?日々の授業から,そして指導教諭だからこそ見える・感じることを綴っていきたいと思います。
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