(写真は盆栽美術館で作成したスクラップ新聞の例です。)
NIEの魅力
10年近く前から、日本新聞協会のNIEアドバイザーとして活動をしています。NIEとは「教育に新聞を」と訳され、授業などにおいて新聞を資料として活用したり、新聞を作ったりする活動を行います。私自身も新聞を使うことで、児童が学習している内容が、どのように社会とかかわるのかを感じることができ、考える力もつけることができるので、積極的に新聞を活用してきました。
私の勤務校があるさいたま市では、市の教育委員会と埼玉県NIE推進協議会が協定を結び、様々な取り組みを行っています。そして、市立全小中高等学校特別支援学校で積極的にNIEに取り組んでいくことになっています。
NIEを広めることの難しさ
しかしながら、私自身これまでの学校でも、現在の勤務校でもNIEを広めていこうと活動していますが思うようにうまくいかないことが多いと感じます。その理由として、NIEに決まった指導法があるわけではなく活用の仕方は先生にゆだねられているため、実際にどのように新聞を使えばよいか分かりにくいことが挙げられます。また、先生方が新聞に親しんでいないことも挙げられると思います。若い先生に聞いてみると、新聞に親しんでいる方はごく少数です。
さいたま市の研修会でNIE担当者に新聞の活用について説明する機会があったのですが、実際に参加されたのは教務担当など実際にNIEを進めている担当の方ではなく、悉皆の研修だからということで予定のない教員が参加しているという感じでした。
NIEを広めるために
NIEアドバイザーとして、新聞の活用を広めていくために、これまでと同様に勤務校内でのNIEを進めていくことはこれまで以上に行っていきますが、違う視点も持ちたいと考えています。それは、学校とは違う場所でもNIEを広める活動を行うことです。幸い、今年度はいろんなチャンスをいただくことができました。
一つ目は、朝日小学生新聞での作文指導です。投稿された作文の指導者として、毎週送られてくる作文にコメントをしています。その題材として、新聞を活用していただくことで、記事を読んだ児童や保護者、そして先生方に新聞活用の大切さを理解していただけるのではないかと考えています。
二つ目は、市内のイベントでNIEを広める活動です。さいたま市は盆栽でも有名で、市内に「大宮盆栽美術館」があります。盆栽美術館は夏休みに子ども向けのワークショップを行っており、その中の1講座で新聞を活用して盆栽について知るという活動を取り入れていただきました。ワークショップの講師を私が務め、参加している児童や保護者に新聞を活用する良さを説明することができました。
最後に、大学での生涯学習講座です。十文字女子大学では毎年近隣の小中学生を対象に、公開講座を行っています。その講座の1つにNIEを取り入れていただき、私が児童に新聞スクラップを指導する予定です。
このように、今後は学校の外にも出てNIEを広める活動を行っていきたいと考えています。
これからは保護者も一緒に
NIEを広める活動をしていて感じることは、保護者の方が新聞の有用性を感じているということです。学校で担当するクラスの保護者の方に話す際にも、イベントに参加された児童の保護者に話す際も、保護者の方は真剣に話を聞いてくださいます。
これから、学校教育では新しい教育課程が実施され、ますます教員が忙しくなってくる面もありそうです。その中で、NIEの振興が難しくなることも考えられます。もちろん学校教育の中でNIEをさらに発展させる活動が一番のメインですが、これからは学校の外にも積極的に出て、NIEを広めていけたらと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
同じテーマの執筆者
-
兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
-
京都教育大学附属桃山小学校 教諭
-
大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
-
戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表
-
小平市立小平第五中学校 主幹教諭
-
西宮市教育委員会 勤務
-
明石市立高丘西小学校 教諭
-
木更津市立鎌足小学校
-
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
-
愛知県公立中学校勤務
-
大阪大谷大学 教育学部 教授
-
神奈川県公立小学校勤務
-
寝屋川市立小学校
-
明石市立鳥羽小学校 教諭
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事

「教育エッセイ」の最新記事
