2018.07.11
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変わる外国語教育、指導のポイントとは?/4技能を学べる注目の外国語教材 New Education Expo 2018 in 東京 現地ルポ vol.5

「New Education Expo 2018 in 東京」が6月7日~9日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催された。新学習指導要領では小学校高学年で外国語科がスタートするなど、大きく変わろうとしている外国語教育。2018年度からは小・中学校で新学習指導要領への移行措置が始まっている。第5回目の現地ルポでは、そんな外国語教育についてのセミナーと、最新の外国語デジタル教材を揃えた展示ゾーンの模様をお届けする。

新学習指導要領で外国語教育はどう変わるべきか?

教科としての外国語教育 ~新学習指導要領のポイントと指導方法~

文部科学省初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室長……金城 太一 氏
文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官……直山 木綿子 氏

小・中・高一貫した外国語教育の強化のために

これまでの成果と課題を踏まえた外国語教育を

文部科学省初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室長 金城太一氏

文部科学省初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室長 金城 太一 氏

昭和の時代から「使える英語」を目指して議論が繰り返されてきた日本の外国語教育は、グローバル化の急速な進展に伴い、大きな転換期を迎えている。今後は、これまで以上に様々な職業、様々な場面で英語によるコミュニケーション能力が求められるようになると考えられることから、2020年度より全面実施される新学習指導要領では、小・中・高の各段階を通じて「聞く」「読む」「話す(やり取り・発表)」「書く」ことの4技能5領域(小学校中学年では2技能3領域)をよりバランスよく育成。大学入試でも4技能を評価することになった。この一連の改革の全体像やこれからの外国語教育で留意すべき点について、文部科学省初等中等教育局国際教育課の外国語教育推進室長である金城太一氏が解説してくれた。

出典:文部科学省作成 新学習指導要領対応 外国語教材’We Can!’(小学校高学年用)説明資料「外国語教育の抜本的強化のイメージ」

出典:文部科学省作成 新学習指導要領対応 外国語教材’We Can!’(小学校高学年用)説明資料「外国語教育の抜本的強化のイメージ」

小学校における大きな変化は、中学年に外国語活動、高学年に外国語科が導入されることだ。この背景には、2011年度から小学校高学年で必修化された外国語活動の成果と課題があるという。
「子どもが英語で『聞く』『話す』ことに慣れ親しみ、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や学習意欲も育まれているとの成果が出ています。その一方で、小学校で『読む』『書く』ことをもっと学習しておきたかったという中学生は少なくありません。また、外国語活動での音声中心の学びが、中学校英語での文字を扱う読み・書きの活動へとスムーズにつながっていないという課題もありました」(金城氏)

また、中学校の授業ではいまだ文法・語彙の知識に重点が置かれ、「話す」「書く」などの言語活動が不十分との指摘もある。この傾向は、現行の大学入試を意識した指導に偏りがちな高校段階では、より顕著だ。こうした4技能ごとの学習状況にみられるバラつきは、子どもの英語力にも反映されているという。
「文部科学省が全国の中学校3年生と高校3年生を対象に行った『英語教育改善のための英語力調査(2017年度)』では、中学生では『書く』ことの技能が最も高かったものの、無得点者も一定数おり、二極化している状況が継続。高校生では『話す』『書く』が全体的に低く、それぞれ4技能のバランスに課題が見られます。そして、読んだり聞いたりしたことを基に発表や対話をするなどの統合的な言語活動を行っている学校ほど、4技能すべての得点が高いという結果が出ています」(金城氏)

そこで、中学校では2021年度から授業は外国語で行うことが基本となり、対話や実際のコミュニケーションの場面を設定した言語活動を重視。高校では2022年度から4技能5領域を総合的に学び、発信力の向上を目指すとしている。
「大学入試では2020年度から民間検定試験を活用した4技能評価が始まります。また、高校入試でも4技能評価の導入や検討を行う自治体が出てきており、2019年度からは全国学力・学習状況調査でも中学校3年生を対象に4技能調査が導入されます」(金城氏)。

