2022.04.05
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コロナ禍の卒業式

3月18日(金)、本校の第48回卒業証書授与式が執り行われました。

初めての6年生担任として迎えるコロナ禍の卒業式。様々な制約がある中で私たち6年生担任が1つだけ決めていたことは、「これまでたくさんのことをがまんするように強いられていた子どもたちに、私たちができることは全部やり切る」ということでした。

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭 山川 和宏

歌唱と呼びかけをどうするか

兵庫県下にまん延防止等重点措置が出される中、卒業式を前に市の教育委員会から講じるべき感染対策が示され、それをもとに「時間制限(1時間以内で行う)」「人数制限(保護者の出席は1家庭2名まで)(在校生は出席しない)」「席と席の間に十分な間隔をとる」「ひな壇に上っての歌唱や集団での呼びかけは行わない」「歌唱に際しては人と人との間隔を2m以上(最低1m以上)とり、向かい合わない」「卒業生と保護者との間隔は十分に保つ」という条件を守って卒業式を行うことになりました。

そこで問題となったのは、「卒業生110名の歌唱と呼びかけをどうするのか」ということです。

一昨年は、一斉休校中の卒業式であったため、卒業式の練習を一切行うことができず、歌唱や呼びかけのない卒業式になりました。昨年は、緊急事態宣言は解除されていたものの、歌や呼びかけは行わず、そのかわりに教員が作成した児童の写真のスライドショーとビデオメッセージを上映しました。

当初は今年もスライドショーとビデオメッセージの上映を検討したのですが、児童が直接自分の思いを表現する場を設けたいという思いが捨てきれませんでした。事前に収録したものではなく、「卒業する今この瞬間の思い」を表現してもらいたかったのです。

そこで、苦肉の策として、卒業式を前半(30分)と後半(30分)の2部に分けて、第1部では従来の内容を大幅に簡素化して行い、第2部ではクラスごとに歌唱と呼びかけを行うという流れを計画しました。

具体的には、第1部が終了すると、発表するクラス以外の児童は一度退場し、発表するクラスの児童が6人ずつ並んで、1人ずつ卒業に際しての決意を表明します。時間短縮のため、6人が発表している間に、次の6人がその後ろに並んでおき、時間を空けることなく決意表明していきます。決意表明が終わった児童は、児童席のあった場所に十分な間隔で広がって、並んでいきます。そして、一人一人の決意表明が終わった後、学級全体での呼びかけと歌を歌うのです。それが終わったら、退場し、次のクラスの出番になります。

本校の6年生は3学級なので、それを3回繰り返します。呼びかけの内容は、1組が「仲間」、2組が「感謝」、3組が「未来へ」というテーマを設定し、そのテーマに沿った歌を1曲歌いました。自分が担任していたクラスは「この星に生まれて」を歌いました。

呼びかけと歌については、教師の方がシャカリキになって子どもに大声を出させるというのは違うと思っていたので、決して無理強いはしませんでしたが、一人一人の意識が高く、とても立派な姿を見せてくれたと思っています。

この学年の子たちは、ちょうど私が本校に赴任したのと同時に入学してきたので、1年生の時からとても印象深く見てきました。この6年間の成長を間近で見られたことに感慨もひとしおだったのですが、保護者の方にとってはその倍となる12年間の集大成となる卒業式になるわけですので、子どもたちにはお家の人に感謝の気持ちを持って立派な姿を見せてほしいと願っていました。そして、子どもたちは十分にその期待に応えてくれました。

ただ一つ困ったのが、一人ひとりの決意表明の中で、練習とは全く違う言葉を突然云われたことです。その子なりのサプライズだったのでしょうが、ただでさえ気持ちが高まっている中で、突然私への感謝の気持ちを発表されてしまい、大いに動揺してしまいました。

プレゼント

巨大卒業証書と筆者

卒業に際して、子どもたちにいくつかのプレゼントを用意しました。

クラス写真を収めた写真立てと一人一人へのメッセージカード
コロナ禍の中、クラス全員がそろう機会はとても貴重でした。その中から、2学期に転校した男の子のお別れ会の記念写真を選びました。また、卒業アルバム兼卒業文集が印刷所さんの都合で卒業式に間に合わなくなったため、卒業式のページを新たに加えて、後日配布することになりました。

それぞれのクラスで選んだ漢字「夢・絆・輝」を彫ったシャープペンシル
字体も子どもが選びました。とてもおしゃれな仕上がりで大満足していました。

一人一人への贈る言葉を手書きで添えた学級通信という名の手紙
金八先生にあこがれていたのですが、そんな感動的なスピーチはできないので手紙を用意しました。ただ、ちょっと感傷的な内容で、後から読むと恥ずかしいです……。

卒業する自分への手紙
6年生に進級した際に、子どもたちに自分自身宛の手紙を書いてもらっていました。

クラス全員の似顔絵ポスター
卒業式当日の朝までかかって仕上げました。結構特徴をとらえているとは思うのですが、絵が得意ではない私にとってはあまりに大変な作業で、途中、何度挫折しそうになったことか……。

筆文字の書
筆文字を仕事にしている友人に卒業祝いのメッセージを書いてもらいました。「純粋なエネルギーこそ あなたの究極の美しさ」

通知表
これをプレゼントと云ってよいのか微妙ですが、心をこめて作成しました。

お別れ遠足
卒業式に先立って、神戸市立王子動物園と明石市立天文科学館に遠足に行きました。思い出作りが目的なので、おやつ持参OK、お土産代のお小遣い持参OKにしたところ、子どもたちはとても喜んでいました。

記念撮影のための巨大卒業証書
ある先生にお願いして書いてもらいました。とても立派な文字です。運動場に設けようとしていた撮影スポットが、雨のため渡り廊下に設置されることになり、大混雑を引き起こしてしまいました……。

在校生からのプレゼント
色画用紙で作った王冠、パズル、ペン立て、メッセージカードとホルダー、ダンス披露など各学年からのたくさんのプレゼントをいただきました。また、卒業式に出席は叶いませんでしたが、在校生代表からの送辞を音声で流すことができました。

卒業公演
演劇クラブの子限定のプレゼントになるのですが、粘り強く準備を続けてきたおかげで、ついに4月10日に校内で卒業公演の場を持つことが決まりました!

一方で、卒業生からは在校生に手作りのテレビカバーを贈ったり、お世話になった職員や地域の方に手紙を書いたり、先生たちのお手伝いに奔走したりと、たくさんの恩返しをしている姿が見られました。

私自身も手紙やら寄せ書きやらのたくさんのサプライズをしてもらいました。ただ、連日のサプライズだったので、卒業式の頃にはもはやサプライズではなくなっていましたが、それでも何とかびっくりさせようとクラッカーを用意したり、あの手この手で攻め込まれて、結局最後は泣かされてしまいました。

それでも最後は、みんな笑顔で送り出せたのでよかったです。

学級目標が「世界一明るいクラス」だった6年3組らしい卒業式になりました。

コロナ禍でたくさんのことを諦めなければならなかった子どもたち。しかし、ただできないことをできないで済ますのではなく、たとえ形を変えてでも、仲間とともにできないことをできるに変える方法を見つけてきた子どもたちでもありました。そこにかけがえのない価値あるものが見つけられたはずです。そんな彼ら・彼女たちが、これから先、一歩ずつ大人の階段を上がり、自分らしい未来を切り開いていくことを願ってやみません。

このような形で卒業式ができたのは、同じ志で子どもたちを送り出そうとしてくれた同僚の先生たちのおかげです。本当にありがたいことです。1年生の時からこれまでずっといろいろな先生たちが子どもたちへの愛情を持ってつないできたバトンを最後に受け継いで、ようやくゴールテープを切れたことに心から安堵しました。

卒業式後、空っぽになった教室で、子どもたちと過ごした時間への感謝の気持ちが溢れました。

山川 和宏(やまかわ かずひろ)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。

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