2018.06.20
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フューチャークラスルーム(R)ライブ 私にもできる!ICTで授業改善のコツ New Education Expo 2018 in 東京 現地ルポ vol.2

6月7~9日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催された「New Education Expo 2018 in 東京」。第2回の現地ルポでは、最先端のICT環境を構築した「フューチャークラスルーム(R)」でのライブセミナーをリポートする。テーマは、「私にもできる!ICTで授業改善のコツ」。東北大学大学院情報科学研究科(堀田龍也研究室)と内田洋行教育総合研究所による共同研究の成果発表とともに、聴講者による体験授業が行われた。

教育の手立てとして、ICTを活用する具体例を提案

〈セミナー概要〉
私にもできる!ICTで授業改善のコツ
東北大学大学院情報科学研究科教授 堀田 龍也 氏

重視すべきは、“転換できる学び”であること

進行役の紹介に促されて現れたのは、今回の共同研究の中心人物の一人、東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授。研究成果をまとめたリーフレットのイラストと同じく、博士帽を被っての登場である。茶目っ気たっぷりの演出で和やかにセミナーはスタートした。

進行役から堀田氏への最初の質問は、「新学習指導要領で示されている『主体的・対話的で深い学び』とは何か」ということ。堀田氏は「子どもがその気になって取り組んでいる状態。人といろいろ対話をしながら、先生が教えるより学びが深くなればいい」と見解を示した。従来の学びとの違いは、先生がわかりやすく指導した上で、子どもたち同士で理解を深められるように“転換できる学び”にすることだという。

ここで進行役から「そのような学びに、ICTは有効か」との問いが。堀田氏は、「ここで役立たないと語ると、エキスポ的にどうかと…」とユーモアで会場に笑いを生みつつ、ICT活用による利点を挙げた。

堀田氏によると、一番役立つのは「対話的」であることだという。タブレットPCなどの端末を使えば、さまざまなリソースや先行研究などに触れ、自らの知識を更新していくことができる。「クラスメイトだけではなく、いろいろな情報に当たれる。そこはICTが便利」と堀田氏は言う。

また、主体的な学習は、授業という1時間の枠だけで終わらない。それらの学習行動が記録され、以前学習したこととつなげることもできる。「そういった積み重ねが、ICTによる深い学びへとつながるのではないか」と提言した。

学習過程に沿ったICT活用法をリーフレットで紹介

これらを踏まえ、共同研究の成果であるリーフレットが紹介された。これは、「課題把握」「課題追究」「課題解決」「振り返り」という学習過程に沿って、どのようにICTを活用すればいいかを具体的にまとめたもの。たとえば、課題解決のフェーズで「話し合いの内容を客観的に俯瞰させる」ためには、「デジタルノートや小型ホワイトボードを班活動で活用する」というように、教師の手立てに対応したICT活用を具体的に紹介。堀田氏は、「このリーフレットを教室の後ろに貼って活用するのもオススメです」と促した。

情報をスピーディーに共有!ICTを活用した授業を体感

セミナー後半では、聴講者が実際にICTを活用した授業を体験した。今回の課題は、「縄文時代と弥生時代、どちらに住みたいか」というもの。「課題把握」では、教育出版の社会科のデジタル教科書から取り込んだ各時代のイラストを、一人一台のタブレットPCで確認。すばやく課題を共有できた。

「課題追究」では、各時代の違い見つけ、電子マーカーで囲んでいく。デジタルなので何度でも書き直しや修正が利き、試行錯誤する作業には最適だ。

「課題解決」では、グループワークが実施された。互いのタブレットPCの画面を見せ合い、小型ホワイトボードで班の意見をまとめていく。同じように個人で作業したにも関わらず、異なる意見や指摘が出てくるおもしろさ。子どもたちが感じるであろう学びのワクワクを体験できた。

まとめ終わった小型ホワイトボードは撮影され、正面のプロジェクターにどんどん映し出されていく。グループでの知見が、一瞬にしてクラス全体に共有され、さらに広がるのを肌で感じられる。

「振り返り」では、これまで得た知見をもとに、どの時代に住みたいか、一人ひとりがデジタルノートにまとめた。それらは、再び正面のプロジェクターで共有。そこでの意見が、新たな気づきへとつながっていく。

ICTによる情報の集中と拡散は、体感してみると、想像以上にスピーディーでダイナミックだった。授業の効率化に、ICTが非常に有効であると改めて実感できた。

教師と子ども、双方でICTのキャリアアップが必要

最後に、教育でのICT活用について堀田氏が総括した。教師は、もともと持っている授業技術を生かす手立てとして、どのようにICTを取り入れていくかがポイントになる。そのためにもまずはICTスキルを磨く必要があると言及した。

一方、子どもたちにもICTスキルの向上が求められるという。たとえば、自らクラスメイトの情報を共有し、画像をキャプチャーしてレポートを作成できるようになれば、学びはもっと深化すると指摘。「そのような意味で、ICTを活用した教育の習熟には、教師も子どもも何年もかけてキャリアアップする必要がある」と締めくくった。教師と子どもたちが作り上げていく未来の教育。その挑戦は、始まったばかりだ。

取材・文:学びの場.com編集部/写真提供:New Education Expo実行委員会事務局

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