2018.06.20
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教科教育の研究を基盤とした1人1台タブレット端末を活用した公開授業(国語・算数) New Education Expo 2018 in 東京 現地ルポ vol.1

「New Education Expo 2018 in 東京」が6月7~9日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催され、7428名が来場した。新学習指導要領、高大接続改革、大学入学共通テストにプログラミング導入など、戦後最大の教育改革を迎える今、先行モデルとなる教育関係者160名が登壇し、75本のセミナーが開講。次世代の教育についてさまざまな提言が行われた。
今回のレポートでは、イベントの注目プログラムの一つ、筑波大学附属小学校によるタブレットPCを活用した公開授業の様子を取り上げる。最新ICT教材が授業にどのような効果をもたらすか、ライブで感じることができた。

最新ICTシステムが、一人ひとりの知見の共有と深化をスピーディに

教科教育の研究を基盤とした1人1台タブレット端末を活用した公開授業(国語・算数)

【国語】筑波大学附属小学校……青山 由紀 氏
【算数】筑波大学附属小学校……大野 桂 氏

【国語授業】

〈授業データ〉
国語授業
学年・教科:3年生 国語科
単元:「楽しむ」を見つけよう(全9時間)
教材:言葉で遊ぼう・こまを楽しむ(光村図書3上)
本時の目標(第6時):二つの段落を比べることで、[中]の段落が同じ述べ方で書かれていることを理解する。(分類・整理する観点を見つけることができる)。
指導者:青山 由紀 教諭
使用教材・教具:タブレット端末(1人1台)、電子黒板、学習者用デジタル教科書(光村図書出版)、授業支援システム(ActiveSchool/FCR)、デジタル小学新国語辞典(光村教育図書)

空き時間は、自主学習を促すツールに

授業は、使用するソフトの立ち上げからはじまった。また、使用するタッチペンに不具合がないか、青山先生が机間巡回してフォローする。

その間、準備が終わった子どもたちには、辞書ソフトで「急がば回れ」の意味を確かめさせていた。前方の電子黒板には、正しく引けたときの画面が拡大で映されている。辞書ソフトは、紙の辞書のようにタブレット上でページを捲ることもできれば、索引機能を使って一気に目的の50音のページに飛ばすこともできる。さらに調べる単語をタップすれば、拡大表示されて非常に見やすく、わかりやすい。

子どもたちはこれまでの授業で、すでにさまざまな機能について習得しており、ゲーム感覚でどんどん調べていた。快適なUIにより、自主学習を促すことができるのは、ICTの大きなメリットだ。

ICTを活用した授業に必要なのは、児童のICTリテラシーである。子どもたちの飲み込みは早いものの、自主的に触れる機会をつくることも意識すべきだろう。その点は、青山先生の指導者としての巧みさが伺える。

児童の画面を、いつでも確認可能

授業は、まず前回の振り返りからスタートした。扱う教材は「こまを楽しむ」。

第一段落に「どんなこまがあるのでしょう」「どんな楽しみ方ができるのでしょう」という2つの問いがあるが、各段落からそれに対する答えをそれぞれ抜き出したことをおさらいした。そのときに使用されたのが「学習者用デジタル教科書」である。「マイ黒板」機能を使って、デジタル教科書の該当部分を簡単に切り抜いたり、マーカーで自由に書き込んだりできる。デジタルのため、抜き出し作業はスピーディだ。さらに何度でも書き直し可能だ。

また、児童全員のタブレット上の画面は、教師の手元のタブレットで一覧表示してチェックすることもできる。教師がピックアップした児童の画面を、前方の電子黒板に映し出す様子は、さながらクイズ番組のようである。ICTを活用しない授業の場合、児童の手書きノートを机間巡回で見て、選んで、発表させる(板書させる)などの作業が必要だが、それが一瞬でできてしまうのが利点だ。児童のほうも、「いつも自分の画面は見られていて、もしかしたら選ばれるかもしれない」と常に授業に参加している感覚がある。「先生、私のを出して!」と、積極的に声を挙げる子どももたくさんいたのが印象的だった。

