愉しい授業を創る 「遊びの中に学びを創る」(後編)
いよいよ最終回です。「愉しい授業を創る」シリーズも20編を超えました。「よく書くことあるねえ」と家族に言われました。そりゃあ、目の前に子どもがいて、授業があれば、書きたいことが自ずと生まれてきます。
さて、今回は遊びの中に学びを創る、プレイフルラーニングの授業の後編です。どんな子どもの姿が見られたか、つれづれにつづっていきます。
浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授 川島 隆
遊びから算数的思考へ。「時間どりじゃんけん」の授業が始まる
「時間どりじゃんけん」の授業は、その名のとおり、じゃんけんをしてブロック(時間)を取り合う遊びをする1時間目と、獲得したブロックがどれだけになるのかをグループやクラスで考え合う2時間目の構成で行いました。
さて、いよいよ、待ちに待ったじゃんけんの始まりです。4種類のブロックを15個、時間にして4時間分を手にした子どもたちからは、「早くじゃんけんをしたい!」という声が聞こえてきそうです。
「準備はいいですね。それでは、始めましょう」
一斉に、子どもたちが動き出します。今回は、この後の活動から、印象に残る3つの場面に絞って紹介していきます。
場面1:子どもの「困り感」から自発的な学びを創る
始まりましたが、一体どれくらいの時間がかかるものか、と時間を気にかけていました。私自身が初めての経験ですから、活動の確かな見通しがありません。一方で、子どもたちが満足するところまで遊ばせてあげたいとも考えていました。
開始後5分を過ぎる頃、一人の女の子が、私のところにやってきました。そして、「先生、30分(赤色のブロック)がなくなってしまって、あげることができないんだけど、どうすればいいですか?」と尋ねました。
「困ったねえ」と言いながらも、心の中では、「待ってました」と思いました。「じゃんけんの相手に渡さなくてはならないブロックが手元にないときに、どうすればよいか」という困り感を抱いたときに、どう解決するかが、まさに、大きな「学びの場」になるからです。
「困り感」=「学びの場面」です。
私は、手元に赤いブロックがなければ、30分を作ればいいことに気付いてほしいと思いました。しかし、いざその場になると、私には子どもに考えさせる余裕もなく、
「赤色がなくても、他の色のブロックで、30分を作ればいいんじゃないかな」
「例えば、青色(20分)1枚と緑色(10分)1枚なら……」
そんなふうに言ってしまいました。
その子は、「そうか。赤色じゃなくてもいいんだ」と言うと、友達の輪の中に戻っていきました。事後協議の中で、授業を参観していた担任の先生が、その子どもが同じ困り感を持っていた他の友達に、「こうするといいよ」と言いながら、広げていたことを報告してくれました。
私は、うまく学びのチャンスを生かせなかったけれど、子ども同士のコミュニケーション(情報共有)のよさを実感するという機会にはなりました。でも、やはり授業者としては、子ども自身の困り感から学びを創っていくには、もっとよい支援の手立てがあったろうに、と反省せずにはいられませんでした。
場面2:子どもの解決活動をどう組織するか

どれだけの時間になるのかを数える子どもたち
じゃんけんが始まって10分もたたないころ、
「先生、もう皆とジャンケンしちゃいました」。そんな声も聞かれるようになりました。そこで、「終わりま~す」と、私から遊びの終わりを告げました。
すると、子どもたちは、足早に席に戻ります。「自分のブロックが、どれだけあるのか確かめたい!」という思いが、彼らを動かしているのでしょう。
ビニール袋に入ったブロックを机上に出すと、早速、並べ始めます。ブロックを色別に分類する子どももいれば、ブロックを組み合わせて六角形を作り始める子どももいます。
その場面も、実は貴重な学びの場面でした。
自分の獲得したブロックは、何時間になるのか、増えたのか、減ったのか。まさに自分事にして、時間を求め始めたのでした。
例えば、緑のカード(10分)を並べながら、「10分、20分、30分、……」と数えていきます。
しかし、ここで私は、その行動を遮るように、「じゃあ、各グループでどれだけの時間になったか、求めてみましょう」と、投げ掛けてしまいました。
45分という時間を気にするあまりの発言でもあり、「ルール」にあるグループの時間を答えるということに縛られていたための発言でもありました。
「しまった」と、すぐに思いましたが、出た言葉は戻すことはできません。
子どもたちが、それぞれ獲得したブロックを並べる・数えるのは、必然の活動でした。それを遮るようなことはしてはいけないと、今なら、簡単に判断できます。もっと子どもの思いに委ねること、子どもを信じることをしなくてはいけなかったと授業後、深く反省しました。
授業では、注意や指示は、最小限に留めること。そして、どのように解決活動を組織し、展開していくかを十分に練っておくこと。いずれも当たり前のことでした。
場面3:個々の学びをどう丁寧に見取るか

