より良い学級づくりのために担任が最も大切にしたいこと
最近、より良い学級づくりを目指すために最も大切なことに気づきました。
人は思いや気持ちが何よりの原動力になるのだと感じます。
当たり前のことを話しているかもしれませんが、誰も語ってきていないことかもしれません。
でも、改めて大切なことだなと思いました。
沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭 石川 雄介
学級づくりに一番大切なことは…
より良い学級づくりを行うためには環境づくりや子どもとの信頼関係など、数えきれないほどさまざまな要素があります。これまで私も学級づくりについていくつか語ってきました。もちろん、今でも自分の学級、学年を良くするためには…と考えながら、日々の業務に精を出しています。
そして、最近気づいたことがありました。学級づくりに一番効果があるもの。いや、学級づくりの基盤になるものとは何か。これまでも感じていたけれど、ここまで強く感じたことがなかったため、自分で自分に気づかせることになりました。その気づきを伝えなければと思い、授業を止めて語り始めてしまいました。その場面が想像しやすいように小説風に書かせていただきます。
ある日のお話
私の受け持つ6年生は1年の3大イベントの一つの運動会を終え、修学旅行、学習発表会という二つのイベントを残して、卒業に向かって加速している。
「もう少しで小学校生活も終わり、卒業に向かってものすごいスピードで時間が過ぎていきます。この最後の時間をともに過ごしているこの学級を大切にしてほしいです。みなさんは自分の学級が好きですか?」
私は授業が始まると投げかけた。
「今までで一番好きなクラス」
「自分は好きだなー」
恥ずかしがらずに素直に言葉を返してくれた。しかし、普段の様子からこの子たちにとって居心地の良い学級であり、学級を好きでいることを私は知っていた。
「好きでいてくれてありがとう。では、この学級を愛していますか?」
私が問うと、子どもたちは悩み始めた。まず、「好き」と「愛する」という言葉の違いを探しているようだ。
「LikeとLoveの違い?」
どこかのドラマの台本のように首を傾げながらつぶやく。それを見て、伝わるよう言葉を選びながら私は続ける。
「好き=Likeっていうのは、特に考えもなく自然に好んで受け入れるものです。好きな食べ物、好きな色って頭で考えて好きでいるわけではないよね」
納得の「あ~」をいただく。
「『愛する=Love』っていうのは、考えて感じて触れて、さらに一緒に時間を過ごしたり、同じ感情を持ったりして、そこで初めて『あっ、自分は愛しているんだな』と気づいて感じるものです。つまり、愛する理由がさまざまな方面からあり、それに気づけたときに好きが愛するに変わります」
「もう一度、聞きます。あなたは学級を愛していますか?」
子どもたちは遠い方を見たり、私の目を見たりしながら感嘆の声を漏らした。
「あ~、じゃあ自分は愛しているかも」
「自分はまだ足りないかも」
続けて私は語りかける。
「先生は皆さんに何を教える大人だった?」
「愛を教える大人でしょ」
と、子どもたちは即答する。
「ちゃんと伝わっててくれてありがとう。最近、みなさんのために仕事をしている時に深く気づいてしまったことがありました。それは『みなさんのことを深く愛している』ことです。それと同時に、『あぁ。私は子どもに愛することを教えるために教師をしているのかもしれない』という考え方です。
友達や学級、物や教室の空気に対して愛情を持てるように教えていきたいと思いました。愛情があるから優しくできるし、時折厳しくできると思います。残り少ないこの学級での時間をみんなで愛し、卒業して大人になっても愛し続けられる仲間になっていきませんか?」
なかなか長い語りだったが、真剣な表情で話を聞いてくれた。
子どもとは正直なもので、言われた数分は先生の話した内容をしっかりと意識するが、徐々に効力は薄れ、1時間後にはなかったものにされる。しかし、それでも時折見られる学級を愛そうとする姿を私は見逃さない。
教師は愛を伝える、愛することを教える仕事
先述したことと同じことを言いますが、より良い学級づくりを目指すためにはさまざまな要素があります。いろいろな手段や理論が存在しています。そのすべてにおいて、一番大切なのは「担任が学級を愛し続けること」だと思います。
まず、愛し続けることが物語の始まりだと思います。もっとはっきり言うと、学級に出会った瞬間に担任としてこの学級を、この子たちを愛そうと思えるかどうかだと思います。
きっとどの先生も自分の学級を愛していることと思います。しかし、大切なのは「どこまで深く愛し続けられるのか」だと思います。
より良い学級を目指すために、担任は相当な努力を強いられます(もしかしたらうまくこなしている先生もいるかも)。私は、子どもたちの気持ちの理解や効果的な掲示物、楽しくなるような環境づくりにものすごい努力をしています。
「あの控えめな子が笑うためにはどのような取り組みをしたらいいだろうか」
「互いを知り、大切に思える授業にするためにはどのような活動を入れたらいいだろうか」
など、本当に毎日考えることがありすぎて大変です。
しかし、ありがたいことにそれが良い方向に結び、子どもたちに好かれる学級ができていると思います。その努力の根底には私が学級を愛し続けていることがあります。
また、担任の愛そうとする姿は伝染します。私は「このクラス愛してるなー」「そういう所が好きよ」など、恥ずかしがらずに素直な気持ちをたくさん投げかけています。このような言葉は学級の雰囲気を必ず良くしてくれます。そして、担任のその姿は愛することの素晴らしさを伝えていると思います。
もちろん毎回うまくいくわけではありません。期待を裏切られたり、嫌味を言われたりしたことも、たびたびあります。本当に嫌になることもあります。
しかし、それは愛し続けたが故のマイナスパンチです。プラスがあれば当然マイナスもあります。それを受け止めるほどの愛情を持ち続けられるかが鍵だと思います。そんなとき、私は時間をかけながら再度愛し続けられる瞬間を探しています。
より良い学級を目指すための根底は「愛情」です。しかし、愛情があればなんでもできるという夢物語を語りたいわけではありません。
まずは、「この学級を、この子どもたちを愛し続けたい」という思いを抱いてから学級づくりを行うと、絶対あなたの理想の学級に繋がっていきます。これまで以上の愛情を抱いてみてはどうでしょうか。
何卒

石川 雄介(いしかわ ゆうすけ)
沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭
沖縄県の小学校教員として10年以上、子どもも担任も楽しむ学級づくりや授業づくりを研究しています。
私のモットーは「合いのある学級づくり」で、特に『思い合い、支え合い、学び合い』に重きを置いています。
また、授業や生活の中で他者尊重の心を育む仕掛けや子どもの興味を惹くアイディアを考えるのが大好きです。
効果的な掲示物の作成や子どもも担任も楽しめるアイディアなど、多種多様な教育場面について伝えていきたいと思います。
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