NIE全国大会に参加して
日本新聞協会のNIE(教育に新聞を)アドバイザーを務めていることもあり、これまで毎年夏に行われる全国大会に参加してきました。しかし、昨年度と一昨年度はコロナ禍ですべてオンライン開催となってしまいました。もちろんオンラインでも参加をしましたが、やはり現地に行って、現地の空気を感じながら研修に参加したいと思いました。
今年度は3年ぶりに宮崎県で全国大会が対面で開催されました。久しぶりにNIEに取り組んでいる先生方と研修を共にすることができました。
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一
3年ぶりの対面開催
やはり、現地で直接参加するのは格別です。現地の空気を感じながら、しかも他県の先生や子どもたちの授業を参観できるのは貴重な経験です。さらに、新聞社の方や全国のNIEに取り組んでいらっしゃる先生方と出会うこともできる場です。
今年度も、新聞社で写真記者をずっと務めてこられた方との出会いがありました。写真の撮り方の基本について教えていただくことができました。いつかクラスの子どもたちに写真の撮り方を指導いただけないかとも思いました。
宮崎県の授業を参観して
1日目は記念講演やパネルディスカッションが行われ、これからのNIEについていろんな立場の方の考えを聞くことができました。いつも、パネルディスカッションを聞きながら、自分がパネラーならどんなことを話すかを考えています。
今回もテーマとなっていた「今を開き未来を拓く」という言葉を意識しながら、今のICT活用とのかかわり、そしてこれからのNIEの方向性についてパネラーの方の意見を聞きながら考えを巡らせました。
2日目は分科会があり、宮崎県の小学生の授業を参観できました。
1つ目の授業は、4年生の社会科で、児童が新聞を資料として、宮崎県の特産物である玉ねぎについて調べる活動をしていました。玉ねぎを作る農家の方を取り上げた記事を読みながら、玉ねぎづくりにどんな思いがこもっているのか、そしてどうして玉ねぎづくりが盛んになったのかなどの情報を読み取り、発表し合っていました。
2つ目は、6年生の総合的な学習の時間で、「修学旅行」をテーマに、宮崎県の魅力を複数の新聞から調べる活動を行っていました。これまで宮崎県に修学旅行に来ている子どもたちと取材した記事を複数読み、どんな魅力を求めて宮崎県に来ているのかを読み取っていきました。そして、それらを元に宮崎県の魅力を短いキーワードでまとめ、発表するという授業でした。
どちらの授業も地域の生きた素材について新聞を活用して学習する素晴らしい授業でした。授業を参観して思ったことは、どちらの授業も普段からの新聞活用で培った力を土台とした授業になっていることです。
両校とも「NIEタイム」と呼ばれる新聞スクラップを行う時間を定期的に行い、児童が新聞に親しんでいました。おそらく、普段から新聞を活用していなければあれほど児童が新聞を進んで読もうとしないと思います。
授業の指導助言をした宮崎県の教育委員会の先生が「今、指導要領に新聞活用が入ったのですべての児童が新聞を使って学んでいるが、計画的系統的に学んでいる例は少ない」と述べていました。私も全くその通りだと思いました。日常的に新聞を活用してこそ効果的なNIE実践ができます。今回、改めて普段からの新聞活用が、授業における新聞活用の原動力になることを学びました。
自分の実践に生かす!
大会では、来年度開催の愛媛県の先生たちも多く参観に来ていました。特に、来年度授業に取り組む予定の若い先生が積極的に授業に対する意見を述べていらっしゃいました。
そして、来年度の愛媛大会ではテーマが「ICTとNIE」で、パソコンやタブレット端末を活用したNIEを積極的に取り入れていくとのことでした。ただ、このお話を聞いたときに私は少し違和感をもちました。もちろん、この時代ICTの活用を無視することはできません。時代の趨勢でどんどんICTを活用することが求められています。
しかし、NIEでは紙の新聞を使うことに醍醐味があると思っています。デジタルの新聞では検索した記事がピンポイントで出てきます。それは素晴らしいことですが、紙の新聞で味わえる、隣の記事を見る面白さ、いわば一覧性の良さを味わえないのではないかと思っています。
これまで、子どもたちにはざっと新聞をめくって、関心を持った記事を詳しく読んでみようと指導してきました。そうすることで子どもたちと記事の偶然の出会いがあります。それが子どもたちの新たな興味関心につながります。そんな良さもぜひこれから生かしていきたいと考えています。
2学期からは、担当する3年生で新聞のスクラップを開始します。これまでは教師の方で提示した記事を読む活動でしたが、これからは自分で活用する教材を選ぶことをやってみたいと思います。その活動を通して、様々な力をつけていきたいと思います。また、新聞活用によって授業もさらに充実させていきたいと考えています。
菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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