進む教材と指導体制の整備

ここまでの話で分かるように、新学習指導要領における外国語指導のポイントは、4技能を活用して実際のコミュニケーションを行う言語活動にある。それは、文部科学省が新学習指導要領の移行措置に向けて作成した外国語活動教材「Let's Try!(小学校中学年用)」、外国語科教材「We Can!(同高学年用)」にも反映されている。
「『Let's Try!』では『聞く』『話す』の言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地を育成。『We Can!』では『聞く』『話す』からスタートし、『読む』『書く』の言語活動に取りくみながら、代名詞(三人称)、動名詞、過去形などを含む基本的な表現に繰り返し触れられるように工夫されています。ぜひ中学校の先生方にもご覧いただき、小学校との接続に役立てていただければと思います」(金城氏)

これらの教材の児童用冊子、教師用指導書は各小学校に配布され、学習指導案例や年間指導計画例などと共にホームページでも公表。各教材に対応したデジタル教材の開発も行っている。このほか、YouTubeの公式チャンネルでは教員用の研修動画も配信中。今年度内には、小・中・高の外国語教育に関する情報を一元的に発信するポータルサイトの開設も予定されているという。

また、これらの教材を活用して充実した外国語教育を行うには、小学校教員の指導力向上が不可欠。金城氏は小学校における教員の養成や採用についても言及した。
「大学の教員養成課程では、外国語の指導法や専門的事項について学べる新たなカリキュラムを2019年度の入学生から導入。2023年度から新課程を修了した教員の採用が始まります。既存教員については、各地域で教員研修の講師役を担う英語教育推進リーダーを育てる研修を実施。自治体には英語の免許や資格などの専門性を考慮した採用選考を行うように働きかけています」(金城氏)
指導体制については、小学校教員の長時間勤務が問題視されていることを考え、英語指導力に優れた専科教員を配置する予算措置を実施。
「学級担任と専科教員、ALT(外国語指導助手)が協力して質の高い外国語教育を作り上げていってほしい」
としている。

「現在、外国語教育の実施状況は地域によってバラつきがありますが、すべての子どもが同質の教育を受けられるようにすることが私達の使命です。とはいえ、授業だけで4技能を確実に身につけることは簡単ではありません。先生方には4技能を総合的に育成するための授業改善に加えて、子どもが授業外でも主体的に英語を学びたくなるような動機付けにも努めていただければと思います」(金城氏)。

外国語活動・外国語科における目標と指導ポイント

小学校の外国語教育が目指す目標とは?

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 直山木綿子氏

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 直山 木綿子 氏

続いて登壇したのは、文部科学省初等中等教育局教育課程課の教科調査官である直山木綿子氏 。直山氏はまず、新学習指導要領に示されている小学校中学年の外国語活動、小学校高学年の外国語科、中学校の外国語科における「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」「書くこと」の5領域(小学校中学年は「聞くこと」「話すこと(やり取り・発表)」の3領域)別の目標をまとめた一覧を提示。学校段階による目標の違いや留意すべき点について説明した。

それぞれの目標の文末を見ると、小学校中学年の外国語活動は「~するようにする」、小学校高学年と中学校の外国語科は「~できるようにする」となっている。これが、英語に慣れ親しむことを目的とした外国語活動と、英語を教科として学ぶ外国語科との大きな違いだ。ただ例外として、小学校高学年の外国語科では「読む」の目標の一つが「意味が分かるようにする」、「書く」の目標は「書き写すことができるようにする」「例文を参考に~書くことができるようにする」となっている。

「中学年で音声によるコミュニケーションを十分にしてきても、初めての読み・書きはハードルが高いもの。そこで、これまでの外国語活動で子ども達が音声で十分に慣れ親しんだ語句や表現を見て書き写したり、例文を参考に文を書いたりすることを通して、まずは、英語の文を書くために必要なこと、つまり、単語は文字がまとまっているものという認識や、単語と単語の間にスペースを入れたり、語順があることについて気付き、理解を深めます。例文を参考に書くといっても、『I like dogs.』なら『dogs』のところを子どもが絵が添えられた語群から選んで『cats』などに替える程度。そのレベル感に留意をしてください」(直山氏)。

