2023.03.30
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福島から東日本大震災を学ぶ(5) ハト風船に思いを込めて(さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池 健一さん)

東日本大震災を取り上げた授業を、さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池健一さんが6回にわたって紹介します。菊池さんが実際に福島県の被災地を訪れ、復興する様子などを視察した経験から授業を組み立てました。第5回では、宮城県名取市閖上で行われる追悼式のために、子どもたちがハト型の風船にメッセージを書きました。子どもたちの思いを込めた風船は3月11に、被災地の空に飛ばされました。

閖上のハト風船

毎年、様々な教科の単元を活用して震災を取り上げた学習をしています。震災の学習を進めると、子どもたちが震災について、防災について様々な思いをもつようになります。
そこで昨年度から、宮城県の名取市閖上(ゆりあげ)にある津波復興祈念資料館「閖上の記憶」が3月11日に行う追悼式で飛ばすハト型の風船に、メッセージを書く活動をしています。昨年度の実践でもハト風船にメッセージを書きました。今回も、震災学習のまとめとしてハト風船へメッセージを書きました。

名取市の閖上は震災当時、津波で壊滅的な被害を受けました。宮城県の中でも特に大きな被害を受けています。14名の生徒が亡くなった閖上中学校の遺族会代表として、そして「閖上の記憶」でも語り部として活動されている丹野裕子さんは、震災で13歳の息子さんを亡くしました。
昨年度は丹野さんの新聞記事を取り上げて学習を行ったことから、個人的にも丹野さんにお話を伺うことができました。そのご縁でハト風船へのメッセージも書かせていただけることになりました。子どもたちにとって自分が書いたメッセージが被災地の空に飛ばされることで、子どもたちと被災地をつなぐ架け橋のような存在になってくれると考えました。
今年度は3月11日の追悼式がちょうど土曜日にあたりましたので、当日は担任の私が子どもたちのメッセージが書かれたハト風船を閖上で飛ばしたいと思いました。

伝えたいメッセージをハト風船に

授業の板書

今回の震災学習に活用するのは国語の熟語の構成について学ぶ単元。例えば「水流」は上の漢字が下の漢字を詳しくしている構成になっているなどを学び、いろんな熟語の構成について考えました。この学習を今回のハト風船へのメッセージ書くときに生かしました。

「みんなはこの数カ月、東日本大震災について学習してきました。命の大切さやふるさとの大切さなどについて考えましたね。そこで、感じたことなどをハト風船にメッセージとして書き、被災地の空に飛ばしましょう」と投げかけました。

そして、メッセージは自分が東日本大震災ついて学んで感じたことを2文字の漢字で表現し、その説明を詳しく書くことにしました。前述の漢字学習を生かした活動になります。
子どもたちが自分の想いをどんな熟語で表現するか大変楽しみでした。なお、ハト風船にメッセージを書く授業は、保護者の皆さんも参加する授業参観日に行い、保護者の方にもメッセージを書いてもらうことにしました。家庭でもこの活動に関心をもってほしいと考えてのことです。

ハト風船

子どもたちの書いた漢字の熟語とメッセージには以下のようなものがありました。

「人生…いつ何があるかわからないから、人生を大切にしたい」
「健康…いつでも元気に生きられるように、みんなが健康だったらいいな」
「友達…今、大好きな友達がたくさんいるから、その友達をこれからも大切にしていきます」
「感謝…自分が今生きているのはみんなのおかげなので、感謝をして生きていきます」
「元気…東日本大震災で亡くなった人たちの分まで、元気に生きていきたいと思います」
どのメッセージも心を込めて書かれていました。

東日本大震災、そして被災地の方々と子どもたちをつなげることができたと強く感じました。

閖上で…ハト風船を

閖上の空に飛び立つハト風

3月11日当日は、宮城県名取市閖上を訪ね、復興の様子を見学しました。閖上は震災の際の津波で壊滅的な被害にあいました。しかし、今は町全体がかさ上げされ復興が進んでいるようです。川のそばには大きな商業施設もたち、観光客の声も聞かれるようになりました。

丹野さんが語り部を務められている「閖上の記憶」では、毎年、遺族の方が中心となって東日本大震災で亡くなられた方たちへのメッセージを書いたハト風船を飛ばしています。今では全国からハト風船を飛ばしに人々が訪れます。
私も昨年度はクラスの子どもたちとメッセージを書き、当日はスタッフの方に飛ばしてもらいました。今年は私自身が現地で飛ばすことができました。

追悼会では、丹野さんが
「空はつながっています。メッセージはきっと届きます」
とおっしゃっていました。
澄み切った青空にハト風船が舞い上がりました。子どもたちが東日本大震災でお亡くなりになった方や自分の大切な方のために書いたメッセージを空に届けることができました。

後日、ハト風船の追悼行事の様子の動画や新聞記事を子どもたちとともに見て、当日の様子を話しました。子どもたちは自分たちのメッセージが書かれたハト風船が空に飛び立つ様子を見ながら、またさらに震災について、そして防災についての関心を高めたようです。さらに学習を進めていきたいと思っています。

次回は最終回。子どもたちと3月11日の新聞記事を読み、これまでの学習を振り返った活動をレポートします。

文・写真:菊池健一

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