長い文章の板書も、電子黒板なら一瞬

最後の第8段落に、2つの答えのまとめがあることを気づかせたいというのが青山先生の意図だ。

各段落の答えを割り振ったところで、青山先生は隣の児童同士でのディスカッションを促した。児童たちは堰を切ったように自分の考えについて話し合いを始める。その間に、青山先生は第8段落をデジタル教科書から全面の電子黒板にコピー&ペーストする。約130文字ほどの板書も、ICTの力を借りれば一瞬だ。そして、まとめの部分に電子マーカーで線を引いてくれる児童を募る。我先にと挙手する子どもたち。発表することが誇らしげな姿は印象的だった。さらに、「もっと線を引くところが短くできるよ!」とどんどん自発的な意見が飛び出て、授業がヒートアップ。そのたびに児童を指名し、電子マーカーを重ねていき、絞り込んだ部分が濃い線になっていく。その様子から、視覚的にも議論が深まっていくのがわかる。最後に的確な箇所が特定できると、消しゴムツールで余分なマーカーを簡単に消去。この簡便さは、非常に魅力的と言えよう。

授業前にオンラインでノートを確認し、授業を組み立て

授業は、各段落の構成をさらに読み解いていく段階に移った。

ここで青山先生は、前回までの授業で各段落を3つのマーカーで色分けした児童の画面をピックアップして、前方の電子黒板で全員に共有した。画面には、子どもたちの考えの軌跡が残っている。それをノート回収せずに、いつでもオンラインで確認できる。そのため、子どもたちの気づきを生かした授業を、“事前に”組み立てられていたのだ。色分けした意味について、「どうして○○さんは、こんなふうに分けたのかな?」と子どもたち同士で考えさせるところは、青山先生の手腕といえよう。取り上げられた級友の気付きをもとに授業が進むため、クラスに一体感が生まれ、授業へのさらなるモチベーションにつながっているように見えた。

〈授業データ〉
算数授業
学年・教科:3年生 算数科
単元:「円」の概念を理解する教材:オリジナル教材「みんなで一斉に『輪投げ』をしよう」
本時の目標:円の中心や半径に着目させていくことによって、円の概念を理解させていく。
指導者:大野 桂 教諭
使用教材・教具:タブレット端末(1人1台)、電子黒板、スクールプレゼンターEX、授業支援システム(ActiveSchool/FCR)

自作した動く教材で、子どもの関心を一気に引き寄せる

大野先生の算数の授業で今回取り扱うのは「円」について。その概念を理解させるため、円の中心や半径に着目することを目的とした授業だった。導入部分で大野先生は輪投げをする子どもたちのアニメーションを前方の電子黒板に映し出した。これは大野先生の自作である。「飛んでいる輪がゆっくり」「あの絵は変!」など、子どもたちからは自由な意見が飛び交うが、それは食いついている証拠。子どもたちの興味を引きやすい動的なコンテンツを簡単に作成できるのも、ICT技術ならではと言える。

この輪投げの例を用いて導き出したいのは、「二人の子どもが公平に競い合うには、二人の間の等距離となる直線上に輪投げの軸を置けばいい」という結論である。大野先生は、二人の間にある軸を片方に寄った画面を映し出した。軸から遠いほうの子どものイラストは怒っている。「なんで怒っている?」と大野先生が聞くと、子どもたちからは「相手がずるいから!」「自分のほうが遠いから!」という声が一斉に上がる。「じゃあ公平にするには?」と大野先生。すると「3つ方法があるよ!」とたくさんの子どもが手を挙げる。子どもたちの答えは、「相手を軸から遠ざける」「自分が軸に近づく」、そして「軸を二人の中央にずらす」というものだった。大野先生は、「なるほど」と言い、まず、相手や子どもを動かす方法を画面上で試そうとする。しかし、「あれ?どうやら動かないよ」ととぼけて、両者の位置が固定されていることを条件として付け加える。このような方法で軸だけに注目させるのは、見事な誘導だと感心した。

授業のキーになる答えを容易にピックアップ

軸だけが動かせるとわかったところで、子どもたちには手元にあるタブレットPCで、自分が正しいと思う位置に軸を移動するように指示。このようなインタラクティブな教材を簡単に用意できるところも、ICTの大きな利点である。