言語活動の指導ポイント

教員や教科書の指示通りに言葉を繰り返すのではなく、子ども自身が言葉を選び、自分の考えや気持ちを伝え合うこと。これは新学習指導要領が英語での言語活動で大切にしている点で、小学校中学年用の外国語活動教材「Let's Try!」と小学校高学年用の外国語科教材「We Can!」では、そうした言語活動が多く設定されているという。直山氏が「We Can!」の中から2つの例を紹介してくれた。

1つは、「We Can! 1」Unit 5“She can run fast. He can jump high.”の中のLet's Watch and Think。これは映像を見ながら英語でまとまりのある話を聞き、使われている語彙や表現の意味を推測したり、話の概要を捉えたり、聞き取った内容に関する質問に答えたりする言語活動。全8時間のUnit 5では5時間目に設定されている。

映像に登場する人物はジョン、クリスティーナ、サトシの3人。ジョンとクリスティーナが互いにできること、できないことをIとYouを使って尋ねたり答えたりする前半部分と、サトシがジョンとクリスティーナのいない場所で2人のできること、できないことをHeとSheを使って語る後半部分で構成されている。全体で一人称、二人称、三人称の使用場面を分かりやすく示しているため、映像は必ず前後半を通して見る必要がある。その上で、次のような活動を行ってほしいという。
「まず黒板をジョンとクリスティーナの2つに分け、『This is Mr.Kaneshiro. He can play soccer very well.』と言って、校内の子供がよく知っている校長先生や先生、例えば、金城先生の写真をジョンの方に貼る。次に、『This is Ms.Yamamoto. She can play soccer too.』と言って、山本先生の写真をクリスティーナの方に貼る。これを繰り返していくと、子どもは『男の人はhe、女の人はsheなんだな』と理解し始めたところで、岡先生の写真を見せながら、『This is Mr.Oka. She or he?』と聞き、子どもがHeと答えるのを確認します。これをほかの先生でも繰り返します。その後、『I can cook very well. Can you cook well?』というように、児童と指導者でIとyouを使ってやり取りをします。それにより、自分をI、目の前にいる相手をYou、自分でも相手でもないその場にいない人をheやsheで言い表すということを、しっかりと理解させることができるはずです」(直山氏)

もう一つは、教員が英語でまとまりのある話を語り聞かせ、子ども達が話の内容を捉えたり、ある話題についてやり取りしたりするSmall Talkという言語活動。既習の語句や表現を繰り返し使って定着を図ること、その場でのやり取りを通して英語ならではの見方・考え方を養うことが目的だ。例えば、過去形を使わせたい場合は以下のようになる。

教員 I ate cherry tomatoes this morning. It’s easy to eat. I don’t have to cook. I wash them and I can eat with my hands. I usually eat cherry tomatoes. And I drank soy milk.~
(ある程度まとまりのある話をしたら、子どもとやり取りする)
教員 What did you eat this morning?
子ども I ate bread.
教員 Oh, You ate bread. Only bread?
子ども And grapefruits.
(他の子どもを指名して2~3回繰り返す)

このSmall Talkを、小学校高学年では2時間に1回程度、ウォーミングアップではなくメインの言語活動の一つとして設定している。5年生では指導者が主に話して聞かせ、数名の児童と簡単なやり取りをすることが中心、6年生では話題を提供し、少しやり取りの例を示した後、児童同士でやり取りを行う。
「子ども同士でやり取りをさせると、必ずと言っていいほど『英語でどう表現すればよいのか分からない』という声が出てきます。そんな時には、先生が答えを教えるのではなく、子ども達に既習の言葉で表現するよう考えさせることが大事。例えば、『青汁って何て言ったらいいと思う?』と問いかければ、『Green Juiceはどう?』などと答えが返ってくるはずです」
と直山氏。分からないことをクリアできたら、相手を替えてもう一度やり取りをさせ、活動は終了となる。

