2023.04.13
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福島から東日本大震災を学ぶ(6) 震災学習のまとめ(さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池 健一さん)

東日本大震災を取り上げた授業を、さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池健一さんが6回にわたって紹介します。菊池さんが実際に福島県の被災地を訪れ、復興する様子などを視察した経験から授業を組み立てました。最終回となる今回は、新聞記事をスクラップしてこれまでの震災学習を振り返りました。

東日本大震災の新聞記事を読む

児童と一緒に震災関連の記事を選ぶ

今年度は、福島県大熊町の小学生との交流や、被災地を取材した記者の授業などを取り入れながら震災学習を進めてきました。子どもたちは、身近な防災対策の調べ学習からスタートし、被災地の現状にまで視野を広げて学習を行うことができました。また、被災地である宮城県名取市閖上の伝承施設で行われる追悼式において、子どもたちのメッセージを書いたハト風船飛ばし、子どもたちと被災地をつなぐこともできました。

今回の学習もいよいよまとめに入ります。毎年最後の活動として、3月11日、あるいは12日の新聞で震災関係の記事をスクラップする活動を行っています。東日本大震災が起こった3月11日前後は新聞各紙で震災関連の記事が多く掲載されます。特に12日は前日に被災地各地で行われた追悼行事を取り上げた記事が多くなります。その中から子どもたちがこれまでの学習で感じたことなどをもとに記事を選んで読みます。今回も地域の販売店の協力により、児童全員に新聞を配ることができました。

新聞をスクラップする児童

新聞を手にした児童は、
「新聞によって、取り上げている記事が違うね」
「こっちの新聞は、交流した大熊町にある原発について大きく取り上げているよ」
「この新聞では、子どもをなくしたお母さんの記事が大きく載っているね」
「私は、命の大切さについて学んだので、この記事を読んでみようかな」
「海で写真に向かって手を合わせている男の人の写真が大きいね。この写真を撮った記者さんはどんなことを僕たちに伝えたいんだろう」
「私たちがメッセージを書いたハト風船が飛ばされるところの記事もあるよ」
と、感想を述べ合いながら記事を選んでいました。

これからできることを…

児童のワークシート

記事を読んだ感想を読むと、子どもたちが今回の学習を通して、震災について自分事として考えていることが分かりました。子どもたちの感想から…
「災害が起きた時にきちんと避難できるようにしておくことは大切だと思った」
「震災で亡くなった方のために毎年、会を開いていることは亡くなった人たちを忘れないために大切な行事だと思う」
「東日本大震災が起こってからもう12年になるけれど、まだ被災地で困っている人がたくさんいることに驚いた。早く暮らしを取り戻せるようになってほしい」
「(今でも行方不明の子どものことを探しているお母さんの記事を読んで)『骨でもいい、抱きしめたい』という題名の記事を読んで感動した。お母さんがこれだけ子どものことを考えていることにびっくりした。早く見つかってほしい」
「震災はいつ起こるか分からないことを知った。普段から震災が起こっても大丈夫なように備えておくようにしたいと思った」

このような子どもたちの感想や考えを読んで、今回の学習で被災地の方との交流や新聞や映像を活用しての学習で、被災地との心の距離が縮まったと感じます。学習はこれで終わってしまいますが、きっと子どもたちは折に触れて震災について考えるのではないかと考えています。4年生になると社会科で防災について学びます。また、5年生では国土について、日本の産業について学びます。また、理科では台風の学習などを通して災害についても触れます。6年生になると社会科の政治の学習で、町の防災対策について学ぶ機会もあります。理科では地学的な内容で地震の仕組みについても知ることになります。これらだけではなくいろんな場面で東日本大震災について繰り返し学ぶ機会があると思います。そこで、学びを深めていってもらいたいと感じます。

今後の震災学習の展望

今年度は、久しぶりに高学年の担当になりました。しかも、3年生の時に震災学習を一緒に行った子どもたちを受け持つことになりました。そこで、来年度はさらに取り組みを発展させていきます。

具体的には、これまで以上に被災地の方との連携を図り、子どもと被災地の心の距離を縮められるようにしたいと考えています。そこで、ICT機器などを活用して被災地の方のお話を聞く機会を設けるつもりです。また、震災について学ぶだけではなく、自分や家族のことを考える学習も行いたいと思っています。そこで、防災士の方をゲストに、具体的に命を守る方法について考えられたらと思っています。それらの学習の中で子どもたちが考えたことや提案したいことをアウトプットするチャンスも作っていきたいと思います。震災学習を超えて、年間を通して行う新聞学習。そこでは新聞社の方との連携を密に活動していきます。そのご縁も生かして、震災についても新聞から学んだり、新聞に考えを投書したりしていきます。

これから指導していく子どもたちは東日本大震災後に生まれた世代になります。大震災の経験はありませんが、今この時も次の震災の前だと考えています。子どもたちと震災について学び続けることが、東日本大震災を忘れずに常に命を守る適切な行動をとれるようにすることだと考えています。今年度も引き続き実践を続けていきます。

文・写真:菊池健一

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