AIが便利すぎる時代に、自分の言葉を育てる授業
AIは本当に便利です。今では仕事に欠かせない存在になっています。その一方で、あらためて考えさせられることもあります。
今回は、AIとの付き合い方を振り返りながら、授業の中で子どもたちの「自分の言葉」をどう育てるかを考えます。
西宮市立総合教育センター 指導主事 羽渕 弘毅
AIは…かなり便利だ
最近、AIを使わない日はほとんどありません。
文書の作成や推敲、大量の文書の中から間違いを見つける作業。こうした仕事をするとき、AIは本当に頼りになります。
特に助かるのは、原稿や研修資料を見てもらうときです。自分では気づかなかった視点からコメントをもらえることがあり、「なるほど」と思わされることも少なくありません。
自分一人では見えないものがある
AIに文章を読んでもらうと、「こんな見方があったのか」と気づかされることがあります。
自分一人で書いていると、どうしても視点は限られてしまいます。
そんなとき、別の角度からの問いや指摘を受けることで、文章がもう一段深まることがあります。
そういう意味では、AIは自分だけのとても優秀な編集者のような存在だと感じることもあります。
でも、どこか違う
ただ、AIが作った文章を読んでいると、ふと違和感を覚えることがあります。
うまく書けている。内容も間違っていない。
むしろ自分が書いたような文章です。
それでも、どこかしっくりこない。
少し硬いというか、どこか冷たい感じの文章に思えることがあります。
書き直したくなる理由
あるとき、ある原稿の一章のみをAIに整えてもらったことがありました。
文章としてはよくできていましたが、読み返しているうちに、どうしても気になってしまいました。
結局、その章はすべて自分で書き直しました。
AIの文章が悪いわけではありません。
ただ、自分の思いや経験が、その言葉の中に十分に乗っていないように感じたのです。
言葉としては正しくても、どこか自分の温度感が伝わらない。
そんな感覚でした。
自分の言葉で書きたい
不思議なことに、AIを使うようになってから、逆に「自分の言葉で書きたい」という気持ちが強くなりました。
授業のこと、教師教育のこと、小学校英語のこと。自分の専門として関わってきたことについては、やはり自分の言葉で書きたいと思うのです。
うまく書くことよりも、自分の考えや経験がそのまま言葉になることの方が、大切に感じられるようになりました。
授業でも、似たことが起こる
こうして考えていると、授業のことも思い浮かびます。
授業では、ときどき子どもから予想していなかった言葉が出てくることがあります。
特に英語や国語などの言語を扱う授業では、こちらが想定していなかった言い方や見方がふと出てきます。
それによって、思わずこちらが考えさせられることがあります。
そんな瞬間は、とても面白いものです。
授業が「生きている」と感じる瞬間でもあります
子どもがプレイヤーになるとき
子どもがただ答えを言うのではなく、自分なりの言葉で考えを伝え、友達の言葉に反応しながらやり取りが生まれていく。
すると教室の空気が少し変わります。
授業が「見ているもの」ではなく、「参加しているもの」になるのです。
AIの時代に、どんな子どもでいてほしいか
AIがある時代の授業では、子どもがどんな姿でいてほしいだろうか。最近よく考えます。
私が思い浮かべるのは、突っ込んでいる子どもです。
「ほんま?」「それってどういうこと?」と問い返しながら、授業の中に入り込んでいく子ども。
傍観者ではなく、プレイヤーとして学びに関わっている子どもです。
AIを使うなら、こんな授業がしたい
たとえば、国語の授業で詩をつくるときに、AIに一度書かせてみることはできると思います。
きれいで、それらしい言葉が並ぶかもしれません。でも、それを読んだ子どもたちが「なんかきれいやけど、ほんまにそう?」「自分ならこんな言い方はせえへん」と言い始めるはずです。
AIの言葉をそのまま受け取るのではなく、そこに違和感をもち、自分の言葉に引き寄せて書き直していく。
そんな時間がつくれたら、授業はぐっと「生きてくる」気がします。
だから、言葉を取り戻したい
AIはとても便利な道具です。
これから授業の中でも、きっとさまざまな形で使われていくでしょう。
ただ、そのときに大切にしたいのは、AIに任せることではなく、人が言葉を使うことなのだと思います。
AIが答えを出すことはできます。
でも、その答えに突っ込んだり、言い換えたり、自分の経験と結びつけたりするのは、人間の役割です。
AIが便利すぎる時代だからこそ、子どもたちが自分の言葉で考え、語り、問い返す授業をつくっていきたい。
そんなことを考えています。

羽渕 弘毅(はぶち こうき)
西宮市立総合教育センター 指導主事
専門は英語教育学、学習評価、ICT活用。高等学校や小学校での勤務経験を経て、現職。これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科博士課程前期)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。自称、教育界きってのオリックスファン。
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