すっかり授業にのめり込んでいる子どもたち。みんな率先して作業に取り掛かる。個人の作業の進捗は、大野先生が教師用のタブレットPCで確認する。そのなかから、いくつかの画面をピックアップして前方の電子黒板に表示する。9画面中8画面が、二人の直線上の等距離に軸を移動したものだった。しかし大野先生、1画面だけ、二人の直線上にはないが、等距離の位置に軸を移動した児童の答えを忍び込ませた。ここで大野先生、「なんだろう?これでもいいのかな?」とミスリード。そこに、あちこちからかぶせるように子どもたちの声が挙がる。「二人が公平になればいい。どんな場所のにあってもいいんじゃないの?」「距離が同じならいい!」。

大野先生は、論理的な証明を促すため、あえて一人を指名し、ホワイトボード上のマグネットを輪投げをする二人と軸に見立て、定規を使って説明させる。「二人の間が40cmだから、軸までの距離をそれぞれ20cmにしました」と説明する児童。きちんと理解していることを確かめた大野先生は、さらに畳み掛ける。「じゃあ、この2ヶ所が公平な軸の位置なんだね」。すると、また一斉に子どもたちが「細かくするとめちゃくちゃある!」と反論する。

そこで、数人の児童を指名し、公平になる軸の位置にマグネットを次々と置かせていく。指名を待つ子どもは後を絶たない。とぼけ役に徹する大野先生は「もうないでしょう?」と打ち切ろうとする。そこで再び教室中が紛糾。「ないわけがない!」「永遠にある!」。その様子を見た大野先生は、「わかった、じゃあそういう答えが出た理由を隣同士で確認してみて」と促した。大きな声で考えを話し合い、言語化し、理解を深める子どもたち。まさに今、子どもたちのなかで知のパラダイム・シフトが起こっている。教育者なら誰もが身震いするような瞬間だったのではないだろうか。

そして、発表。「当てられたら困る人は手を挙げて」と教室を見回す大野先生。大騒ぎしていた子どもたちは一瞬で静まり返った。みんなが自分を指名されるのを待っている。大野先生は無作為に一人を指名した。代表になった子どもは、ホワイトボードの前に立って指で指し示しながら「この直線に入れば、どこでもいい」と答えた。一人の異論もなかった。全員の理解が共有された瞬間だった。

ICTのインタラクティブ性を生かし、授業への集中を持続

授業は次のステップへと進む。大野先生は「タブレットの次の画面を出して」と促す。同じように二人の子どもと輪投げの軸。しかし、子どもたちがあることに気づく。「あれ?四角い枠でなにか隠れている!」。その枠を避けると、もう一人の子どもが現れた。ICTのインタラクティブ性を生かし、子どもの関心を引く資料作りのうまさに唸った。

今度は、二人の子どもの位置は固定で、軸と3人目の子どもだけが動かせる。再びタブレットPCで作業させ、いくつかの答えを前方電子黒板で共有。その結果、3人の場合、軸の位置は1カ所。3人目の子ども位置は2カ所しかないことを、子どもたち自身のディスカッションだけで導き出した。最後に授業のまとめとして、今回の授業のタイトルを子どもたちに考えさせるのが大野先生流。子どもたちがつけたのは「ぼうから同じきょり」。まさに、円の概念へとつながる、核心をついたタイトルである。子どもたちの学びの深さを実感し、授業は幕を閉じた。

ICTが生む、全員参加型の授業

2つの授業を通じて、ICTが使われた意義は、全員が同じ理解・体験を共有できることにあったように思う。国語では、「教科書の○行目の…」というような説明が必要なく、どこを指しているのかわからないというストレスがない。算数では、教師が意図した通りの制限をかけて(軸しか動かせない、など)、的確なワークができた。また、教師の側のタブレットPCで全員の作業した画面を確認し、授業を進めるキーとなる答えを簡便にピックアップし、情報共有できた。これによって全員参加型の授業が確かに実現されていると感じた。一人ひとりが行った思考や作業を、瞬時に共有できるICT。これらの公開授業から、ICTという技術が、授業の効率化と深化を促進していることを実感した。

取材・文:学びの場.com編集部/写真提供:New Education Expo実行委員会事務局

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