色別に分類し色別に六角形を並べる(左)、六角形を積み上げる(右)
子どもたちは、どれだけのブロックが集まったのか、一つのかごに入れて、解決活動に入りました。しかし、1時間目も終わりの時間が近づいていました。
「みんな、次の時間は、どうする?」と、問い掛けながら、2時間目のめあてをたて、方向性を共有しておこうと考えました。
すると、子どもたちから出されたのは、「どうしたら、分かりやすく時間を求めることができるか」でした。
2時間目のめあてを板書して、1時間目を終えました。
10分の休み時間。休み時間なのに、ブロックを囲んでいるグループがいくつか見られます。2時間目が始まり、グループごとに時間を求めます。子どもたちは、私が予想していたよりも早く、獲得した時間を整理していきました。
色別に分類しながら六角形を作って並べているグループもあれば(図02左)。
六角形を作り積み上げていくグループもありました。しかも、下から、黄色(60分)、赤色(30分)、青色(20分)、緑色(10分)という順です(画像右)。
子どもたちは、よく考えているものだと思いました。私は写真を大型モニターに映し、それぞれの子どもたちに求め方を紹介してもらいました。
グループで協働的に問題解決をしていった結果でした。
しかし、それぞれのグループでどのような解決の過程があったのでしょうか。個々の子どもは、どのように考えたのでしょうか。この結果だけでは、見えてきません。
結果はうまくまとまったように見えるのですが、やはり大事なのは一人一人の学びです。
グループによる協働的な解決は意味あることですが、グループ活動では傍観者になる子どもをつくってしまうこともあります。
したがって、あくまで一人一人がどのように考えたのかを見取る必要がありますし、どの子どもも学びの主人公として、自分自身の学びを創り出していけるような仕掛けをしていくことが大切ではないかと思います。
皆さんだったら、どんな仕掛けを考えますか?
子どもの「もっとやりたい!」を引き出す教師の責務
授業の終わりに、子どもたちに「振り返り」を書いてもらいました。その一部を紹介し、今編の「むすび」とします。
○ 1時間にするやり方は、色別に分けて、
10分が6個で1時間、20分が3個で1時間、30分が2個で1時間と、いろいろなやり方がいっぱいある。
○ 最初は負けてばかりだったけど、だんだん勝てるようになった。相手に勝って30分をもらおうとしたけど、なかったから20分と10分を合わせて30分にした。そのことを初めて知りました。
○ 1時間ずつ積み上げて、段数を数えたら、18ありました。余ったのは10分が2個。だから、18時間20分になりました。
○ 私は1時間ごと積み重ねるんじゃなくて、計算するのかなあと思いました。理由は、積み重ねると倒れて怪我をしちゃったら痛いからです。
○ 「時間取りじゃんけん」は、勝っても負けても楽しかったです。学校全体やクラスの子ともやってみたいです。次は時間ではなくて、水のかさでもやってみたいです。
授業後、校長先生が「2時間がもう終わっちゃうんだ、もっとやりたいのに……と、子どもが言っていましたよ」と話してくれました。子どもたちにとって、愉しい授業であったなら、授業者としてこんなにうれしいことはありません。
私こそ、もっともっと授業をやってみたい!そう思いました。そして、そんな授業を創ることこそ、教師の最大の責務であると、あらためて感じた2時間でした。
最後までおつきあいくださり、本当にありがとうございました。教育つれづれ日誌への連載も、回を重ねて77回目となりました。足掛け6年、執筆をさせていただきました。今、読み返しますと、不出来なところもありましたが、それでも「書くこと」が、私の支えにもなってきました。
今後は連載から離れますが、本来の「徒然なるままに」書くことを愉しんでまいりたいと思います。お読みくださいました皆様に、あらためて深謝申し上げます。ありがとうございました。

川島 隆(かわしま たかし)
浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授
2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。
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