2023.03.09
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福島から東日本大震災を学ぶ(2) 震災について知るために(さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池 健一さん)

東日本大震災を取り上げた授業を、さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池健一さんが6回にわたって紹介します。菊池さんが実際に福島県の被災地を訪れ、復興する様子などを視察した経験から授業を組み立てました。第2回では、新聞を教材に児童の関心を高めます。

教師の「新聞トーク」で震災を知る

新聞トークで取り上げた記事

東日本大震災から12年。毎年、震災を取り上げた授業づくりを行ってきました。児童と一緒に私自身も震災について、防災について、そして命の大切さについて学んできました。しかし、数年前から、授業の導入で少々違和感をもち始めました。これまでは、「みなさんは、東日本大震災の時にどこにかましたか?どんなことを考えましたか?」という問いからスタートしていたのですが、最近担当している児童は東日本大震災後に生まれた世代になります。彼らにとって、東日本大震災は教科書などに載っている遠い過去の出来事であり、自分事としてとらえづらい出来事なのでしょう。「どのように震災を自分事としてとらえさせるか」ということが、私の授業づくりの最大の課題かもしれないと考えるようになりました。

そこで、毎年3学期に震災を取り上げた授業実践を行っているのですが、2学期のうちから震災について知る活動を始めました。その一つが、教師の「新聞トーク」です。私は普段、NIE(教育に新聞を)の活動に取り組んでおり、毎朝の学活で学習などに関連した新聞記事を児童に紹介しています。その時間を利用して、東日本大震災について児童に知らせる活動を行いました。また、前回のレポートでも書いたように、被災地の視察も行っていますので、そこで撮影した写真なども紹介し、児童の関心を高めてきました。

今回の実践では、メインとなる授業で福島県の大熊町や双葉町を取り上げます。ここ最近になって大熊町や双葉町への帰還が始まったことや原発関連のニュースが報道されることが多くなったことなどにより、関係する新聞記事が多くあります。それらを児童に紹介しました。

児童は、
「福島県ではまだ避難をしている人がたくさんいるんだね」
「震災から12年たってようやく戻れるんだね」
「避難した人はどんな気持ちでこの12年を過ごしていたのだろう…」
と、疑問を述べていました。毎日話題を提供することで、児童の被災地への興味関心も高まってきました。   

震災に関する掲示

震災関係の掲示

今年度は被災地の中でも福島県の大熊町や双葉町を取り上げ、原発事故で避難を強いられた方の様子について学びます。そこで、福島県の大熊町や双葉町に関する掲示を行いました。まず、掲示したのは福島県の地図です。まだ3年生なので、児童の中には「福島」と言われても、自分の住んでいるさいたま市から見てどのあたりになるのかわからない子が多いです。そこで、地図を示すことによって学習で取り上げる福島県の浜通りの場所が分かりやすくなります。同時に児童が5年生の林間学校で宿泊する福島県の舘岩村も示すことでさらに自分たちと被災地との関連を意識できたようです。

掲示版には、福島県の原発や原発が立地する大熊町や双葉町などの写真も掲示しました。私が年末に視察をしてきた写真です。大熊町や双葉町で復興が進んでいる様子と、復興が進まずに建物が崩れたままの写真などを掲示しました。また、現在の福島第一原発の写真も掲示しました。写真は紙テープで地図と結び付けてあり、児童がどの場所であるのかを理解しやすくしました。写真を見ることで、現地の様子がよく分かるようでした。

その他、福島県の被災地の様子や原発の現在の様子などを取り上げた新聞記事を掲示しました。また、小学生新聞の震災当時の新聞記事も掲示しました。児童は新聞について「見出し」と「写真」で大まかに内容を把握できるようになっています。そこで、見出しや写真が分かりやすいものを選びました。

「福島県大熊町の子どもたちは、みんな避難をしなければならなかったんだ」
「福島第一原発の事故は本当に大きな事故だったんだね。見出しの大きさで分かるね」
「避難をした子どもたちはその後どこに行ったんだろう。そして今の子どもたちはどうしているんだろう」など、児童は掲示を見ながら話し合っていました。掲示を通して、今回の震災学習の土台ができました。

ゲストティーチャーの招聘

児童に示した被災地の写真

毎年、震災について学ぶ授業では、被災地を取材した新聞記者を講師に招聘し、児童に話をしていただいています。児童は東日本大震災を経験していないので、これまで新聞記事を通して、震災について学んできました。そこで、実際に記事を書いた記者から話を聞くことによって、さらに震災について自分事として感じられるようになると考えました。

今回の講師は、読売新聞社の高貝丈滋記者を招聘することにしました。高貝記者は長い間、福島県を中心に取材をされており、震災後には福島県の大熊町や双葉町に関する記事を多く書かれています。被災地の学校や子どもたちについてもたくさん取材をされているので、その経験を話していただくことにしました。毎回記者の方をお呼びするときには「新聞トーク」で記者の書いた記事を紹介したり、掲示板に記事を貼ったりして児童の関心を高めます。今回も記者の記事コーナーを作りました。児童の関心も高まり、いよいよ本年度の震災学習が本格的にスタートします。

文・写真:菊池健一

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