プロの記者から取材の仕方について学ぶ
3年生の国語科では、身近なことを取材し、集めた情報を再構成して報告文にまとめる学習があります。
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一
ゲストティーチャーの記者が書いた記事を読む
「取材」といえば、児童が普段から学習で活用している新聞記事を書いている記者の専門領域です。これまで様々な学習で新聞を活用してきました。
例えば、算数の「大きな数」の学習では、新聞記事の中から大きな数を見つけて、それがどんなことを表す数かを考える活動を行いました。また、国語では「送り仮名」を学ぶ学習で、ある記事を漢字と送り仮名に色分けして、送り仮名の意味を考える活動も行ってきました。そこで、新聞記者を招いて、記事をもとに取材の仕方やインタビューのコツを教えていただこうと思いました。
今回、ゲストティーチャーをお願いしたのが、朝日新聞社の荒ちひろ記者です。現在は、国際的な内容を扱う部署にいらっしゃいます。昨年はオリンピック・パラリンピックを担当され、それ以前は仙台の支局で被災地の取材にも携わった方です。私が荒記者の被災地について取材した記事に感動し、ぜひ子どもたちに指導してもらいたいと思い、ゲストティーチャーを依頼しました。
荒記者には事前に児童に指導したい事柄を知らせ、とり上げてほしい記事を知らせました。また、荒記者が執筆した記事をいただき、事前に児童に読ませておくことができました。荒記者は昨年、オリンピック・パラリンピックの担当になり、パラリンピックの多くの選手の取材をされました。子どもたちにとっては印象深いパラリンピックの記事だったため、興味をもって記事を読んでいまいた。
新聞記者をゲストに招くときにはいつも事前にその記者が書いた記事を児童と読むようにしています。そうすることで、記者への興味も高まるだけでなく、新聞への関心も高まるからです。今回も、荒記者の記事を掲示することで、児童の関心が高まりました。
取材の仕方について学ぶ
ゲストの荒記者には事前に授業のねらいを伝えました。「取材の仕方について記事をもとに具体的に教えてもらいたいこと」。そして、「インタビューをする際に大切にしていること」などを解説してもらうようにしました。児童は実際に自分が読んだ記事を書いた記者が話に来てくれるので大変楽しみにしていました。
授業当日には、荒記者が実際に取材をした記事を見せながら、取材やインタビューのポイントを解説してくださいました。児童は、大切なことをがんばってメモしていました。児童のメモには以下のようなことが書かれていました。
〇取材のコツ
・「どんなこと」「だれに」「どうやって」伝えるかを考える。
・「どうしてかな?」「なんでかな?」を大切にする。
・自分が分かるだけでなく、人に伝えるためにしっかりと調べる。
〇インタビューのコツ
・インタビューは「じゅんび」が大切!
・どんなことが知りたいか、聞きたいことをよく考える。
・どんな答えがかえってくるかをそうぞうする。
・しつもんはぐたいてきに、くわしくする。
・「じじつ(~がどうした)」と「思い(こう考える)」をしっかりと聞く。
プロの記者の方のお話なので、大変説得力があり、児童は自分の取材活動に生かしていきたいという意欲を高めることができました。今回学んだことを生かして、次の取材活動の学習に入りました。
実際に取材活動を
記者の方の授業で学んだことを生かして、子どもたちは国語科の学習で取材活動を行いました。テーマは「防災」です。自分の家でどんな防災対策がとられているかを調べました。家族への取材の準備をきちんと行い、しっかりと必要な情報を得ることができました。自分が本当の記者になったような気持ちで活動できたようです。
「うちにはたくさんカップラーメンなど、非常食が置いてありました」
「もしもの時には、〇〇中学校にみんなで集合することにしています」
「カセットコンロや非常食などがたくさんありました」
など、これまで気づかなかった防災への取り組みについて知ることができました。また、さらに備えておきたいものや、決めておかなければならないことにも気づいていました。国語の学習だけでなく、安全教育としても有益でした。
家族に取材をしたことをもとに、友達に分かりやすく伝えるための報告文作成に取りかかりました。集めた情報の中から報告文に盛り込みたいことを選んで、しっかりとした構成を考えることができました。
今回の学習により、調べたことの中から必要な情報を選び、再構成して報告文にまとめるという力をつけることができました。この力をこれからの様々な学習に生かしていきたいと思います。子どもたちが関心をもつ課題を設定し、進んで取り組むことによって、教科の力も十分に身に付けさせることができると改めて感じました。
菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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