ドキドキの1年生とのアクティビティ「網の目のように関係を作るコツ」(NO.2)
怒涛のような4月と5月が過ぎ去りました。前回お伝えしたように、1年生にとって、新しい場や人に慣れるための最初の数ヶ月は正念場だと思います。否、保護者にも担任にも正念場なのだと感じます。
ある保護者から、「1年生を登校させるのって、こんなに大変だとは思いませんでした」と言われてしまいました。それは、日々の持ち物を確認するのに、苦労したという意味だったようですが、きっと、保護者と離れるのが嫌でぐずるのを、なだめるようなこともあったのでしょう。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
さて、このような中でも、子どもたちはお互いの名前を覚えつつあり、関係も少しずつ深まってきているようです。そんな様子を見ていると、子ども同士の関係を作ることは、とても大切なのだと改めて考えさせられます。
今回は、教師と子どもの関係だけではなく、子ども同士の関係を育て、クラスの中に網の目のような人間関係を作る手法についてお伝えしていこうと思います。
① 誰かと関わったら、サインする
人と関わらせるために初めて行ったアクティビティは、名前を伝えたらサインをするというものでした。
まず、隣の席の子ども同士がじゃんけんをします。勝った者から、「○○(氏名)です。よろしくお願いします」と伝えます。負けた者も同様に返します。
その後、お互いのカードを交換して、相手のカードに好きなマークを描いてあげます。これが基本的な一連の流れです。
それができたら、歩き回ってもいいので、相手を探して挨拶をし、同様にサインを交換します。飽きない程度の時間を使って、自由に行動させます。
どんなアクティビティであっても、最初にボランティアの子どもと担任が手本を見せ、隣席の子ども同士で練習するのが鉄則です。手本を見て覚える、見知った友達とやって練習してみる、関係を広げるという手順です。
私は、サインというのは、荒畑であるなら「あ」とかハートや星などのマークを描くものとばかり思っていました。ところが、色鉛筆で丁寧に絵を描いてプレゼントするという時間のかかる凝った活動をしていたので、とても驚きました。それが彼らのやり方なのだろうと見守っています。
② 音読をしたら、サインする
次に取り組んだのは、音読を通したサイン集めです。国語のノートに簡単な表を作って貼ってやり、そこにサインを描いていくようにしました。サインが20個集まったら1枚の表が終わるので、次のページに新しいものを貼っていくようにします。
①と同様に、まずは隣席の友達とじゃんけんをします。勝った者から国語の教科書の中の、指定された短い文章を読みます。
次に負けた者も読みます。
ノートを交換して、相手のカードにサインをします。
隣席の友達との活動が終わったら、おおむね5分間くらいは、他の相手を探して同様の活動をします。時間は子どもたちの様子を見て決めますが、事前に「あと一人で終わりね」と活動の終わりを知らせるようにすると、子どもたちも見通しをもった活動ができるようになります。
③ 相手が何かをしたら、褒める
上記のような活動を数回した後のある日、子どもの中から不満の声が上がりました。「○○さんは、音読しても褒めてくれません」。私は、自分が子どもの音読を聞いたときには、褒めてからサインをしていましたが、子ども同士でやるときに「褒めてね」とは言っていませんでした。なるほど、褒められた方が気分が良いに違いないと、改めて考えさせられました。
「上手だね」とか、「いいね」と言うのが恥ずかしい場合には、「ブラボー」とか「ワンダーフル」と言えばいいと確認をして活動を進めました。そのおかげで、ますます仲良しになってきているようです。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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