2025.09.14
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NIE全国大会・神戸大会に参加して

毎年、NIE(教育に新聞を、Newspaper in Education)の全国大会が夏に開催されます。
今年は神戸で開かれました。あの阪神淡路大震災からちょうど30年の節目を迎えます。
今回の大会テーマは「情報を読み解きいのちを守るNIE」。
やはり、未曽有の大震災を経験された地域だけに、いつでも防災の視点をもって活動に取り組んでいることが、ひしひしと感じられました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

暑い神戸で

 

NIE全国大会の様子

現在、神戸の町はすっかり復興し、震災の爪痕を見ることはあまりありません。かろうじてメリケンパークに遺構が残されているぐらいです。しかし、その遺構を見るだけでも、当時の震災のすさまじさを想像することができました。
全国大会に参加する前に、震災について伝える「人と防災未来センター」を訪ねました。阪神・淡路大震災では、あまり震災遺構が残されていません。そこで、センターでは、当時の様子について、CGを駆使した映像や写真、そして震災で残された残骸などを展示しています。これらを見学することで、当時どんな災害があったのかを詳しく学習することができました。

授業を参観して

全国大会に参加する楽しみの一つが、現地の子どもたちの授業を参観できることです。普段はなかなか県外の子どもたちの様子を見ることができません。本当に貴重な機会です。今回は2つの学校の公開授業を参観しました。

ここ数年、NIEの世界では「紙の新聞か?デジタルの新聞か?」という議論が多く行われてきました。GIGAスクール構想が進展し、デジタル機器を活用するのは時代の要請となっています。私の勤務するさいたま市でもデジタルの活用が至上命題であり、さまざまな授業研究でも「デジタルをどう活用するか」ということが話し合われるようになっていました。各新聞社もデジタル版の新聞が充実させ、デジタル化への対応がどんどん進展しています。

しかし、紙の新聞の良さも大切にしたいというのが私の思いです。新聞をめくって好きな記事を探す良さや、新聞記事の割り付けや見出しの大きさの工夫を感じながら新聞を読む楽しさなどを味わってほしいと願っていました。私自身、デジタルの新聞も活用しますが、授業では紙にこだわって活用しています。

参観した最初の授業は、4年生の児童がお気に入りの記事をスクラップし、その内容を友達に「ビブリオバトル」風に紹介するというものでした。数人の児童に声をかけましたが、本当に楽しそうに新聞記事を切って貼ったり、感想を書いたりしていました。

2つ目の授業は6年生の総合で、同じ事柄を取り上げた複数の新聞を読み比べる活動でした。紙の新聞の良さとして写真や見出しの大きさに注目して討論していました。もちろんどちらの授業も児童が選んだ記事をタブレットで撮影して共有し合うなど、デジタルの良さも生かしていました。

デジタルの流れに乗り、その技能をうまく使いながら紙の新聞の良さも生かせる授業づくりができていると感じた2日間でした。とても素晴らしい実践を見ることができてよかったです。私も今回学んだことを生かして、2学期の新聞を活用した実践をがんばります。

これからの自分に生かす

私は低学年を担当しているので、少し使いづらいところもありますが、工夫して活用したいと思います。とにかく子どもたちは写真を見るのが好きです。そこで、新聞から写真を集める活動をしていきたいと思います。そしてそれはいろんな教科にも生きてくると思います。

例えば、国語では写真を使って、「どんなお話が作れるか」を考えたり、作ったお話を友達と発表し合ったりできます。教科書にもそのような単元がありますが、教科書の写真だけではなく、身近な新聞写真を使うことで、より子どもたちが主体的に学んでいけると感じています。ぜひ取り入れていきたいです。

また、算数では、1万までの数の学習をします。数を読んだり書いたりすることから始まり、数の大小や構成、計算について学びます。せっかくなので生活の中の数字と結び付けて、授業を盛り上げたいと思っています。そこで、新聞記事から大きな数字を見つけ、どんな数字だったかを発表し合う授業を計画しています。新聞の中には数字があふれています。子どもたちはきっと夢中になって数字を見つけるでしょう。その中で、身近なニュースや出来事にも関心をもってもらえたら素晴らしいと感じます。

授業で新聞を使うことによって、保護者からも「家でニュースのことを家族で話し合うようになった」という報告も受けています。これも副次的な効果です。今後も新聞の活用を続け、いろんなところで子どもたちの成長を促せることができればうれしいと願っています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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