2015.12.25
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

『運動会はみんなのもの』

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

  18期のつれづれ日誌では、これまでの私の教師生活で大きな影響を与えられた言葉について紹介をしています。今回は私が最初に勤めた学校で、体育主任という仕事をさせていただいたときに、先輩の先生からかけていただいた言葉について紹介したいと思います。

 

 教員になって3年目、私は学校で体育主任という役割を与えられました。体育主任は学校における体育指導の計画や指導法の研修などを行うことのほか、対外的な体育的行事に多く関わる仕事をします。そして、運動会やマラソン大会、水泳指導など全校に関わることが多く、各教科主任の中でも仕事が多い役割になります。

 

 当時、私は20代でしたが、同じぐらいの年齢の同僚がほとんどいなかったので、先輩の先生にあまり相談をすることができずに仕事を進める毎日でした。しかし、なかなか仕事がうまくいかないことも多く、お叱りを受けることもしばしばでした。また、若かった私は仕事量の多さに、「なぜ、自分だけこんなに仕事をしなければいけないのだろう」などと考えていたりもしました。

 

 その年の運動会の準備がスタートして、先生たちに役割を分担したところ、先生たちから、

「この係は自分にはできない。」

「この係は引き受けるけど、責任者はやらないよ。」

というようなことを次々に言われ、誰も役割を担ってもらえない仕事は私がやらなければならなくなってしまいました。そして、いつの間にか、私は自分を見失ってしまい、先生方に対して良くない感情を抱くようになってしまいました。私自身若かったので、「誰もやらないなら自分がやってやる」という気持ちがありました。

 

 そして、運動会前日の準備の日、職員全員で仕事を進めましたが、決められた時間ですべての仕事が終わらずに、勤務時間が終了してしまいました。私はその後、一人で校庭に残り、準備の作業を進めていました。そこへ、お世話になっていた先輩の先生が、「菊池さん、みんなに声をかけて手伝ってもらったら。」と言ってくださいました。悔しさがあった私は「大丈夫ですから。」と答えました。すると、先生から、

 

「菊池さん、運動会はみんなのものなんだよ!」

 

という言葉をいただきました。この言葉をかけられたときに、なんだか、脳天を何かで殴られたような気持がしました。自分はこれまで、先生方が自分に協力してくれないと思って一人で自分の殻に閉じこもっていたけれど、自分の方が先生たちに心を開いてなかったのではないか。そして、みんなで運動会を作ろうというメッセージを先生方に投げかけていなかったのではないかということに気がつきました。それから、数年体育主任の仕事を続けましたが、できるだけ先生たちに協力していただけるように工夫をするようになりました。

 

 今の私は体育主任の役は降りましたが、今いただいている仕事に関しても当時の反省を生かして仕事をしていきたいと考えています。

 

「運動会は、そして学校はみんなのもの」

 

それを忘れずに、これからもがんばりたいと思います。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop