2018.03.12
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卒業式で忘れられない、忘れてはいけないこと

おそらく全国、どこの小学校も来週・再来週には卒業式が行われれると思います。
今回は、6年生担任時の「いつまでも忘れられない、忘れてはいけない卒業式での出来事」についてです。
どうぞよろしくお願いいたします。

大阪市立堀江小学校 主幹教諭   (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年) 川村幸久

◆卒業式の呼びかけ◆

私は、卒業式の呼びかけがとても好きです。
子供たちの真剣な表情や、卒業に対する気持ちが入った言葉を聞けるからです。
一緒に卒業式を創り上げているように感じます。
卒業に対する想いや、新しい中学校生活に対する不安や意気込みが言葉や動き、表情から垣間見えます。

ここ数年は教務主任だったので、6年生を担任することはなかったのですが、今ならこの呼びかけを、どう子供たちに指導するかなと考えます。
昔とは、また違う視点で指導できると思います。
当時は、全員の呼びかけのセリフに点数を付けていました。
そして、その一人ひとりの呼びかけに対して評価を行い、場合によっては、違う時間に個別練習をしていました。
全員が一律に同じ声の大きさやハリになるとは思いませんが、子供一人ひとりの持っているものを最大限に発揮して欲しいと思っていたからです。
(卒業式の呼びかけの時からそういう発声を求めるのではなく、普段の授業から指導する必要があります)


この時の学校の呼びかけはこのような流れでした。
6年生
 ↓
5年生
 ↓
6年生
 ↓
5年生
 ↓
5年生歌
 ↓
6年生
 ↓
6年生歌
 ↓
5年生
 ↓
6年生
 ↓
6年生歌

呼びかけの合間合間に入る歌。
このピアノ伴奏は、卒業生(6年生児童)自身が演奏をしていました。

◆気持ちを込めて、歌をうたう◆

いよいよ卒業式本番。
6年生担任は、校長先生の横に座って、子供の様子を見ています。
これで最後なんだなと思うと、一年間の様々な思い出が蘇ります。

証書の授与を終えて、いよいよクライマックスの呼びかけです。
子供たちが次々と、ひな壇に上がっていきます。
BGMがなり、卒業生の最初のセリフが始まります。

呼びかけは順調に進み、5年生のセリフや歌も始まります。
そして、6年生のセリフの途中で1曲目の歌の伴奏者がピアノに移動します。

担任の私は、この時点でもうすでに感動が胸にこみ上げてきました。
そして、歌い出す最後の子のセリフ
「思いを込めて歌います。聞いてください!」
いよいよ、1曲目の歌が始まります。

◆忘れられない出来事◆

歌が始まらない、始められない…

いつもなら、最後の「聞いてください!」のセリフが終わったら、壇上の子供たちも歌を歌う姿勢になり、すぐさまピアノの最初の音が鳴り始めるのすが、、、、ピアノが始まらないのです。

おかしいなと思って、ピアノの伴奏者の方を見ると、驚いているような、困っているようななんとも言えない表情で6年生の担任達の方を向いているのです。

なんと、ピアノ伴奏の楽譜がないのです。
いつも卒業式の練習をしている時は、その子が教室から自分で楽譜を講堂にもってきてピアノを弾いています。練習終了後は、そのまま楽譜を自分で教室に持って帰っていました。

しかし、よくよく考えると、卒業式の当日は入場する時に子供たちは何も手に持たないので、その子供が楽譜を持ってこれるはずもありません。
これは、6年生担任の責任です。やってはいけないミスです。
今振り返ると、当時はまだ20代で学年主任で必死だったので、そこまで考える余裕がなかったのかなと思います。
本当に自分の力不足を反省します。


心の中で私は、
どうしよう、演奏することができない。
ピアノなしで歌う?いや、無理だな。
今から楽譜を取りに行って、そのまま呼びかけを中断することなんて、とてもできない…。
どうしよう…

◆その後、どうなったのかといえば◆

もうどうしようもない、どうしたらいいのかもわからない。
6年生の学年主任として、何の的確な指示も出せないまま、2,3秒か5秒くらい経過したと思います。
(呼びかけの順番で言えば、6年生の1曲目の歌の後は、5年生のセリフが続きます)

楽譜がないためピアノを弾くことができないという緊急事態に、当時5年生の学年主任の先生が気が付いてくれたのです。
すると、5年生の子供たちに目で合図を送り、それに気が付いた5年生の子たちが突然、全員立って、何事もなかったかのように次のセリフを言い出したのです。
これには本当にびっくりしましたし、今でも感謝しきれません。

そして、何事もなかったように5年生の呼びかけが終わり、6年生の最後の呼びかけが始まりました。
もともと最後に歌うはずだった2曲目と、楽譜がなくて歌うことができなかった1曲目を続けて歌って、何事もなかったように呼びかけを終えることができたのです。

おそらく、来賓の方や保護者の方は、呼びかけの流れを正確には知らないのでこのトラブルには気が付いていなかったと思います。

楽譜はというと、事態に気が付いた一人の男の先生が、すぐさま教室まで取りに行ってくれて、2曲続けて歌うタイミングにはその子のもとへ届けてくれました。

◆卒業式で忘れられない、忘れてはいけないこと◆

卒業式で忘れられない、忘れてはいけないこと。
それは、準備や最終確認を大丈夫と思わずに、徹底的にするということです。

例えば、
・卒業証書の子供の名前(漢字表記も)は間違えていないか
・証書に汚れや折れがないか
・卒業証書は、いつだれが講堂にもっていくのか
・卒業生につける胸花の数はそろっているか
・卒業生に渡すものの数はそろっているか
・講堂のマイクの予備はあるか
・講堂の放送機器が故障した時の代わりの機器はあるか
・ピアノ伴奏できない時のために、CDで音源が用意できているか など

言い出せばきりがないくらい確認するべきことがあります。
普段の卒業式の練習や予行で確認をするにしても、また、前日にも複数で徹底的に確認することが大切です。

あの時、楽譜の予備を講堂のピアノに準備していたら…。
最終確認を複数で徹底的に行っていたら…。

教務主任となった今は、楽譜だけではなく、卒業式一つとってみても、様々なことの緊急時に対応できるように事前に考えて準備・最終確認を徹底的にすることができるようになってきました。(まだまだ完璧ではありませんが)


あの時のことは、いつもこの時期に思い出します。
忘れることができません。
忘れてはいけません。
いつまでも、卒業式以外のどんな時でも自分の中の教訓として、準備・最終確認を徹底的に行うように心がけています。

川村幸久(かわむら ゆきひさ)

大阪市立堀江小学校 主幹教諭
(大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)
教師生活15年目。これまでの担任・教務主任の経験、大学院での学びを省察し、学級経営やICT活用、体育科教育を中心に、皆様と情報共有をさせて頂ければと思います。

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