2024.09.17
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NIE全国大会に参加して

毎年、夏に行われる、NIE(教育に新聞を)の全国大会に参加しています。NIEの実践者の先生たちにお会いできることのほか、やはり他府県の授業を実際に参観することができるのが大きな魅力です。今年度は京都大会でした。京都では、平素より新聞を使った学習が積極的に行われていると聞いていました。どんな授業が観られるか、そしてどんな学びが得られるかと楽しみに参加しました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

今年は京都での大会

 

全国大会の様子

今年度の大会テーマは「探究と対話を深めるNIE」。1日目の全体会、そして分科会を通して特に「対話」という言葉が何度も聞かれました。新聞を通して、友達や教師との対話、そして記事を書いた記者や記事に出てくる人物との対話、さらには記事を読んで考える自分との対話。間違いなく「対話」が今回の全国大会でのキーワードであると感じました。参観した公開授業でもこの対話が重視されていたように思いました。

京都大会では、昨年度実施されたNIEの実践効果に関する調査結果の説明もありました。新聞を活用することで、児童の学習意欲が高まり、読解力も向上することが報告されました。そして、何よりも教師が、自分の指導力が向上したと感じていることです。新聞はいわば指導するための食材で、それをどう料理するかは料理人である教師にかかっていると考えます。教師の持ち味を生かして様々な活用ができること…それがNIEの魅力です。今回はそんな思いを胸に、公開授業を参観しました。

授業を参観して

最初に参観したのが、京都市立五所南小学校の4年生の授業です。同校で行われている「読解科」という授業で、社会科や国語科の授業と連動させた取組でした。京都の伝統的な祭りである祇園祭について調べたことを新聞にまとめ、その新聞をさらに良いものにするためにどうするかを話し合う授業でした。児童たちはこれまで、社会科の学習で祇園祭について学び、それを生かして国語科の時間にグループで協力して分かったことを新聞にまとめてきました。出来上がった新聞を今回の授業でさらに改良していきます。

「見出しが大きい方が目立つよね」
「やっぱり、写真が大きいと読者に様子が分かりやすいね」
「どんなお祭りがあったのかを最初に書いた方がいいよ」
など、実際にお祭りを取り上げた記事を参照しながら児童は生き生きと活動していました。

今は、新聞もデジタル版で読む人が多い時代ですが、新聞の記事の構成、見出し、写真の位置や大きさなど、紙の新聞を活用する良さが大変よく表れた授業でした。

もう一つ参観した授業は京都女子中学校の授業です。総合的な探究の時間に福島県の原発の問題について考えたことを提言としてまとめるという授業でした。中学校の生徒は実際に研修旅行で福島を訪ね、福島の高校生とも交流をしているようでした。これから原発の問題をどうしていくべきなのかを中学生なりに考えて提言をまとめていました。

その学習にも新聞が大きな役割を果たしていました。原発の現状、そして震災当時どんなことが起こったのかを調べるために新聞を大いに活用していました。新聞の「記録性」や「詳報性」などが生かされています。どの生徒さんも生き生きと授業に参加していたのが印象的でした。

2つの授業を参観して、改めて新聞を活用する良さを感じることができました。また、私自身が現在行う準備をしている授業実践に行かせることもたくさん発見することができました。本当に有意義な時間を過ごせました。

さあ、今年度もさらに実践を深めよう

全国大会に参加して、私もさらに新聞の活用を進めたいと考えるようになりました。今年度も毎年行っている新聞スクラップや新聞トーク、そして資料としての新聞活用を続けていきます。そして、私の実践のメイン的な活動でもある震災教育にも新聞を活用します。

今年は、被災地を継続的に取材されている写真記者の方を教室にお呼びして話をしてもらおうと思っています。今年のGWに福島県双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館を見学した際に、その記者さんの写真が展示されていました。亡くなった方へのメッセージが届くといわれる「風の電話」で、亡くしたお姉さんにメッセージを送っている女の子の写真…それを見た時に、ぜひ記者さんに話をしてほしいと強く思いました。新聞社に相談するとその希望をかなえてくれることになりました。

「どうして東日本大震災の取材を今でも続けているのか」
「被災地の状況についてどう考えているか」
「新聞記者として、被災地のためにどんな活動をしていきたいと考えているか」
など、子どもたちにリアルな話をしてほしいと思っています。

いつも、子どもたちは新聞記者の話を聞くときに目をキラキラさせます。それは、記者の話を通じて、リアルな社会と触れ合えるからではないかと思っています。この経験は本当に貴重です。これからもこの活動を続けていきたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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