2024.08.02
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実習生のAさん

今年度、久しぶりに実習生の指導を担当することになりました。
実習生さんの指導を担当するのは実に7年ぶりになります。
これまで9人の実習生の担当をしてきました。

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

久しぶりの実習生担当

実習生Aさんの授業の板書

今回担当する実習生のAさんは、本校の卒業生で大学4年生。昨年度は本校で1年生のアシスタントティーチャーとして3カ月間学校で仕事をしてくれました。本当に教師になりたいという夢を強くもち、夢に向かってがんばっている姿に感心しました。私も久しぶりの実習生担当として、Aさんに少しでも良い経験をしてもらえるようにしようと考えました。高学年の6年生での実習ということで少し戸惑いもあったようですが、元気に実習をスタートしました。私も久しぶりの実習生さんの指導ができるので、新鮮な気持ちで実習初日を迎えました。

6年生となると、思春期に入っていることもあり、「先生!先生!」とまとわりつく感じではなくなります。最初、子どもたちのそんな姿に実習生のAさんは戸惑っている様子でした。「子どもたちは先生と話したいと思っていても恥ずかしくて自分から話せない場合があるから、どんどん子どもたちに声をかけて!」と助言しました。すると、Aさんは積極的に子どもたちに声をかけていました。

その日の実習ノートに、
「〇〇さんに、みんなが少しうるさくなったときに『静かにして!』と言ってくれてありがとうと言えました」
と書いてありました。

本当に一生懸命にがんばっている姿に感心しました。このように若い情熱を子どもたちにどんどんぶつけられるのはいいなと思います。私もAさんから刺激を受けて、一緒にがんばっていこうという思いになりました。

Aさんはとても真面目で、毎日の実習ノートに「今日の反省点は……」といくつも書いていました。自分ができなかったことや不十分だったことばかりを考えるのではなく、どんなことが勉強になったか、そしてどんなことができたかに目を向けてほしいと思い、「反省、反省はやめよう。今日どんなことを得たかを考える方がいいよ」とアドバイスしました。すると、Aさんのノートには自分ががんばったことが多く書かれるようになりました。

国語の研究授業への取組

Aさんは大学で初等教育を学ぶ中、特に国語科を中心に学んでいました。そこで、説明文の読み取りの単元を受けもってもらうことにしました。少し難しい単元でしたが、Aさんは実習前から情報集めをして準備を行っていました。そして、どんな授業にしたいかをあらかじめ考えたうえで実習に臨んでいました。

子どもたちの様子をみて、どんなワークシートがよいか、どんな発問をしたよいかなどを真剣に考えていました。そして、毎日の授業に向けての指導案作り。1回の授業に対して本当に真摯に向き合っていると感じました。そして、毎回授業後には、授業での反省点と、次の授業で気を付けることなどを考え、子どもたちのワークシートにも丁寧にコメントを入れていました。子どもたちもコメントを読んでさらに授業へのやる気を高めていました。Aさんもがんばって、そして楽しく授業を行い、子どもたちもそれに合わせて楽しく学ぶ。そんな良い授業が毎回展開されました。

研究授業。子どもたちは説明文の読み取りを通して、筆者が読者に主張を伝えるための工夫について学んできました。その成果を生かして、実際の新聞記事から子どもたちが好きな記事を選び、そこで使われている図やグラフなどの資料をどうして記者の方が入れたのかを考え発表する授業を展開しました。子どもたちもこれまで新聞を活用して学習してきた力をいかんなく発揮し、素晴らしい授業になりました。
参観した先生方から「教科書にない発展的な内容を実習生がやるのはどうか……」とも言われましたが、それまでの教科書に沿った内容を充実させられたからこそ、発展的な内容に踏み込んで実践できたのだと思っています。これでよかったと私自身も信じています。

Aさんのノートには、「今日の授業は大成功でした。(実習生として)」と書かれていました。私自身もとてもうれしい気持ちになりました。

ステキな先生になってほしい

実習最後の日、子どもたちとのお別れに当たって、Aさんが子どもたちにお話をする時間を設けました。

Aさんは、子どもたちに、
「努力は実らないこともあるかもしれないけれど、努力をすること自体に意味があると思う」
と話してくれました。
子どもたちは真剣に話を聞いていました。きっとこれまで、子どもたちに必死で向き合って授業などに取り組んできたのを見て、子どもたちも感じるものがあったのではないかと思います。最後は涙、涙のお別れでした。

今回の教育実習でAさんにとって貴重な宝物のような思い出がたくさんできたと思います。そして同時にクラスの子どもたちにとっても忘れられない1カ月になったのではないかと思っています。担任としてとてもうれしく思っています。Aさんをこれからも応援していきます。いつか、Aさんと一緒に働けたら嬉しく思います。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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