2023.09.17
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NIE全国大会を視察して

毎年、夏にNIE(教育に新聞を)の全国大会が開かれています。
今年は8月3日、4日と愛媛県の松山市を会場に開催されました。
毎年1,000人以上の教員が集まる貴重な機会です。
今年のテーマは「ICTとNIE」でした。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

松山での全国大会

公開授業の様子

私もどのような取り組みが紹介されるかを楽しみに参加しました。紙の新聞とデジタルの新聞をどのように融合させるのかということに関心がありました。
GIGAスクール構想が始まってから3年。児童が一人一台のタブレット端末を使うことが当たり前になりました。しかし、デジタル化された新聞に偏って、本来の紙の新聞を使う良さが失われてはいけないと危惧もしていました。

全国大会では1日目に記念講演とパネルディスカッションがあります。今回の大会ではテレビ番組でもおなじみの、俳人・夏井いつきさんの講演がありました。愛媛県は俳句の取組でも有名なので、夏井さんが講師に選ばれたのではないかと考えました。夏井さんからは愛媛の俳句の取組を紹介しながら、言葉を使う大切さについて教えていただきました。
印象に残っているのは、

「言葉が心を守るプロテクターになる」

ということでした。
何か悩んだ時でも、言葉によって人は救われる。だから、言葉を操る力をしっかりと学校教育でつけてあげてほしいということでした。本当にその通りだと思いました。

パネルディスカッションでは、NIEを実践している現場の教員や実際に授業を受けている小学生、そして、メディア側から新聞社とテレビ局の方が登壇されました。新聞というメディアをこれからどのように生かしていくのか、学習としてどのように使えるのかということが討議されました。
心に残ったのは、「新聞は自分の考えを作る際のヒントを与えてくれるものである」ということです。現在、各新聞社もデジタル版の新聞記事を発行しており、これからますます重要性が高まると思います。しかし、紙の新聞の一覧性という特徴も大切にしながら、デジタルとアナログのそれぞれの良さを生かして新聞を使いこなす子どもにしていかなければならないと感じました。

NIEの授業を参観

全国大会に毎年参加し一番楽しみなのが現地の子どもたちの授業を参観することです。普段は他県の先生の授業を参観する機会は多くありません。そして、現地の特長を生かした授業が展開されることが多いので大変勉強になります。今回も楽しみにしていました。

最初の公開授業は松山市立小野小学校6年生による総合的な学習の授業でした。授業者はNIEアドバイザーも務められるベテランの先生。児童が、自分たちの住む町の未来について考え、どのようにすれば町の魅力が伝えられるかを考え発表する授業でした。
児童は新聞記事を通して町を盛り上げるための方法やイベントなどを知り、その情報を根拠として、町の魅力を伝えるための方法について伝えることができていました。授業でのICTの取組は、児童が発表に使う新聞記事をタブレットを用いてプロジェクタに投影し、児童全員で共有できるようにしていた点です。大変参考になりました。

2本目の公開授業は、愛知大学教育学部附属小学校3年生の総合的な学習の時間と国語科の教科横断型の授業でした。こちらの実践も、児童が松山市の魅力について調べ、伝えたいと思ったことを新聞にまとめ、記事の効果的な見出しを考える授業でした。
児童は、プロの新聞記者から見出しのつけ方を事前に学び、前時に書いた記事にぴったり合う見出しを一生懸命に考えていました。完成した新聞は全国から会場に集まっている教員に配布されました。私も児童が作成した新聞を使って紹介してくれたおいしいミカンジュースを授業の後に飲みに行き、松山の魅力を堪能できました。
ICTの導入は、作成する新聞をデジタル版で作成していたことです。手書きの新聞も選択できるとして児童に選択させていました。

参観した授業は大変すばらしい実践であると感じました。その理由は、どちらも新聞の活用が一過性のものではなく、業前の時間などを活用してスクラップやスピーチなどを行い、新聞記事を読む活動を取り入れているからです。日常的なNIEが授業において新聞を活用する場面で効果を生むと感じました。
また、新聞の活用が場当たり的なものではなく、「地域の魅力を伝える」という単元計画の中で効果的にNIEが位置付けられているからです。一つ目の小学校の実践は情報を得るための新聞活用学習として、二つ目の授業では児童が調べたことを表現するための手段として新聞制作学習が取り入れられていました。今回の大会でNIEにICTを導入することにより、さらに新聞の活用の幅が広がるということを学びました。「デジタルかアナログか」ではなく、両方を効果的に使い分けることがこれからのNIEを進めるうえで大切になると感じます。

これからの自分のNIEに生かす

今回、全国大会に参加し、さらに自分自身もNIEを進めていきたいと意欲が出てきました。これまでの紙の新聞を使った活動の良さを味わいながらもデジタルの新聞の活用にもチャレンジしたいと思います。
これまで、欲しいときになかなか必要な内容の記事が見つからないことがありました。また、調べ学習に記事を使いづらい現状もありました。それらの課題を解決する方法として、デジタルの新聞活用が考えられます。ぜひこれからの今年度後半に取り組みを進めてみたいと思っています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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