算数授業における探究的な学びの実践 〜現場教師の視点から〜
20年近く小学校で算数を教えてきた私は、子どもたちの目が輝く瞬間が大好きです。
それは、彼らが自ら「なぜ?」と疑問を持ち、その答えを見つけ出した時です。
今回は、そんな探究的な学びを実現するための具体的な実践例をお話しします。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
1. 文部科学省の学習サイクルを活用する
文部科学省が提唱する「課題設定→見通し→解決→振り返り」のサイクル。正直、最初はこれを意識するのに苦労しました。でも、このサイクルを意識して授業を組み立てると、子どもたちの反応が変わってきました。
例えば、2桁の数の十の位と一の位を入れ替える活動を考えてみましょう。これは、1〜99までのゾロ目以外の数を使います。
「〇〇さん。1〜99までのゾロ目以外の好きな数を言ってね」
「18」
「18の数字の十の位と一の位を入れ替えてね」
子どもたちは「81」と答えます。
「じゃあ、81から18を引いてみよう」
子どもたちが計算し、「63」という答えが出ます。
この活動を8回ほど繰り返します。同じ答えになる筆算は、並べて板書するようにします。すると、必ず子どもから「また63だ!」という声が上がります。そこで、「本当だ!また63になったね」と子どもに話してみましょう。すると、子どもは「なぜ63になるんだろう?」と、課題を発見し、自然と考え始めます。
2. 個別の探究を促す
子どもが課題を発見したら、5分ほど時間をとって、なぜ答えが63になったのかを考えさせます。
すると、「十の位と一の位の数が7違うと63になる」という規則性を発見します。その後、私はこう問いかけます。
「これって、63のときだけ?」
すると、「6個違ったらどうなるの?」などと質問が出てきます。ここからが面白い。新たな課題の発見です。子どもたちは自分で例を考え、計算し始めるのです。
私の役割は、そんな子どもたちの探究心を見守り、適切なタイミングで「みんなで共有してみよう」と声をかけること。子ども同士で考えを説明し合う中で、理解が深まっていきます。
3. 規則性の発見と拡張
子どもがそれぞれに発見した課題について自由に取り組ませます。すると、1個の場合、2個の場合と考えている子どもは「十の位と一の位の差」という新たなきまりを見つけます。このきまりをすぐに理解させるのは難しいものです。でも、他の子どもたちの具体例を積み重ねていくと、子どもたちは自然とその規則性に気づいていきます。
「2個違ったらどうなる?」「3個違ったら?」
こんな問いかけを繰り返すうちに、子どもたちは自分から「じゃあ、4個違ったら...」と考え始めるのです。
文部科学省が提唱する「課題設定→見通し→解決→振り返り」のサイクルを繰り返しています。
この「〜したらどうなる?」という思考の習慣が身につくと、算数に限らず様々な場面で応用できるようになるんです。
まとめ
20年近くの教員生活を振り返ると、子どもたちの「なぜ?」を大切にした授業が、最も印象に残っています。文部科学省の学習サイクルを意識しつつ、子どもたちの疑問を拾い上げ、個別の探究を促す。そして、その過程で見出された規則性を全体で共有し、さらに拡張していく。
こんな授業を積み重ねていくことで、子どもたちは自ら考え、表現する力を身につけていきます。算数嫌いだった子が「算数って面白い!」と目を輝かせる瞬間。それこそが、教師冥利に尽きるのではないでしょうか。
私たち教師は、子どもたちの可能性を信じ、その探究心に寄り添い続けることが大切だと考えています。一人一人の個性を尊重しながら、確かな学力と思考力を育む。そんな授業づくりを、これからも追求していきたいと思います。
神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/
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