2022.02.12
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新聞を活用した取り組みの継続

年度当初から、担当するクラスでは、朝の時間に新聞記事を紹介する「新聞トーク」を行っています。新聞に掲載されているいろんな記事の中から児童が興味をもちそうな話題や学習と関係のあるものを選択して紹介しています。この活動を通してねらっていることは大きく2つあります。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

年度初めから行う「新聞トーク」

新聞記事を示す

1つは、授業で扱う内容のバックグランドとなる知識を与えることです。授業で学ぶことに意義を感じたり興味をもたせたりすることは大変重要です。しかし、その内容に関心がもてなければ進んで学習に取り組むことができません。
そこで、児童が学習内容に興味をもち、学習の効果も促進できるように、学習内容に関連のある記事を紹介しています。
例えば、社会科で火事を防ぐ工夫について学ぶ際には、火災に関する記事を示し、その怖さを実感させながら、火事に備える工夫があることを知らせます。また、算数で小数の学習をする際には、小数が入っている新聞記事を示し、数には「4.3」のようなものがあることに気づかせます。

もう1つのねらいは、児童に学習への興味関心をもたせ、学習にいざなうことです。学習内容は様々です。学習内容に興味をもたせるためには仕掛けが必要だと考えています。
例えば、国語で金子みすゞさんの詩を学習する際に、みすゞさんを取り上げた新聞記事を示し、みすゞさんが残した詩集(手帳)を児童に見せました。
「この手帳が発見されたからみすゞさんの詩が全国的に有名になったんだよ。では、この手帳を探した人の話を読んでいこう」と投げかけて授業をスタートしました。児童の教科書を読む真剣さが高まりました。

このように、朝の少しの時間で「新聞トーク」を行うことは、菊池学級にはなくてはならないことになりました。そして、それを生かして、新聞を活用した授業にも取り組んでいきました。

授業実践例①(新聞から小数を探す)

算数においても新聞を活用した取り組みを行いました。算数における新聞活用の意義として、学習した内容が社会や生活の中でどのように使われているかがわかることだと思っています。今回は学習した小数を新聞から探し、それがどのような数を表しているかを考える授業を行いました。

児童は、積極的に新聞から小数を探し、

「あったよ。これは野球のことを書いた記事だよ」
「これは、テレビ番組のランキングの記事だね」
「これは、料理の記事だから、材料などを入れる量に小数が使われているね」
「グラフのメモリにたくさん小数が使われているよ」

など、どのようなところで小数が使われているかを理解することができました。
教科書の学習においても、生活場面を取り上げた問題が出てきますが、本当の意味で生活や社会の中でどう使われているか、そして小数がどうして必要なのかを理解するには新聞を活用するのが効果的であると考えます。記事から小数を探し、それが何を表しているか考えることで、情報を得る力も同時に着けることができます。この活動の後も、小数を見つけて嬉しそうに報告してくれる児童が多くいました。大変良い活動になったと思っています。

授業実践例②(新聞から「こそあど言葉」を探す)

次に国語科でも新聞を活用しました。3年生では「こそあど言葉」(指示語)の使い方を学習します。「これ・それ・あれ・どれ」など、それが何を指しているのかを考える学習も取り入れられています。指示語はこれから子どもたちが文章を読んでいくうえでとても大切です。ここでしっかりと指示語について理解させたいと考えました。

指示語について、教科書で学習した後に、丸ごと1部の新聞(小学生新聞)から、記事を選んで指示語を探す活動を行いました。児童は大変積極的に活動に取り組みました。

「先生、『この』が3つもあったよ」
「この記事にはたくさんこそあど言葉があるね」
「この記事にはこそあど言葉が全然ないよ」
「文にある『これ』は記事の動物のことを指しているんだね」
「新聞にある4コマ漫画にこそあど言葉がたくさん出てくるよ。普段の話し言葉でたくさんこそあど言葉を使っているということだね」

など、指示語の特色を抑えた感想を述べていました。この活動を通して、児童は、指示語の使われ方について詳しく理解できました。そして、指示語が指し示すものについて考えることの大切さを学んだようです。これから文章を読む際に指示語に注目することは大変重要です。その意味でも、今回の学習大変効果のある取り組みだったと思います。

この他にも新聞を積極的に活用して様々な授業づくりを行っています。また、行事などにおいても新聞を活用し、児童の良い学びを進めていっています。新聞を活用することで、逆に新たに新聞の特徴にも気づくことができます。これからも多くの学習で新聞を活用し、よりよい授業実践につなげていきたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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