「こうした指導のポイントは、文部科学省がホームページで公開している『小学校外国語活動・外国語研修ガイドブック』に掲載しています。新教材の指導書にあるQRコードにスマートフォンをかざせば、YouTubeの公式チャンネルで配信しているSmall Talkの音源を聞くこともできます。外国語教育の成功は、この移行措置期間にかかっていると言っても過言ではありません。すべての子どもが2020年度にスムーズに新学習指導要領に則った授業に入っていけるよう、文部科学省が作成した新教材や、ホームページ挙げている資料等を存分に活用いただくことを願っています」(直山氏)。

展示ゾーン

[外国語教材]大学入試改革、小学校の英語教科化に対応! 4技能をバランスよく学べる注目のデジタル教材

外国語教材コーナーには、新学習指導要領や新しい大学入試の実施に向け、「話す」「聞く」「書く」「読む」からなる英語4技能の育成をサポートするデジタル教材が所狭しと並べられていた。その中でも注目を集めていたのが、マルチメディア語学教育支援システム「PC@LL(ピーシーアットエルエル)」だ。

来場者でにぎわう外国語教材コーナー

来場者でにぎわう外国語教材コーナー

「PC@LL」は柔軟なシステム構成により、CALL教室だけでなく、PC教室や普通教室などでも遅延のないクリアな音声で効果的に外国語を学習することが可能。多彩な練習モードが選べる「LISTENING & SPEAKING」、動画を見ながら実践的なやり取りをする「SCREEN LESSON」、ドリル形式で学習内容の定着を図る「DRILL STUDY」、複数人で文字チャットを行う「CHAT」といったソフトレコーダーの機能を使って4技能をバランスよく学ぶことができるとして、大学や高校で利用されている。今回はそのソフトレコーダーに、定型に沿って論理的に英文作成を行う「ACADEMIC WRITING」と、聞き取った単語を文字入力して正確なリスニング力を養う「DICTATION」の2つの新機能を追加。大学入試の4技能評価導入に向けて、よりいっそう頼れるラインナップとなっている。

小学校高学年の外国語科に対応したデジタル教材では、「小学校英語SWITCH ON!」が存在感を放っていた。大阪府教育庁と株式会社mpi松香フォニックスが共同開発した小学校英語学習プログラムを基にしたもので、導入校は大阪府、東京都世田谷区、同千代田区、埼玉県戸田市など全国1200校に広がっている。

人気の理由の一つは、英語の教員免許を持たない教員でもスムーズに指導できる使いやすさだ。
「『小学校英語 SWITCH ON!』は、デジタル教材、授業指導案、文部科学省教材への対応を見据えた年間指導計画案、ワークシートがセットになったオールインワン教材。先生は指導案に沿って収録されている動画を順に再生するだけで、授業を進行することができます。先生の役割は子どもの学習をサポートするファシリテーターであり、英語を教えるわけではないので、英語指導が初めての先生でも安心です」
と担当者。新学習指導要領への移行措置期間である現在は、小学校高学年用の外国語教材「We Can!」を使いこなすのが難しい教員のために、この教材を併用する学校も少なくないという。

  • メニュー画面

    メニュー画面

  • Story画面

    Story画面

  • Alphabet画面

    Alphabet画面

  • Phonics画面

    Phonics画面

もう一つの大きな理由は、モジュール学習(短時間学習)で繰り返し英語に触れることで、楽しく効果的に4技能を身につけられるプログラムになっていること。週3回、1回10~15分の短時間で学べるように設計されているので、給食後や朝の活動などの帯時間を有効に活用できる。もちろん、45分授業に組み込んで使うことも可能だ。

「1回1回の活動の中にはフォニックス(英語圏で考案された英語の「音」を文字に結びつけるためのルール)が盛り込まれているので、耳から自然と正しい発音が身についていきます。子どもと一緒に英語に触れることを通して、先生の英語力を養うことができるのも大きなポイントです」(担当者)。

外国語教育の変化に対応し、外国語教材にも数々の変化が生まれている。子どもの英語力向上だけでなく、英語の指導に不慣れな教員の不安解消のためにも、これらの最新教材を活用してみてはいかがだろうか。

取材・文:吉田教子/写真提供:New Education Expo実行委員会事務局

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