2022.12.23
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設定保育・研究授業と実習評価

実習評価に設定保育や研究授業の出来が占める割合が、地域や園によって大きく異なるようです。
現在の実習生にはどのパターンがいいのでしょうか。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

教員免許や保育士資格を取得するためには教育実習や保育実習が欠かせません。
今回はその実習における研究授業・設定保育の実習評価の位置づけについて考えていきたいと思います。

研究授業・設定保育とは

筆者作成

研究授業や設定保育とは、1時間分の授業や保育を実習生が体験するものです。小学校・中学校・高校の実習では研究授業が、幼稚園・保育園の実習では設定保育が課されることになっています。しかし、その日程や実習評価の位置づけについては様々なようです。横浜・群馬・北海道で保育者養成に携わってきましたが、大きく3つのパターンがみられたので、それらを紹介していきます。
保育実習は12日間の2週間で月曜日からスタートして2週目の土曜日に終わることがほとんどであるため、そのスケジュールで話を進めていきます。

第1のパターン「中盤型」

こちらは最も多いパターンです。7-8日目の2週目の月曜日か火曜日くらいに行うパターンです。設定保育が終わった後に日数を設けておくことで、設定保育の経験をしたからこそ気づけるものがあるという成長の期待を込めているようです。
実習訪問は、訪問者の助言をその後の実習に生かせるように中盤に行くことが多いため、訪問のタイミングで設定保育をしていることが多く、実習生が設定保育をがんばっている姿を見ることも多かったです。

このパターンでは、実習評価における設定保育の出来は、入ってはいるもののそこまで大きくはないようです。

第2のパターン「序盤型」

こちらは園長先生が大学関係者であったり、学会等に所属していたりする場合に多いパターンで群馬にいたときにありました。実習日誌を書くのに夜遅くまでかかる実習生がほとんどですが、それに加え設定保育のための指導案を作成するとなるとほとんど寝ずに次の日の実習に入ることになってしまいます。そのような無茶な負担を強いることをしたくないという想いと、指導案を作成するために費やした学校の授業での取り組みを尊重するという想いが込められているようです。
こちらのパターンは実習に入ってすぐ3-4日目に設定保育を行います。後は設定保育のことを意識せずに、子どもと触れ合う喜びの中から主体的に学んでほしいという想いも込められています。

このパターンでは、実習評価における設定保育の出来は、ほとんど入っていないようです。

第3のパターン「終盤型」

こちらは北海道にとても多いパターンです。第2週の金曜日付近10-11日目に行うものです(土曜日は子どもが少なく保育者も少ないためほぼ行いません)。
こちらは設定保育が実習の集大成であるとの考えから、終盤に設定されているようです。

このパターンでは、実習評価における設定保育の出来は、かなり大きいようです。

養成校の教員として思うこと

現在、メディアでは教職や保育業界はブラックとばかりの報道が多く、教員や保育者を目指す学生が激減しています。何とか残った教員・保育希望の学生でも、睡眠すらまともにとれない実習を経験したら嫌になって離れていくことでしょう。
実習生に楽をさせろという意味ではありませんが、必要以上の負荷は掛けなくてもいいのではないかと感じています。どうしても「昔はこうだった」という思考に陥りがちですが、今の学生たちはそのような教育を受けて来ていないため逆効果になりがちです。 

ちなみに私の感覚的には、第2のパターンである「序盤型」が現在の学生たちに一番しっくりくるように感じています。

最後に

地域が変わると新しい発見があり面白さを感じます。しかし地域性ということだけで済ませてはいけないと思います。現状に合わせ柔軟に対応していくためにも、地域を超えた情報交換の大切さを感じました。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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