「常識」を疑うことで、授業が面白くなる:鈴木秀樹『「非常識」な授業づくり 悩んだ時に立ち返りたい40の疑問』を読んで
2025年3月に発売された本です。なかなか開くタイミングがなかったのですが、やっと読めました。
1問1答形式なので、気負わずサクサク読めましたが、読後には、ずしんと重みが残ります。
授業づくりに悩めるみなさん、読んでみてはいかがでしょうか?
西宮市立総合教育センター 指導主事 羽渕 弘毅
はじめに:この本との出会い
「今の授業、本当にこれでいいんだろうか」。
授業づくりや若手教員の支援に携わる中で、そんな言葉を耳にします。自分自身の胸にも刺さる問いです。そんな折に出会ったのが、本書『「非常識」な授業づくり』。
タイトルの“非常識”という言葉に誘われて、自分なりに「あーでもない、こーでもない」とスマートフォンにメモがたくさんできました。
読み進めるほどに、本書が投げかけるのは“奇をてらう非常識”ではなく、“当たり前”を疑うための視座であるとわかってきます。
現場の“あるある”に、真っ向から応える本
本書は、現場教師が抱えがちな40の疑問に対し、1問1答形式でズバリと答えていく構成です。「学習規律はなぜ必要なのか?」「生成AIなんて使わせないは、どうか」といった、教員なら誰もが一度は悩むテーマがズラリと並びます。
一つひとつの疑問に対して、鈴木氏の答えはどれも率直かつ本質的。単なるノウハウではなく、“授業とは何か”という根っこの部分を揺さぶられます。
ページをめくるたびに、「あ、これ、職員室でも話題になったな」と思えるような実践的かつ現場感のある問いばかりで、共感と刺激の両方を得られます。
「問い返す力」が授業観を耕す
とりわけ印象に残ったのは、「学校研究のテーマは説明文であるべき。ポエムはいらない」という指摘です。美しい言葉を並べれば、良い研究ができるわけではありません。
「誰もがパッとわかる、簡単で明快な言葉で言い切りましょう。学校研究はそこをスタートにすべきです。(p.121)」
本書は、「前例踏襲主義でいいのだろうか」「これまでの常識に囚われていいのだろうか」と、自分に問い返す契機を与えてくれます。常識と思っていた実践を、意図や願いという“芯”から問い直すことの大切さに気づきました。
この「問い返す力」こそが、授業づくりを他人事から自分事へと転換させるカギになるのだと感じました。
「正しさ」より「らしさ」を育む授業へ
40の疑問には常識と非常識が示されていますが、その一つひとつが「こうすべき」と押しつけてくるわけではありません。
むしろ、「自分ならどうするか?」と読者に問いを返してきます。
正解探しではなく、自分の「授業観」や「子ども観」を耕すこと。それこそが、非常識な授業づくりの核心なのだと思います。
教師にとって、思考を止めないこと、問いを持ち続けることが、実は最大のプロフェッショナリズムなのかもしれません。
おわりに:若手にもベテランにも勧めたい一冊
授業に迷いが生じたとき、ふと立ち返りたくなるような問いと向き合える一冊です。
若手の教師には“拠りどころ”として、ベテランには“問い直す”視点として、本書はそれぞれに異なる価値を届けてくれるでしょう。
「非常識」とは、単に奇抜な手法ではありません。
自分の中の「常識」に立ち止まり、揺さぶり、考え続けること。授業づくりに迷うすべての教師に、本書をそっと手渡したい――そんな気持ちにさせられる一冊でした。
自分の投稿を疑う…!
連載を続けさせていただいていますが、ふと「そういえば、AIを全然使っていないな」と思い立ちました。
そこで今回は、記事を執筆した後に、ChatGPTに校正をお願いしてみました。
Special thanks:ChatGPT
言葉の選び方や構成の見直しに、ひと味違う視点を加えてくれました。
これも非常識…?

羽渕 弘毅(はぶち こうき)
西宮市立総合教育センター 指導主事
専門は英語教育学、学習評価、ICT活用。高等学校や小学校での勤務経験を経て、現職。これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科博士課程前期)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。自称、教育界きってのオリックスファン。
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