今年度を終えるにあたって
現在の勤務校である植竹小学校 は、地域に大宮盆栽村があり、以前から盆栽教育を行ってきました。毎年5年生になると地域の盆栽園の方が講師として来校し、盆栽づくりを指導してくださいます。盆栽はその後2年間大切に育てられ、卒業式に自宅に持ち帰ります。
私は、以前勤めていた学校で児童と地域の盆栽美術館を見学して以来、盆栽について興味をもつようになりました。そして、いつの日か植竹小学校に勤めて、児童と盆栽について学習したいと考えるようになりました。
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一
夢だった盆栽教育
今年度希望が叶い、盆栽教育に取り組む本校に勤務できることになりました。本校では、校舎内に盆栽庭園が造られ、児童がいつでも盆栽を見られます。前述したように高学年では盆栽を育てています。また、社会科の授業として地域の盆栽園を見学したり、盆栽について調べたりする活動を行います。私が担当する3年生では盆栽にかかわる学習が取り上げられていなかったので、何とか少しずつ盆栽教育を導入したいと考えていました。
そこで、私が普段から取り組んでいるNIE(新聞活用)と連動させて盆栽教育を取り入れることにしました。具体的には、地域にある大宮盆栽美術館での校外学習を企画し、見学して分かったことを新聞にまとめる学習です。社会科の地域学習と国語科の調べ学習を連動させた取り組みです。この活動を通して、児童が地域のことについて学びながら、国語科の力もつけていけるようにしたいと考えました。
盆栽新聞づくりを通した活動
「盆栽新聞づくり」では、大きく2回の学習を行いました。最初は地域にある大宮盆栽美術館の見学前に、美術館が所蔵する盆栽の中で気に入ったものをホームページから選び、その特徴などを新聞にまとめました。3年生は新聞づくりが初めてなので、絵と見出しと文(記事)で構成する簡単な新聞づくりを行いました。
子どもたちは絵日記のような感覚で新聞づくりを行いました。しかし、新聞の機能に関しても学ばせたいと思い、「見出し」の重要性や記事の書き方(一番伝えたいことをはじめに書く)についての指導を行いました。子どもたちは早く新聞が書きたいと張り切って、盆栽美術館のホームページから自分が好きな盆栽を探し始めました。自分が選んだ盆栽の情報を読み取り、新聞に詳しくまとめることができました。作った新聞は大宮盆栽美術館のロビーに飾っていただき、来館者に観ていただくことができました。感想をお聞きすると、「大変子どもらしい素晴らしい作品だ」というお褒めの言葉をいただくことができました。
次に取り組んだのは、実際に盆栽美術館の見学を行い、そこで学んだことや学芸員さんに聞いたことなどを新聞にまとめる活動です。今回の新聞は前回よりもレベルアップし、4つの記事で構成するものを作成しました。児童は、見学で学んできたことの中から新聞に取り上げたい内容を選んで新聞を作成することができました。前回取り組んだ簡単な新聞づくりで学んだことを生かして活動できました。ここで作成した学習新聞も盆栽美術館のロビーに展示していただくことができました。盆栽美術館に見学に訪れるたくさんの方に新聞を見ていただくことができてよかったです。
来年度に向けて
今年度の取り組みの成果を生かして、来年度はさらに実践を深めていきたいと思います。具体的には、①社会科の調べ学習と連動させること②大宮盆栽美術館とさらに連携を深めること③児童の作品をコンクールに応募し「新聞づくり」の質も高めることーーです。
①の調べ学習との連動では、今年度は単に施設の見学において分かったことを新聞にまとめましたが、来年度はさらに社会科の地域学習と連動させ、児童が知りたいことを主体的に調べる活動を取り入れていきたいと考えています。盆栽美術館だけではなく、地域の盆栽村を調べる活動を行い、自分の地域についてさらに理解を深めながら、盆栽についても学べたらと思っています。
②の大宮盆栽美術館とのさらなる連携については、今回以上に学芸員さんにご協力いただき、子どもたちの指導に入っていただきたいと思っています。今年度も少し検討はしていたのですが、初めての地域のために踏み切れませんでした。次回からは、学芸員さんに学校にも来ていただき、児童の学習への指導もいただこうと思っています。学芸員さんの中には盆栽そのものの専門家もいますし、地域の「大宮盆栽村」の歴史などの専門家もいます。児童が知りたいと思うことを実際に専門の方に聞ける場を作っていきたいと考えています。
最後に③では、新聞づくりをさらにレベルアップさせたいと思っています。そのために、様々な新聞づくりのコンクールがあるので、その取り組みとしても活動してみたいと考えています。学習では盆栽や盆栽村について調べたことをまとめる活動をしますが、汎用的な能力として新聞を作る力を児童に身につけさせ、進級してからもその能力を活用できるようにしていきたいと考えています。
これらの計画の下、さらに地域の学習を進めていきたいと考えています。
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菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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